「盛り上がっておしゃべりしたらハラが減ったなぁ──ってコトで、ゴーカスペシャル
ディナーターイム! なんと、女王候補のお二人が、腕によりをかけて作ってくれまし
たー!!」
「皆さんのお口に合うか分かりませんが、一生懸命作りました」
「ワタシが作ったのは絶対にオイシイよっ! アンジェのは知らないケドね!」
「もう、レイチェルったらぁっ!」
 そして運ばれてきた数々の料理に、皆が思い思いに手を伸ばす。ティムカはちょっと
迷った後、アンジェリークに声をかけた。
「アンジェリーク、あなたが作ったのって、どれですか?」
「えっ、と……、サラダと、ローストビーフと、スープ……」
「じゃあスープをいただきます」
「あっじゃあ私が!」
 誘うように湯気を立てるスープを、ティムカは一口すくって口に運んだ。隣ではアン
ジェリークが、祈るように手を組んでその様子を見つめている。
「ど……どうですか?」
「とってもおいしいですよ! 僕の大好きな、故郷のスープ料理にも負けないくらいに
おいしいです」
「よかったぁ……」
 その時、背後から良く通るアルトが聞こえた。
「あら、皆さん楽しそうね」
 振り向いて、アンジェリーク達は一同驚いて背筋を伸ばす。
「お食事中ごめんなさいね。──ティムカ、あなたに渡すものがあるの」
「僕にですか?」
 居ずまいを正していたティムカは、ロザリアの言葉に席を立った。その手にロザリア
が一通の手紙を乗せる。
「今日はあなたのお誕生日なんですってね、おめでとう。──さ、どうぞ皆さん、お食
事の続きをどうぞ」
「あ、ロザリア様も良かったらご一緒に、」
「ありがとう、アンジェリーク。でもね、わたくしまだやらなくてはいけないことがあ
るの。また誘ってくださる?」
 麗しい微笑みをアンジェリークに向けると、レースのヴェールをなびかせてロザリア
は去っていった。
「いっやぁ……、いつ見てもキレーなヒトやなぁ…………」
 うっとりとロザリアの後ろ姿を見送るチャーリーを尻目に、レイチェルは好奇心満々
の眼差しをティムカの手元に向ける。
「ねぇティムカ様、その手紙、誰から?」
「あ、そうですね。──差出人は書いてありませんね、開けてみてもいいですか?」
 皆の視線が集まる中、ティムカはそっと、手紙の封を切った。

     ティムカ、元気にしていますか?
     そろそろ、聖地での生活にも慣れた頃でしょう。あなたならきっと、女王候
    補や守護聖・教官の皆さまとも仲良くやっていけると、王も私もさして心配は
    していません。あなたが聖地での様々な経験を通じて、一回りも二回りも大き
    く成長してくれると信じています。
     女王試験のためにあなた方が聖地にいる間は、聖地と外界の時の流れは等し
    くなると聞き、わがままを言ってこの手紙を届けてもらいました。会えなくと
    も、皆あなたの誕生日を祝う気持ちに変わりはありません。帰ってきたら、改
    めて皆でお祝いをしましょうね。
     聖地での気候は穏やかだと聞いていますが、毎日の食事や睡眠など健康管理
    に気を付けて、有意義な日々を送ってください。

                              母より

    追伸:カムランが、口では平気だと言いつつも、時々さみしそうにしています。
       良かったら彼に手紙を書いてあげてください。

「母さま……、父さま、カムラン……」
「ティムカ様……」
「あはっ、すいません、何か、……嬉しくて…………」
 目尻を拭いながら笑顔を見せるティムカの手を、アンジェリークがそっと握った。
「とっても素敵なお母様ですね」
「……はい!」
「さーてそれでは! 改めて! ティムカちゃんの誕生日と、優しいティムカちゃんの
家族に!!」
「カンパーイ!!」


         ♪         ♪         ♪


 パーティの後、2次会になだれ込む皆と別れ、ティムカとアンジェリークは二人で森
の湖を訪れていた。
 空には満天の星、隣には優しく微笑む少女。そして、皆が自分の誕生日を祝ってくれ
る……。
「僕はとっても幸せです」
「ティムカ様?」
「アンジェリーク、今日は本当にありがとうございました」
 そう言って、ティムカはつないだ手に力を込めた。
「ティムカ様……」
 アンジェリークが隣を見ると、黒目がちの瞳がじっとこちらを見つめていた。
「聖地に来ることが決まったとき、本当は少し不安だったんです。僕に何が出来るんだ
ろう、皆さんのご迷惑になったりはしないかって……。でも、今はここに来て良かった
と思います。皆さんに会えて、──アンジェリーク、あなたに会えて……」
 ゆっくりと目を閉じ、何かを味わうような沈黙の後、ティムカは再び口を開いた。
「今までも、こんなに良い誕生日はないと思ったことは何度かありますけど、今日は、
──本当に、今までで一番素敵な誕生日です」
 つないだ手を持ち上げ、軽く唇を触れる。アンジェリークの頬が赤くなったのが夜目
にもわかった。
「そろそろ帰りましょうか。──部屋まで送らせてください」
「はい」
 手をつないだまま、二人は歩き出した。
 次の誕生日も、こうして二人一緒に迎えられたらいい。その言葉を、それぞれの胸に
秘めて。
   
                                             fin.



こめんと(byひろな)    2000.9.20

はい、あちこちで予告していたティムカちゃんお誕生日企画話です。
ティムカ王ではなく、まだ王太子のティムカちゃん。おっきくなったティムティムもかっこいいんだけど、そーすると他のみんなが出てこないからさ。……なんて、ただみんなでワイワイやってるのが書きたかっただけかも。
ほとんどオールキャラに近いです。出てこないヒトのが少ない。エルンスト書きたかったんだけどなぁ、出席してくれませんでした。セイランが自信ないです……、難しい。こんなんで、次のリクエストものは書けるのか!?
書いてて楽しかったのは、前日までの準備シーンですね。特にマルちゃんとメル(笑)。かわええ(*^_^*)とか思いながら書いてました。
そしてなぜか(?)ティムアンになってます。しかも公認か、これ(笑)。



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