愛しき瞳

    コンコンッ☆
    テラスに向かう窓ガラスを叩く音がする。
    深夜、新しい一日が始まって間もない頃のことだった。
    このテラスには何も植物を置いていない。そう風の強い日でもなかったから、風のい
   たずらで飛ばされてきたものの音とも思えなかった。そもそも聖地では、そんな強風は
   めったに吹かない。
    怪訝に思ったジュリアスは、用心しつつも月光を遮るカーテンを開けた。──公私と
   もに親しい腹心の男なら玄関からたずねてくる時間だ。ならば。
    そこには、鮮やかな金髪をみごとなセンスでデコレイトさせた、美貌の男が立ってい
   た。
   「はあ〜い、ジュリアス♪ 元気かな?」
   「──オリヴィエ。そなたどうしたのだ、このような時間に」
    彼は主星近くの惑星に、短期視察に出ていたのではなかったか、とジュリアスは思い
   めぐらせる。
   「視察のことならオッケイオッケイ☆ 大丈夫だよ」
    詳しくは明日ねー、とオリヴィエはいつもの軽い口調で指先を踊らせる。そこに月光
   を反射する飾りがあった。
   「そなた、また寄り道をしてきたのか」
    気づいてジュリアスが眉を寄せる。この男──オリヴィエは、視察などで外界に出る
   たびに、一人でどこかに寄っては新しい装飾品を手に入れてくる。ブランドや値段に関
   係なく、私に似合うものを見つけるためさ、とは彼の言だが、非常に彼らしいと、ジュ
   リアスは思った。守護聖らしからぬ、との忠告はとうの昔に諦めている。この男は、奔
   放に振る舞ってこそ、真価が発揮されるのだとも思うからだ。
   「そうそう、これ、あんたにあげる」
    そう言ってオリヴィエは、小さな包みを手渡した。手のひらに軽くおさまるほどの、
   紗のような白い紙に包まれている。上品な細い紺色のリボンが結ばれていた。
    ちらりとオリヴィエを見やってから包みをほどく。
    中の箱を開け、──ジュリアスは感嘆の声を上げた。
   「これは──、美しいな」
    そこにあったのは、小ぶりのブローチ。金の地金に、美しい、深い青みの宝石が埋め
   込まれている。何か、薔薇のような花をかたどったものだった。
   「いつもは人の分まで見てたりしないんだけどさ、なんか、これは、“呼んでる”気が
   したんだよねぇ」
    ジュリアスは、月光を反射させるブローチに声もなく見入っていた。
   「だからさ、買ってきちゃった。──ねぇジュリアス、」
    イイこと教えてあげよっかー、と、オリヴィエはあでやかに笑った。
   「それ、主星のとある街で見つけたんだけどさ、そこの露商人に聞いてみたんだよ。今
   日の日付を」
    日付?
    怪訝な顔をするジュリアスにくすりと笑みを投げると、オリヴィエは長い人差し指を
   天へ向ける。
   「そっ、日付。──8月15日だったよ」
    と、言うことはぁー。楽しそうにくるくると指を回し、ジュリアスをピッと指さす。
   「日付変わって、今日は16日。──あんたのお誕生日だよ、ジュリアス」
    はっとしてジュリアスが顔を上げる。目の前の男は、この上なく優しい表情をしてい
   た。
   「主星時間だから、あんたのホントの誕生日だ。──お誕生おめでとう」
   「────ああ、ありがとう……」
    ついでにもう一個イイこと教えてあげる。
    耳元で囁いて、オリヴィエは来た時と同じような唐突さでテラスの下へ消えた。
   
    そのブローチね、名前、「愛しき瞳」って言うんだよ
    あんたの、瞳の色さ

                                             fin.



   こめんと(byひろな)     2000.8.16

   突発的ジュリ様お誕生日企画!第1弾!(2弾もある・笑)
   ふっと浮かんでいきなり書きたくなったのでした。
   そして30分で書いた(笑)。最短記録〜♪
   いや〜んオリヴィエ様かっこいい〜〜
   ・・・って、これはジュリ様企画じゃないのか!?ってなかんじですが。
   いや私は光様より夢様のが好きだし。光様現在5位でございます。
   最初は2・3位だったのに。    復活なるか!?乞うご期待(爆)



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