プラトニック

written by ちひろsama


「……あらま」
 思わず。あっけにとられて目の前のソファを見つめる。
「こらー。ハラ出して寝てんじゃないよー☆」
 クスと微笑み、オリヴィエは、そこへ寝込んでしまったランディのめくれたシャツを直し、毛布を掛けてやった。



 ──それは、日が沈もうとする頃のこと。
 執務が終わり館への帰りがけ──オリヴィエは、ランニングしながら帰ろうとしていたランディに、夕飯を一緒に食べようと声をかけたのだ。
 もちろん、喜んでついていったランディ。
 自分の好きなものが食卓に並ぶ中、オリヴィエに話しかけながら、お腹いっぱい、食べ放題だった。

 ……で。
「この無防備、何とかならんかねー?」
 くーくーと可愛い寝息が聞こえるそばに頬杖をついて。
「……ったく。こっちの気も知らないで」
 オリヴィエは、その寝顔を楽しそうに堪能し、幸せそうなほっぺをつついた。

「起きないと、襲っちゃうぞ〜☆」


   ***


 なんとなく、外の気配が明るさを増したような気がした。
「んー……」
 のび〜をしながら目を開けたランディだった……が。
「!」
 突然目の前にあったドアップに、びっくり仰天だ。
「……っ」
 声を出しそうになった口を慌てて押さえ、何とかその場をしのぎ……そのドアップな人物を確認する。
(って、オ、オリヴィエ様……っ?)
 すーすーと聞こえる寝息がすぐ目の前で、夢の中……だった。
(夢の守護聖様が、夢の中……)
「……」
 思わず浮かんでしまった寒いギャグに自らツッコミを入れる気にもなれず。

 いったいどういう経緯でオリヴィエがこんなところに寝ているのかは、わからなかったが。
「身体冷えちゃいますよ、オリヴィエ様」
 おそらく彼がかけてくれたのであろうその毛布を、心の中でお礼を言いながら譲ったランディだった。

 ……で。
 今度は、ランディがその寝顔を堪能する番だった。
(あーあ。無防備だなぁ)
 目の前のきれいな寝顔は、未だ起きる様子はない。
「まったく……こっちの気も知らないで」
 ランディは、そのサラサラな前髪に……起こさないよう、そっと触れてみたり。

「起きないと、襲っちゃいますよー☆」


   ***


 そんな二人が、襲い襲われ……なんてカンケイになるのは、それから数ヶ月後のお話。

 今はまだ、さりげなくそばにいて。

 少しずつ心を繋いでいく、プラトニックな時間のさなか──



[END]





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