名曲名盤

ここでは、ぼくがこれまでに聴いたCDの中から、名盤100枚を独自に選びます。
選出に当たっては、次のような基準に拠ることにします。

T.特定のジャンル、作曲家に偏ることを避ける。ただし、例えば交響曲が現代音楽
  よりも多くなったり、モーツァルトやベートーヴェンのCDが他の作曲家よりも多く
  なるのは、これらのジャンル、作曲家に名曲が多い以上当然である。

U.歴史的名盤としての評価を確立しているCD(例えば、フルトヴェングラー指揮バイロイト祝
   祭管弦楽団のベートーヴェン「第九交響曲」)は必ず選出する。なお歴史的名盤として評
  価されているかどうかの判別に際しては、音楽之友社発行の「レコード芸術」誌82年7月
  号の特集「歴史的名盤100」、同誌91年12月号特集「不滅の名盤100」、及び音楽之友
  社発行「クラシック不滅の名盤800」(97年4月刊)を参考にしました。

ウ.それ以外は、名盤と評価され、しかもぼくの聴いたCDの中から、ぼくが特に優れていると
  考えるCDを選出する。

エ.同曲異演は原則として選ばない。なぜならクラシックの名曲は非常に多いので、同じ曲に
  ついて色々な演奏家なCDを挙げるよりも、なるべく多くの曲のCDを挙げた方が良いと思
  うからです。

上の基準に基づいて次の百枚を選んだ(作曲家のアルファベット順)。簡単なコメントと共に
リスト・アップします。

1.バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ
    シェリング(vn)ヴァルヒャ(69年、Ph)
    いきなり唐突かもしれない。しかし、バッハの「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ」
    6曲は、「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」の影に隠れているのかもしれな
    いが、それと並ぶ傑作だと思う。シェリングのよく「真摯な」と形容されるスタイルは、ベートー
    ヴェンなどでは少し窮屈なようにも思うが、バッハには最適なようだ。

2.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻、第2巻
    リヒテル(p)  (70、72年、Me)
    平均律は、グールドとリヒテルのどちらを選ぶかを迷ったが、グールドは後述のように
    ゴールドベルクを2枚とも選ぶため、平均律はリヒテルを選んだ。リヒテルの曲に沈潜
    するニュアンス豊かな演奏は見事なものである。

3.バッハ「ゴールトベルク変奏曲」
    グールド(p)  (55年、SC)

4.バッハ「ゴールトベルグ変奏曲」
    グールド(p)  (81年、SC)

5.バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」
    ミルシテイン(vn) (73年 G)

6.バッハ「無伴奏チェロ組曲」
    カザルス(vc) (36−39年、EMI)
    ぼくの最も愛聴しているのはフルニエ旧盤(60年、Ar)だが、この曲を発掘したカザル
    スが歴史的名盤としての評価を確立しているので、こちらを選んだ。カザルスの古めか
    しい(そこがまた魅力でもあるのだと思う)が腰の座った演奏も立派なものである。


7.バッハ「オルガン作品全集」 
    ヴァルヒャ(org) (56−70年、Ar)

8.バッハ「マタイ受難曲」
    リヒター指揮ミュンヘン・バッハO、同CHO、ヘフリガー(T)、他
    (58年、Ar)

9.バッハ「ミサ曲ロ短調」
    リヒター指揮ミュンヘン・バッハO、同CHO、シュターダー(S)、他
    (61年、Ar)
    世評に従ってリヒター盤を選んだが、ジュリー二盤(94年、SC)も立派な演奏だ。余談
    になるが、ジュリーニの宗教曲の演奏は、モーツァルト「レクイエム」等全て立派なもの
    だ。

10.バルトーク「弦楽四重奏曲全集」
    アルバン・ベルクSQ(83−86年、EMI)
    バルトークはぼくの苦手な作曲家だが、20世紀の代表的な作曲家の一人という確立し
    た評価を得ている。そこで代表的なCDを1枚(3枚組)だけ選んだ。 しかしぼくにとって
    は、同じ20世紀の弦楽四重奏曲でもショスタコーヴィチの方がはるかに共感できる。

