せつなさの予感


 その人は、僕とはあまりにもかけ離れた、異質なモノのように感じられた。
 土の中で暮らす生き物が陽光を避けるように、僕は彼を避けていたのかも知れない。
 けれど、やがて少し目が慣れてくると、今度はその太陽に焦がれるようになった。
 結末は、最初の数ページを読んだだけでもう明らかだ。なのにその先を綴ろうとする僕
がいる。愚かなことだとわかっているのに。
 太陽に恋をした吸血鬼よりも滑稽だよ。彼の微笑みは、僕には眩しすぎる。
 僕は、彼の輝きを少しでも落としてやろうと、様々な棘を投げ氷のナイフで切りつけ、
けれどその輝きは少しも衰えることはなく、むしろより強くより確かに、僕の心を蝕んで
いく。


 ある日僕は、それはもう本当に唐突に、自分が光の中にいることに気がついた。眩い光
が僕を包み、僕の心を照らし出す。
 白日の下に晒されたその想いは、どこかで自覚していたものではあったけれど、それと
同時に思いがけない事実を僕に教えた。
 それは、手に入れてはいけない、太陽の破片。
 わかりきった結末以上に、それは恐ろしかった。
 幸せというものは、得られなくても不幸ではないけれど、失ってしまうのは、とても不
幸なことなんだ。
 その結末は、束の間の幸せの代償としてはあまりにも大きすぎる。
 だって、あの人は、どうせすぐに僕の前から姿を消してしまう。
 いや、姿を消すのは僕のほうだね。あの人にとってはほんの短い人生の一部分、その束
の間の時に、僕はこの世からいなくなるだろう。
 もしかすると、瞬きひとつの刹那の時間に。


 その予感は、確実に忍び寄ってきていた。
 逃れられない運命のように。
 気がつくと、恋い焦がれた青空が目の前にはあった。
 あたたかな日の光が僕を包み、毅い眼差しが僕を貫く。
 逃れられない、運命のように。
 そして始まるせつなの予感に、僕は目を閉じ、身を投げ出した。




                                    fin.
   



こめんと(byひろな)     2001.6.23

はい、立て続けにUPしておりますランセイです(笑)。セイちゃん独白。幸せっぽくない両思い話(苦笑)。
私の中で、本来ランセイのセイランさんは、攻めセイと違って(苦笑)こういう後ろ向きな人なのです。自分の好きな人が同じように自分を好きだと知ったら、普通嬉しいじゃないですか。でもこのセイランは、喜びよりもその先に待つ別れを感じて絶望するのです。だって、こんなに好きなのに、その人なしで生きて行かなきゃいけない日が遠からずやってくるとわかっているんだもの。それは、先の短いと知っている人と恋に落ちるのに似ている。ランディは、それでもきっとその思いを貫く人、別れのそのときまで、その後もきっと愛を誓う人。セイランにはその強さがない。ランディの、その強さに憧れ、嫉妬し、憎み、惹かれていく。──幸せハッピーvじゃなくで、痛みを伴う幸せ。それが私の中のランセイ像。
なので結果的に、もちろんランディもセイランさんのこと好きなんだけど、セイランがランディを好きでその心がどうこうというような話が多くなる気がします。
うわ……もうめちゃくちゃ世間のランセイテイスト♪に逆らってますね(^^;)
でもいいのだ。ゴーイングマイウェイ。



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