愛と誠

 まだ熱気の消えない部屋の窓際、雲雀は外を眺めていた。

 スカーフの外れたセーラー服。下着は床に散乱し、素肌に直に当たる制服のウール地が、すこしちくちくする。セーラー服を着たままの雲雀を抱くのを好む、ディーノの仕業だ。

 短いスカートから覗く白い脚には白濁がとろとろと伝い、先ほどまでの行為の激しさを物語っている。

「恭弥」

 かちゃりとドアが開いて、シャツとジーンズを着た義兄のディーノが入ってきた。手にはミネラルウォーターのボトルがある。ひとつは、雲雀の好きな海洋深層水。もうひとつは、サンペレグリノ。

 海洋深層水のボトルを受け取って、雲雀はからからの喉に冷たい水を流し込んだ。

「……不味い」

「なんだ、うがいしてなかったのかよ」

 甘みがあると言っていいくらいまろやかな海洋深層水に顔をしかめた雲雀に、サンペレグリノを喉を鳴らして飲んだディーノは苦笑した。口の中の白濁の残滓の後味だろう。

「あなたが拭いて行ってくれなかったんでしょ。この脚で、部屋から出ろって?」

 スカートをつまみあげて、雲雀は白濁まみれの脚をディーノに見せた。一瞬喉を詰まらせたディーノは、げほげほと咳き込む。

「そんなの見せつけるなよ。またヤりたくなるだろ」

 本心では困っていないとわかる困り顔で、ディーノは雲雀に近づく。机にサンペレグリノを置くと、雲雀の手から海洋深層水を取り上げながら、その腰を抱き寄せた。

「なに言ってるの。また欲しいから見せたのに決まってるじゃない」

 ディーノの頬に手を滑らせて目を閉じると、ディーノは誘われるままに雲雀と唇を重ねた。

「ふぅ…ん、んぅ……」

 雲雀が鼻で啼く声がするころには、顎を零れた唾液が伝っていく。ディーノの唇が雲雀のそれを吸い上げ、食みながら、ぬるぬるとした舌は雲雀の口腔を思う様舐めまわしていた。

 焦らすように上あごの奥を撫でられて、雲雀の腰がもぞもぞと揺らめく。ディーノは雲雀を抱き寄せていた手を片方、下に滑らせると、スカートを手繰って脚のあいだに差し入れた。

「んふぁ…っ」

 秘処に指があてがわれて、雲雀の身体がびくんと震えた。そのまま自分に縋らせておいて、ディーノは秘処の入り口を指で開く。中指を挿れ、くるりと中を探ってから抜き取ると、その動きに釣られて、奥から白濁がまたぱたぱたと零れ落ちた。

「恭弥。向こう向いて、机に手を突いて」

 唇を離して指示すると、雲雀はとろりとした目つきでうなずいて、ディーノに背を向け、言われたとおりの姿勢をとった。ディーノの目前に、白濁と蜜でぐちゃぐちゃになったバラ色の秘処が曝される。ディーノの視線を受けて、中心から、とろりと新たな蜜が零れた。

「あ…っん」

 完全に勃ち上がっている楔を取り出し、雲雀の秘処に埋め込んでいく。雲雀は高い声を上げて、挿入の快感に耐えた。

「可愛い、恭弥」

「やんっ…、あ、あ…っ」

 ぱちゅぱちゅと水音をさせながら、ディーノが腰を打ち付ける。雲雀の幼い腰には余るほどの質量を飲み込んで、雲雀は啼いた。

「あぁっ、あ…はぁ、あっ、あぁ…っ」

「やべー、恭弥、すげー締め付け。たまんねー…」

「ぁん、あ、あぁ…、やぁ……あん、ん、ぅん…」

 ぐいぐいと楔をねじ込むディーノの動きは、雲雀の理性を焼き切るには充分だった。毎日のように受け止めても、未だ慣れないほど太くて長い楔を、雲雀の秘処は無意識の動きで必死に包み込み、さらに奥へと誘う。

 セーラー服の裾から手を入れて、ディーノは雲雀の小ぶりの胸を揉んだ。

「ひゃん、ぁん…ぁ、やぁ…んっ」

 潰さないように気をつけながら揉みしだき、頂をつまみあげて捏ねると、雲雀は鼻にかかった声で啼く。

「あ…っ、やあぁっ、来てあなた、来てっ」

 脳がホワイトアウトする瞬間、悲鳴とともに、雲雀の腰が大きく動いていっそう強く楔を締め付ける。

「…ぅくっ」

 短くうめいたディーノは、雲雀の胎内に白濁を放った。びくびくと痙攣する襞にねだられて、ディーノはすべてを中に出しきる。

 ずるりとディーノが楔を抜き取ると、そのまえに注がれていた分と合わせて、少なくない白濁がたらたらと流れ出した。

 フローリングの床に、白い液が模様を作る。

「……はぁ。いい眺め」

 満足そうにため息をついたディーノが、白濁を溢れさせる雲雀の秘処を、美味しそうに眺める。くったりと机に伏せた雲雀は、秘処から生暖かいものが零れていくのを感じながら、うっとりと微笑んだ。



「そういえば、さっき、窓の外見てたろ。なにかあったのか?」

 雲雀を抱き上げ、ベッドの上に移動したディーノが、雲雀を膝の上に乗せて訊ねた。ディーノの膝をまたいで向き合って座った雲雀は、姿勢がちょうどよかったために、勢いを取り戻したディーノをまた飲み込まされながら、すこし考えた後に答えた。

「なにもないけど、ただ……この家に、いたくないなって」

「なんで? オレにヤられるからか?」

 ずぐ、ずぐ、と突き上げながら訊くことでもなかろうに、ディーノは雲雀を揺する手も止めずに訊く。雲雀はふるふると首を振った。

「あなたとは、ずっとこうしていたい。でも、僕は……この家にいる限り、あなたの妹なの」

「恭弥……」

「血が繋がってなくても、父さんがあなたを息子だと思ってる限り……あなたは僕の兄さんなの。僕は、それが嫌」

 ディーノに縋りついて腰を振る雲雀は、独占欲をむき出しに、ディーノの首を抱く腕に力を込めた。

 目の前の雲雀の唇にキスを落としたディーノは、いつになく真剣な眼差しで口を開いた。

「なら、オレと来るか?」

「……え?」

「パスポート、持ってたよな。学校、卒業させてやれねーのは残念だけど……駆け落ちしようぜ」

「どこへ…?」

「イタリアだ。オレのイタリアでの仕事はまっとうじゃねーけど、誓って、恭弥に辛い思いはさせねー。オレの嫁さんになって、イタリアで暮らすのはどうだ?」

「あなたの、お嫁さん」

「ああ。オレの嫁さん。恭弥はキャバッローネ・ファミリーのボスの妻だ」

 いつのまにか、腰の動きは止まっていた。ディーノの楔を胎に収めたまま、雲雀はじっとディーノを見つめる。

 呆然とディーノを見つめる雲雀の頭にディーノの言葉が沁み込むまで、しばらく時間がかかった。

 そして。

「うん。行く」

 返事をした雲雀に、ディーノは誓いのキスをした。




 その日の深夜、帰宅した雲雀の両親が見たものは、無人の自宅だった。

 娘のタンスは空になり、息子のトランクはなくなっていて、貴重品をしまっている仏壇の引き出しからはパスポートと通帳が消えていた。

 急いで手配をしたときには、金髪のイタリア人と黒髪の少女を乗せたアリタリア航空の便は、離陸していた。





 そして数年の後、キャバッローネ・ファミリーはその歴史の中で最大の繁栄を迎えた。


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