長野まゆみ/鳩山郁子 〜どこか懐かしい〜



長野まゆみさんは、河出書房から主に本を出されている作家さんである。
いろんな意味で相川の目標。
書かれる作品自体も好きだけれど、たぶん彼女の感性そのものが全て好きなんじゃないかと。
テーマとして良く取り上げられるのは、
夏、水、少年、鳥、植物、鉱物、星、死、運命、・・・
こういったアイテムも好きだし、文章も好きだし、彼女の書く文字もとても好きだ。
僕は壊滅的に字が下手、というかオマエいい年してなんだよこの字、ってな字しか書けないので
(真剣にペン習字を習おうと思ったことアリ)、余計に彼女の流麗な、風雅な文字には心惹かれる。
あと、独特の作風。
普通、大抵の物語には起承転結があって、クライマックスに向けてだんだん盛り上がって行く
のだけれど、彼女の作品は、そう言うのはあまりない。
ある物語の、ひとつの章を切り取ったような、川の流れを一日分うつしてみたような、
そんな穏やかな展開のものが多い。
そんな、たゆたう川の流れのようなところも好きだ。
もちろん、この先この人達は一体どうなってしまうのだろう!?と思ってハラハラするようなものも
ある。けれど、そういう話でも、ラストはそれでめでたしめでたし、終わり、じゃなくて、
その後もきっと彼らの日常は続いて行くんだと思わせる、またどこかの話に続いていくような、
そんな終わり方をするものが多いのだ。

彼女は少年を多く書く。それは、取り立てて「少年愛」にこだわっているわけでなく、けれど、
「少年」という言葉に多くの人が重ね合わせる、「天使」だとか、綺麗なものだとか、
未完成なものの儚い美しさだとか、そういうものに惹かれるからなんだろう。
実際彼女の話には、少年達の、恋に近い感情が描かれる。けれどそれは恋というものとはどこか
違う。何か、心の繋がりとして、例えば唇をふれあったり、手を重ねたりするのだ。
最近彼女がシリーズで出している「白昼堂々」「碧空」「彼等」は、少年の恋を明らかに描いている。
けれど僕には、これは主人公である凛の恋を描くものと言うより、凛の成長、そして凛の周囲の
人間模様を描くものという気がする。それぞれの思惑や、願いや、そういったことを、もっと知りたい
と思う。そして続きが楽しみになるのだ。


さて、鳩山郁子、というのは、長野まゆみのもう一つの名前である。
正確に言うならば、文字を書くのが長野まゆみで、絵を描くのは鳩山郁子だ。
彼女の絵は、非常に彼女の話にマッチしている。
彼女の描く世界観におどろくほどぴったりとはまっているのだ。
カバー絵を自身で描くことはもちろん、挿し絵、さらには鳩山郁子の名で漫画をいくつか出している
(相川が持っているのは3冊)。
こちらもまた素敵なのだ。鳩山ワールド、長野ワールド全開。
ごく身近にいそうな少年の話でも、両親が子供の頃くらいの時代背景の話でも、
または近未来の話でも、どこか、懐かしい感じがする。
そんな、彼女の作品が、相川は非常に気に入っていて、
こんな美しい描写が出来るモノカキ(のはしくれ)になれたらなぁ、と、思うことしきりなのだ。

2000.10.9     written by HYOGA Aikawa


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