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背中ごしの信頼
written by ちひろsama
「ふぅ……参ったね」
「こうなったら仕方ありませんよ。前向きに考えましょう!」
「……どうやって?」
「え? ……あっ、1人にならなかっただけよかったじゃないですか! 2人でいれば、何か言い知恵が浮かぶかも知れないし」
「……ふふっ、そういうことにしておくか」
懸命に自分を励まそうとするランディが、思わず可愛く思えてしまうオリヴィエである。
†
オリヴィエとランディは今、深い洞窟の中だった。
──宇宙に危機に際し、旅の中。
モンスターとの戦いで混乱するさなか、2人は仲間達とはぐれてしまったのだ。
「まあとにかく。まずは出口を探すか」
「その前にちょっと休みましょうよ。──さっきまでモンスターに追われて走り詰めだったんです。体力を回復しなきゃ」
「おやっ。私より若いアンタがそんなこと言うとは」
「!」
「体力と根性は守護聖の中でもベスト3に入ると思ってたけど。違った?」
「……!」
オリヴィエの、明らかにからかう声に。ランディはムカッとしたらしい。
「お、俺だってペース配分くらい考えますよ! そこまで体力バカじゃないです!」
「……☆」
(そーきたか☆)
別にそんなことを言っているつもりはなかったのだが。
「……」
ちょっとばかり威勢の良い声に驚きながらも、次に何を言うのかおもしろくなってきたので(笑)、オリヴィエはそのまま黙って聞くことにした。
「だって、この先何があるかわからないし、無理しないで進む方が懸命だから、焦っちゃいけないと思ったからっ」
「……」
「そりゃ確かに、オリヴィエ様は剣の腕は強いですし、冷静な判断力もあるし、この戦いを乗り切るだけの精神力だって体力だって、持っている方なのはわかってますけど!」
「……」
(おやまあ)
いつの間にやら。ランディはオリヴィエを誉めていたり……でも。
「──でもオリヴィエ様は、知らんぷりな態度でいるけど、本当は自ら面倒な事を背負い込もうとするところがあるんです……悪いクセです!」
「!」
……ちょっと図星を突かれて。ドキリとするオリヴィエだった。
「だから、ムチャはだめですっ」
「はいはい♪」
「オリヴィエ様っ。ちゃんと聞いてますか!?」
「聞いてるよ〜。お気遣いありがとね♪」
手をヒラヒラとさせて、さっさと先に進み始めたオリヴィエの後を、
「あの! ホントに聞いてますか!?」
ちょっと諫めるふうに、ランディが追いかける。
「耳はちゃんとあるから、大丈夫だよ〜ん♪」
「んなもん、俺にだってありますっ。……ふざけてますねっ!?」
「べっつに〜?」
「オリヴィエ様っ! ……もう……」
思わずあきれ顔のランディだった。
「──」
……こんな態度をとっては、いるけれど。
(サンキュ、ランディ)
追いかける後ろからは見えないオリヴィエの表情は、穏やかに微笑みを讃えていた。
†
もう少し、こんな気楽な会話を続けていたかったが。
「──!」
オリヴィエは、キッと前を睨み付け。
「!?」
ランディは、素早く後ろを振り返った。
そして──背中合わせになった2人は、剣を構え。
「──何かあったら大声で叫んでください。すぐ行きます!」
「ふふっ。か弱き乙女じゃあるまいし」
「みんなのところへ、2人で無事に帰るんですからねっ」
「……了解☆」
短い会話の後、2人は双方向に勇んで身を投じた。
背中ごしの会話に、お互いの信頼を感じながら──再び、戦いの中へ。
[END]
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