幻覚致死量

今 テレビの中で
誰かが誰かの背中を刺した

今 ラジオの向こうで
誰かが誰かの首を絞めた

今 新聞の上で
誰かが誰かの頭を撃った


今 教室の片隅で
誰かが誰かの悪口を言った
私は
それを言われたのが私だったらと思い
一人勝手に胸を痛めた

今 電車の中で
誰かが誰かの頬を叩いた
私は
それをされたのが私だったらと思い
一人勝手に頬が痛んだ


今 街はずれの埠頭で
誰かの命が海に沈んだ

今 線路の向こうで
誰かが帰らぬ旅に出た

今 静かな住宅街で
誰かが炎の蛇に食われた



私の命が
一人勝手に砕け散った



自己防衛本能

他人を傷つける為ではなく
自分を守る為に ナイフは存在する



凝り

胃が重いのは 言いたいことを溜め込んでいるから
胃が痛いのは 言われたことを消化できずにいるから

頭が重いのは 無謀な思考が溢れてるから
頭が痛いのは 野蛮な思想が暴れ出すから

胸が痛いのは
息が出来ないのは

言いたい言葉を言わせまいとする 僕の身体の 意志の凝縮



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