Abentsonne ─夕陽─「あれっ? ──ええっ!? ねぇねぇ、見て、あそこ!」 マルセルの指差す方向に目を向けて、ランディとゼフェルは一様に驚きの表情をした。 「珍しーコトもあるモンだな」 「起こした方がいいのかな……」 そっと、しかし急ぎ足で近寄った三人が見下ろす先には、木の幹にもたれて眠りについて いる、地の守護聖ルヴァの姿がある。 「寝てるトキまで本を手放さないあたりが“らしい”よな」 「ふふっ、大人の人でも、寝顔ってかわいいんだね」 「こら、マルセル。──どうしようか、このまま見て見ぬ振りはできないよな」 大丈夫だとは思いつつも、万が一、ということがある。 「じゃあ、今日は僕たちもここでのんびり静かにお話ししようか」 「そうだな。ゼフェルは? 一緒に昼寝?」 「るせっ、てめーらが騒いでる横でなんか寝られっか!」 * * * ふっと目を開けると、ラベンダー色に染まった空が見えた。 「あ。起きたみたいだよ」 「シッ、静かにしろよ。隠れてて、驚かしてやろうぜ」 「ゼフェル、」 「──え……?」 何度か瞬きを繰り返す。視界の隅で、金色の髪が閃いた。 「ふふっ、おはようございます、ルヴァ様」 「よ。よく寝てたな」 「昨夜は遅くまで起きてらしたんですか?」 立て続けに声をかけられ、頭が混乱する。それが弟のようにかわいい教え子たちのもので あることを理解するのに、しばしの間があった。 「え? ────あ、ああっっ!!」 自分がいつの間にか居眠りをしていたこと、そしてそれを彼らに見られてしまったことに ようやく気づき、ルヴァは恥ずかしさに顔を赤くして、慌てて立ち上がった。 「あっルヴァ様、起きてすぐ立ち上がると……」 あぶないですよ、と言おうとしたランディの忠告が終わらないうちに、ルヴァの身体が傾 いた。音を立ててルヴァが尻餅をつき、三人が腰を浮かし手を伸ばしかけた状態で停止する。 「あいたたたた……」 「ルヴァ様、大丈夫ですか?」 「どんくせー……」 駆け寄るマルセルの横でゼフェルが盛大にため息をつき、台詞を中断された口をそのまま に、ランディは困ったように頭をかいた。 腰をさすりながら立とうとしたルヴァが、不意に顔をゆがめて座りこむ。 「ルヴァ様!?」 「ああ、すいません、ちょっと足が……」 「足? ひねったか?」 「ちょっと見せてください」 服の裾からのぞく足首に触れられ眉をひそめたルヴァに、ランディは自分が痛そうな顔を した。 「右足ですね、無理に歩かない方がいいな。──ルヴァ様、俺の背中に乗ってください。ゼ フェル、手伝ってくれるか?」 「おい、大丈夫かよ? そいつけっこー重そうだぜ」 「じゃあ僕、本お持ちします」 「ああ、すみませんねぇ……」 マルセルに本を預け、ゼフェルの手を借りてランディの背中におぶさると、ルヴァはひど く申し訳なさそうに口を開いた。 「ああ、情けないですねぇ……。──ランディ、重くありませんか?」 「ハハッ、大丈夫ですよ、これくらい。それに、俺たちが声かけたせいで怪我させちゃった ようなものですし」 「そーそ、年寄りはそんな気ィ使わないでいいんだよ」 「もうゼフェルったら、そんなことばっかり言って! ホントに素直じゃないんだから」 「なんだとっ!?」 言い合いを始めた二人に笑い声を立て、ランディはルヴァを背負い直した。 「さあ、じゃあ帰ろうか」 「うん♪」 「よろしくお願いします」 にぎやかに家路を辿る四人の背中を、茜色の夕陽が優しく照らしていた。 fin. ![]() こめんと(byひろな) 2001.7.3 2冊目の無料配布本は、ひろなが勝手に作った(笑)ルヴァ様withおこさま本でした。 一応、ルヴァ様お誕生日に寄せて、と言うことで。 例の、ランルヴァのモトになったエピソードですね(笑)。自分ではまだGETしてないんですが。想像をふくらませて書いたらこういう感じになりました。 主役はルヴァ様で、お子様たちは脇役なので、平等に(?)お子様組三人の台詞の数をそろえてみたんですが、……よくよく考えると、台詞の一が一緒でも、長さがこれだけ違うと…………。フッ、許せ、ひいきだ(爆)。 あ。そうだ。 このお話、webでも無料配布にいたします。フリー創作、ってヤツですね。初めてだわんv 7月いっぱい、お持ち帰りは自由です。公開も自由、その際の加工(文字の大きさ、一行あたりの文字数etc.)も自由です。掲示板orメールで一言お知らせいただけると嬉しいです。──とかいって、誰も持って帰ってくんなかったりしてね(苦笑)。 |