[5.思わぬ副作用]
最近、児童ポルノについての風当たりがきわめて強くなっているらしい。
私はそういう類のものとは無縁であるからともかく、愛好家たちにとってはこれからも
ますます風当たりが強くなりそうである。
ところで、なぜ「普通の」人たちは、児童ポルノを目の敵にするのだろうか。
「意に反して少年少女を性の対象としているから」
それは「児童ポルノ」に限らずレイプにあたるので、「児童ポルノ」だけ風当たりが強い
理由にはならない。現行の強姦罪で対応可能である。
「児童対象の性犯罪の温床となるから」
これもあたらない。このように取締りを強化した結果、児童を対象とする性犯罪はむしろ
「増加」すると断言できる。
そのほかもろもろの主張が考えられるが、根拠皆無であるため論ずるにあたらない。
私なりの考えでは「日本は欧米に比べて性犯罪が少なすぎるので、欧米のレベルに追い付
こうとしてこのようなことをしている」と(冗談ではなく)思うのだが・・・
そうでないとすれば「気持ち悪いことは見たくない」と多くの人が考えているためであろう。
しかし、私は断言する。
児童ポルノを規制した結果、規制する前に比べて治安はむしろ「悪化」すると。
(おそらくこれは多くの人が望んだ結果ではないであろうが・・)
もう一つ、よく似た例を述べる。
最近、凶悪犯罪について「時効」制度が廃止になり、犯罪の被害者家族が期待を寄せている
様子が報道された。
だが、私にとってはこれはむしろよくないニュースだった。
なぜかというと、これによって凶悪犯罪の検挙率は「低下」することが確実だからだ。
殺人の時効期間は昔は15年、廃止前は25年だった。
しかし、15年で捕まらなかった犯罪者が25年で捕えられた例など、ほぼ皆無に近い。
これが無限大になったところで、捕えられるようになる犯罪者など皆無であろう。
つまり、時効廃止など気休めに過ぎないどころか、期限がなくなったために捜査員の士気が
逆に低下する危険性すらある。
時効廃止論者は「時効制度に何のメリットがあるのか」と主張していたが、実は明らかな
メリットがあった。それは・・
「一定期間逃げ切れば罪にならない、という利得をちらつかせ、犯罪者の海外逃亡を阻止する」
ということである。つまり、時効制度とは一種のトラップなのだ。
ついでにいうと、犯人の正体がわかっていれば「極秘起訴」という手段によって時効を停止
できるという2重のトラップも存在していた。
(つまり「こいつが犯人だ」とわかってしまえば、いくら逃げても元々無駄ということ)
時効制度を廃止したことで、我々はこういうトラップで犯罪者を国内に閉じ込めておく手段
を失った。つまり、これからの凶悪犯罪者たちは、犯罪を行った後すぐに国外逃亡してしまえば
事実上検挙できずに無罪放免ということになる。
だからと言って、いまさら時効制度を復活させるわけにもいかないだろう。
数年後に我が国の治安が悪化した時に「昔こんなことを言っていた怪しい人物がいたなぁ」
とでも思い出してもらえればありがたいのだが。