普遍の関係

「なぁゼフェル。──ロキシーさんって、少しカティス様に似てないか?」
 すっごい大発見!といった面持ちで、ランディがゼフェルに耳打ちした。ゼフェルは片
目を眇め、ロキシーとカティスを思い浮かべて……納得したように頷く。
「あぁ? ──そー言われてみりゃ、そうだな」
「だろっ!?」
「俺がどうかしましたか?」
「あっ、ロキシーさん。エルンストさんも」
 ウワサをすれば何とやら、ロキシーとエルンストがやってきた。
「今、ロキシーさんがカティス様に似てるって話をしてたんです」
「カティス様?」
 首を傾げたロキシーの隣で、エルンストが眼鏡を押し上げながら冷静に口を開いた。
「確か、マルセル様の先代がそのようなお名前だったと記憶していますが」
「さすがエルンスト。そ、マルセルの前の緑の守護聖だぜ。──今まで何とも思っちゃい
なかったけどよ、一度気づくと……、へっ、いろいろ似てんなぁ」
「だろだろ!?」
 感心したようなゼフェルの隣で、ランディは賛同を得たおかげでより力強く拳を握り力
説している。
「へぇ、例えばどのあたりが似てるんですか?」
 興味深げに、ロキシーが問いかけた。
「うーん、まず全体の雰囲気が似てるんですよね。気さくで、すごく人好きのする感じで」
「なんつーか、憎めないおせっかいヤローだったよな。──お、ってコトはよ、エルンス
トがジュリアスか?」
「あっほんとだ! はは、おもしろいな」
「そっ、そんな、滅相もない」
 恐れ多くも光の守護聖を引き合いに出され、エルンストが手を振って後ずさる。
「いや、マジで似てんぜ。カティスもよー、くそ真面目なジュリアスを無理矢理息抜きに
引きずり出したりしてたもんな」
「うんうん。文句言いながらも、ジュリアス様も結構楽しそうだったよね」
 懐かしそうに語る2人に、ロキシーは何かを思いついたように尋ねた。
「へぇ……。で? ランディ様とゼフェル様は、どちらがどちらの役なんですか?」
「え? 俺たちですか?」
「オレは別に、コイツを息抜きに連れて出たりなんてしねーぞ」
「そうだよな、息抜きに出かけたまんま帰ってこないゼフェルを俺が連れ戻しに行くこと
はあっても、誘ってもらうことってないよな」
「ったりめーだろ、息抜きに行くのにてめー連れてってどうすんだよ」
「なんだよ、そんな言い方することないだろ!?」
 例によって言い合いをはじめた2人にロキシーは笑った。エルンストがたしなめる。
「……仲がよろしいようで」
「ナニ言ってんだてめっ、オレとコイツの、どこが仲イイってんだ!」
「こいつも、長い間俺との仲を認めてくれませんでしたよ」
 と、ロキシーは隣のエルンストを指差した。エルンストが少し赤くなる。
「ロキシー、そんな昔の話はもういいです」
 エルンストの抗議を無視してロキシーは続けた。
「今でこそ、俺のことを親友だと言ってくれますけどね、昔はもー、邪魔だのうるさいの
不真面目だの……」
「全部本当のことでしょう」
「おまえがあまりに真面目すぎるから、俺は敢えてやってたんだぜ?」
 ロキシーは大げさに肩をすくめた。おまけに手までついている。それを見て、ランディ
とゼフェルは顔を見合わせた。
「なんか、どっかで見た光景だな……」
「やっぱり、ゼフェルもそう思う?」
「っつーか、──オスカー?」
 炎の守護聖オスカーが、リュミエールに親切ごかして手助け──という名のちょっかい
──をし、非難の目つきを向けられたときにする仕草によく似ている。エルンストの冷た
いあしらい方も、そう思うとリュミエールのそれに非常に似ている気がした。
 なんというか、こういう関係は、どこでも良く見られるものなのだろうか……。
「──で? ランディ様とゼフェル様は?」
 2人の方に向き直って、ロキシーが話を戻した。
「う〜ん、どっちだろう?」
「アタマのカタさから言ったら、おめーがジュリアスでエルンストだよな」
「でも俺、ゼフェルのこと邪魔だなんて言ってないぞ。いつも邪魔だの鈍感だの文句言っ
てくるのはゼフェルじゃないか」
「真面目にやれだのなんだの説教してくんじゃねーか」
「それはゼフェルがさぼってばっかりいるからだろ!?」
「さぼってんじゃねーっつってんだろ」
「あれがさぼりじゃなくてなんだっていうんだ」
 再び始まった言い合いに、ロキシーがやれやれとため息をついた。エルンストが軽く睨
んで小声で囁く。
「ロキシー、あなたのせいですよ。──こうなることをわかってて話を振ったでしょう」
「いや、別に?」
 その時、軽い足音とともにマルセルがこちらに駆けてきた。ランディとゼフェルを見て、
またかというように眉を寄せる。
「もーッ、またやってるの!? ロキシーさんとエルンストさんが困ってるでしょ!」
 いっつもこうなんだからっ!と憤慨して、マルセルはロキシーたちの方に向き直った。
「ロキシーさんエルンストさん、ごめんなさい。ランディ達ってば、もう、いっつもこう
なんです」
「はは、構いませんよ。俺が原因を作ってしまたみたいですしね」
「え?」
「あ、マルセル。──なあなあ、ロキシーさんて、カティス様に似てると思わないか?」
 マルセルの姿を認めるなり、ランディはいきなりマルセルの肩を掴んで力説をはじめた。
もうゼフェルのことなど視界に入っていないかのようだ。
「えっ!?? えっと──。そ、そう言われると、うん……似てるかも」
「だろだろ!?」
「──ったくよー、てめーのアタマはニワトリかってんだよなー……」
 呆れて呟くゼフェルの隣で、ロキシーとエルンストが笑いをこらえる。
「で? ゼフェル様、結論は?」
「ん〜? ──ま、アタマの出来は比べるべくもないって感じだけどよ、どっちかってん
なら、あいつがジュリアスやエルンストで、オレがおめーやカティスってトコか?」
「はは、そうですね」
「なんつーか、……腐れ縁ってヤツだよな」
 諦めたような呟きに、ロキシーは爆笑し、エルンストは口元を押さえつつ眼鏡を押し上
げた。
                                        fin.


こめんと(by ひろな)          2001.3.14

お話の発端は、ランディじゃないけど、「ロキシーって、ちょっとカティスに似てる?」と、私が思ったことでした。だって、なんか……似てません?
で、ランディ&ゼフェルコンビと、ロキシー&エルンストコンビにご登場願おうと思ったんですが、ついでにカティジュリ、さらにはちらっとオスリュミって感じになってしまって……なんか、盛りだくさん?(^^;)
いや、こういう仲の良さって、好きなんですよね。文句言いつつ、何だかんだと。うん。
ただそんだけ!


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