Coming XXX


 視察に降りた星で気がついた。
 吹く風はまだ冷たい。だが、そこかしこで春はもうすぐそこだと小鳥が梢がさざめいている。
「そうか……。じゃあ、そろそろかな」
 ひとりごちたランディを、案内役を務める王立研究員の青年が振り向いた。
「あっ、すいません。何でもないんです」
 慌てて頭を振って、数日前に降ったという雪の名残を見ながら道を往く。
 雪の降った後は空気が綺麗になる気がして、ランディは昔から好きだった。実際は、溶けかけた雪の上を車が何度も行き来して、道路はむしろ以前より汚くなってしまうのだが、それでも空気は澄み渡っていて、凛と音がしそうで……。
 ああ、そうか。
 今度は声に出さずに、ランディは呟いた。あの人に似ているのだ。
 おそらくちょうど今くらいの季節に生まれた人。誕生日を尋ねたランディを睨んだ薄水青の瞳を思い出す。生まれて間もない所を捨てられたため、拾われた日が誕生日となってはいるが本当の誕生日は知らないと言っていた。
 本当の誕生日ではなくても、この季節に生まれたことに変わりはない。第一、この星この街と彼の生まれた地とで、季節の巡り方が同じである可能性の方が少ないのだ。
 凍てつく寒さの中、気づく者だけが気づく、春の息吹。その優しさ。
 本当に、──セイランに似ている。
 ひとりでに頬が緩むのを感じた。
 たくさんの思い出を残してあっという間に過ぎ去った女王試験の最中、常春の聖地で一度だけ彼の誕生日を祝った。もう出会うことはないだろうと、静かに涙を流して微笑んだ彼を皮肉るように、その後彼らは二度の再会を果たしている。
 奇跡としか、彼の好きそうな言葉で言うなら運命の皮肉としか言いようのない出来事ではあるが、ことわざにもあるだろう、二度あることは三度あると。
 まだ起きていない、三度目の奇跡は、すぐそこまで来ているようにランディには思えた。


                                    fin.
   



こめんと(byひろな)     2003.2.21

セイランさん、お誕生日おめ……げふっっ!(殴)。
誕生日祝いをするといっておいてこのていたらく。──お誕生日からもう1週間も過ぎてますがな……。ごめん、セイちゃん。でも祝ってもらえるだけありがたいと思いねぇ(えらそう)。

つーこってセイランさんBD記念ランセイ。またこの二人一緒にいませんよ(苦笑)。たまには一緒にいるランセイ書こうね私。けどなんとなく、ランセイってそんなイメージが。ていうかだって、寄ると触るとケンカばっかでしょこのヒトタチ……(主にセイランがね)。
そんなこんなでトロワの後、ジェムストーリィズ直前のランセイです。──そんなマイナーな舞台を(笑)。だって、「2度あることは3度ある」ってのが使いたかったんだもの(爆)。2度目までは偶然で片付けてもいいけど、3度あったらそれはもう運命なのよ!って……ある意味腐れ縁とも言いますが(ヲイ)。
──いや、ホントは「セイランに似ている」がメインですよ……? 念のため。
2月って、まだまだ寒いけど、ふと辺りを見回すと確実に春は近づいてきているんだってわかって好きです。セイランに似合ってると思う。ランディは3月末──もう春の息吹マンマン(?)で、これもまたランディっぽい。さわやかボーイだからか初夏のイメージなランディですが、“誰もが希望に胸を膨らませる季節”──春に生まれたというのも、ランディらしいと思います。そんな、冬から春への移り変わりを、運命的邂逅ランセイ風味に。




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