DVDレコーダー DVD-RAMへの道





今回はXS30で使える3種類の媒体と、使い分けのコツについてまとめてみたい。まずはこちらの表をザッとご覧あれ。
 内蔵HDDDVD-RAMDVD-R
容 量1.4で78時間 SPで26時間SPで2時間SPで2時間
コピー速度高速ダビング高速ダビング2時間ぶんで所要70分
HDDへの戻し高速ダビング再生しつつ再エンコード
価 格800円台/1枚400円台/1枚
互換性なしあり
その他故障は念頭に置くべきHDDより反応が遅い
4時間録画できるものもある
互換は100%保証ではない

これらの特徴を踏まえた上で、今現在私が体得した使い分けは、おおまかにいって次のようなものだ。すなわち、
HDDは作業領域、RAMは一時保管庫、Rは私有博物館(またの名を殿堂)

さらに基本的な運用コンセプトはこれ。
録画して編集して、保存できる状態になったものが2時間分たまったら、早めにHDDから抜く。

抜き先の切り分けはこうだ。
Fixさせて殿堂入りさせるならDVD−Rへ。まだ何かする可能性があるならDVD−RAMへ。

なぜ抜き先を切り分けるかの理由は、上の表にまとめた通り、まずは速度の違いである。HDDとRAM間のコピーは速いが(多分4倍速)、HDDからDVD−Rへは計算値で1.3倍速(120分÷90分)にしかならないし、DVD−RからHDDへ戻すとなると、再生しながらなので1倍速だ。つまり2時間ドラマであれば、丸々2時間かかるという訳である。まぁその間はTVで裏番組(?)を見ているか、作業は機械にまかせて他のことをやっていればいいのだが…。


その点、RAMならあっという間にコピーできて便利なのだけれど、編集への道で述べた通り、2時間録れる一般的なタイプの媒体で値段がDVD−Rの倍なのだ。4時間録れるタイプのヤツには 「ええっ!?」 というような値がついている。VHSテープのように安売りのものを買ってきて、じゃんじゃん使うという訳にはいかない。あくまでも一時保管庫として、使い回すのがショミンの道である。


さて皆様の中にはここで、いやちょっと待てよとお思いになる方がいらっしゃるかも知れない。なるほどRAMとRの問題点は判った、だったらオーバーフローするギリギリ手前まで、HDDに溜めておけばいいじゃんかと。26時間ということはRAM13枚分を溜めておけるのだし、何をするにも高速なのだし。


だが、パソコンのハードディスクに「これで十分」という上限がないのと同じく、内蔵HDDの26時間は決して潤沢きわまりない巨大倉庫ではない。新規の番組を録るだけならともかく、溜りに溜ったVHSテープの編集をするとなると、26時間なんて屁のような容量になってしまうのだ。
デジタルの低画質が見るも無残であることは前に述べた。わざわざVHSからコピーしてまで残そうという映像が、ガチャガチャでいい訳がない。満足のいく画質を実現するには、元のテープが3倍ならレート6.6、標準なら9.2でダビングすべしと私は決めた。が、これだと26時間は入らず、仮に全てを6.6で録ったとするとトータル18時間半と激減する。しかも、新規録画が馬鹿にならずあるのがいいわぁ星人の宿命ときたもんだ。カタログ数値の26時間に喜んではいられないのである。


ここでちょっとレートのお話を。
レートとはrate、割合とか率のことだ。よく『為替レート』とかいうあのレートである。DVDレコーダーの場合にはおそらく、画像の圧縮”率”を示すのだと思う。まぁ早い話が解像度みたいなものだ。
この数値が高ければ高いほど画像は精緻で美しく、比例して容量がデカくなる。低ければ画質が落ちて容量も減る。ビデオテープの標準:3倍と全く同じ理屈だ。3倍で録れば120分テープには360分ぶんの映像が入り、ただし画質は標準に劣った。あれと同じことである。
ただしDVDレコーダーの場合は、ビデオテープに標準と3倍の2指定しかなかったのと違って、上は9.2から下は1.4まで、ほぼ0.2刻み38段階の指定ができるのだ。


どうだすごいだろう、どんなもんだい!とメーカーに胸を張られても(いやトーシバさんが張っているかどうかは知らないが)、我々シロートとしては選択肢が多すぎて右往左往してしまう。そこで推奨レート(スタンダード・ポジション、SPと称される)として勧められているのが、ちょうど中間値の4.6なのだ。まぁまぁこの程度で録っておけば可もなく不可もなくでしょう、使っていくうちに慣れてきたらば、お好みの画質と必要な容量に合わせ、ご自分で指定して下さいという値。これはちょうど大学1年生に与えられる『だいたいの時間割』と同じですね。とりあえず1年めはこの時間割でやって、2年めからは自分で勝手に好きな授業を取ったらええがな、というあれ。レート4.6というのはそんな値なのである。


市販媒体に録画できる時間についても、このレート4.6を基準に計算されている。電機屋さんのタナにズラリと並んでいるRAMやRに、『120分録画可能』と書いてあったらばそれは、4.6なら2時間録れますよということだ。最高画質の9.2にすれば1時間しか入らないし、LPといわれるレート2.2なら4時間、最低レートの1.4でよければ6時間分入るのである。


なお今までの話は画質レートの話であったが、実際はこれプラス、音質レートというのもあるから複雑である。画質が38通り選べたように、音質も3通り選べてしまう。192kHzのDD1、384kHzのDD2、圧縮なし(だったと思う)のL−PCM…。この音質と画質の組み合わせによって、媒体1枚に収まる上限値もまた変わってくる訳だ。


しかし音質についてはまぁまぁ、SMAPくんの場合はそんなに…ねぇ(笑) こだわらなくてもいいんじゃないかと思う。お金持ちでホームシアターか何かがあって、地下室でステレオガンガンだったら音質も重要なのだろうけれど、一般家庭ならDD1で十分なんじゃないでしょうか。N響アワーでチャイコでもやるというんなら、その時はL−PCMで録ってみてもいいかも知れない。


なお画質音質の組み合わせと容量の早見表は、どのメーカーでも多分マニュアルに載せているだろう。XS30の場合は163ページ。私はそれを縮小コピーして、リモコン立てに貼ってある(笑)



レートについては以上として、HDDの話に戻る。大容量で高速で文句のない媒体に思えるHDDには、重要な特徴があることを忘れてはいけない。XS30のマニュアルにはしっかり書いてあるが、HDDとは壊れやすい部品なのだ。冷蔵庫や洗濯機やエアコンとは比べ物にならないほど、神経質な電子機器なのである。大容量の記憶装置がブッ壊れれば、大容量のデータが一瞬にしてパーになる。この危険性は意識しておくべきだと思う。


私は会社で、300台からのパソコンの面倒を日常的に見ている。これだけ数があるとだいたい月に1〜2台はおかしくなり、その原因の実に90%が、HDD系のトラブルだというのはレッキとした事実である。そのうちWindowsの再インストールで直るものがおおよそ80%、残りはメーカーに持ち込んで、部品自体の修理交換が必要となる。
こういう仕事をしているものだから、HDDなんて信用する気はさらさら起きない。HDDとは神経質で壊れやすい部品。過剰な信頼は禁物だ。だから2時間分溜まったら、チャッチャと抜きましょうね皆さん。そういう癖をつけちゃいましょう。さもないと、いつか泣きを見ますぜぇ。いやいやオドす訳じゃなく。


(またこの論でいくならば、サブ機器としてVHSデッキは絶対なくせないということになる。XS30にトラブルが発生した場合は、録画はVHSにやってもらうしかない。もう使わないなんて思わずに、ちゃんとヘッドクリーニングして大事にしよう。)


ところで高速ダビングについてだが、XS30においては、HDDとRAM間での、あるいはHDD内部での単純コピーのみ高速複写が可能で、それ以外の場合はそれなりの時間を要する。対してどこかのメーカーの製品に、HDD〜R間だったかレート変換だったか、それにも4倍速をサポートしている機種が1つだけあった。どこの何という製品だったかは覚えていないのだが、使いこんだらこれはけっこう便利な機能かも知れない。


この冬、私の周りにDVDレコーダーを購入した人は多い。だがなぜかみんな、XS30か40のオーナーとなってしまった(笑) ウラ技の情報交換ができるのはいいけれど、違うメーカーの製品を使っている人の使用感も聞いてみたい。パナソニック、パイオニア、シャープ、ソニー。それらをお使いの方々、よろしければメールを下さいまし。テクニカル面ばかり重視した専門雑誌の比較検討ではなく、シロートが実際使ってみての身近な比較こそ、これから購入しようと考えている人たちのお役に立つに違いない。


という訳でこのシリーズも(シリーズなのか?) 次回、VHSからのダビングについてを残すのみとなったが、それができた時は本当に感動もんだった。永久保存にしたいとずっと思い続けていた映像を、本当に永久保存にし得た実感は、シャトー・ヌマータで乾杯したいほどに素晴らしいものであった。続く。





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