11.ベートーヴェン:交響曲全集
    バーンスタイン指揮ウィーンPO、他 (77−81年、DG)
    ベートーヴェンは、古くはトスカニーニによる記念碑的演奏があり、また近年ブリュッヘ
    ン等オリジナル楽器による優れた演奏も現れた、が、一つ選ぶとするとバーンスタイン
    盤がよいと思う。全集としての統一性・完成度が非常に高いし、それぞれの曲の良さを
    最も引き出した演奏だと思うからだ。以下に、全集の他に歴史的名盤とされているもの
    を3枚選ぶ。

12.ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」、第7番
    カルロス・クライバー指揮ウィーンPO (74年、75−76年、DG)

13.ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
    ワルター指揮コロンビアSO(58年、SC)

14.ベートーヴェン「交響曲第9番「合唱」」
    フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭O、同CHO、他(51年、EMI)

15.ベートーヴェン「ピアノ協奏曲全集」
     グルダ(p)シュタイン指揮ウィーンPO(67−70年、Decca)
     この曲の代表盤として長く愛好家の間で聴かれてきたのはバックハウス盤である。し
     かしグルダ盤の生き生きとした演奏の方が、少なくとも曲の本来の良さを引き出し
     たものといえると思う。ベートーヴェンのピアノ協奏曲は、古くはシュナーベルから近
     年の内田光子に至るまで、それこそ枚挙の暇もないほど多くの名演奏がある。

16.ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」
     オイストラフ(vn)クリュイタンス指揮フランス国立放送O(58年、EMI)
     ぼくは、古今のヴァイオリン協奏曲の中では、ベートーヴェンが最も好きだ(次がブラーム
     ス)。オイストラフ盤は堂々とした風格のある演奏で、このページを最後まで見ていただけ
     ればお分かりのように、他の曲でオイストラフを選ぶことができなかったので、ここでオイ
     ストラフを選んでおきたい。

17.ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集
     アルバン・ベルクSQ(78−83年、EMI)
     彼らの旧録音の方である。

18.ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲全集
     ラサールSQ(72−76年、DG)
     透明感のあるすっきりした演奏。ラサールSQの演奏は、ベートーヴェンの後期
     弦楽四重奏曲を、作曲者の精神性などといったことを考えずに純粋に音楽として聴く
      のに最も良い。こんなに良いディスクが現在国内盤廃盤とは、一体どうなっているの
      だろう?

19.ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第7番「大公」
   シューベルト:ピアノ三重奏曲第1番
    カザルス・トリオ(26,28年、EMI)
    歴史的名盤とされているので選んだが、ぼくの個人的には、「大公」トリオは、アシュケナージ
    の瑞々しいピアノが光るパールマン/アシュケナージ/ハレル盤(Decca)に惹かれている。

20.ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
    クレーメル(vn)アルゲリッチ(p)(84−94年、G)
    従来のヴァイオリンとピアノのデュオのイメージを覆す衝撃的なディスクだった。これを
    聴くと昔から親しまれていたオイストラフ/オボーリン盤はどうしても見劣りしてしまう。

21.ベートーヴェン「チェロ・ソナタ全集」
    カザルス(vc)ホルショフスキー(p)(第3番のみシュルホフ(p))
    (30、36、39年、EMI)

22.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集
     バックハウス(p)(52−69年、Decca)

     ぼく自身、最も長い間お世話になっているディスクだ。音楽評論あるいはエッセーでも
     書いているように、ぼくは現在では、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集はアラウがベ
     ストだと思っている。しかし世評が高いのは依然バックハウスだし、ぼく自身最もお世
     話になったことは間違いない。そこでバックハウスを選んだ。

23:ベートーヴェン:ディアベッリ変奏曲
     アラウ(p) (85年、Ph)
     「ディアベルリ」はバッハの「ゴールトベルク変奏曲」と並ぶ変奏曲の傑作だと思う。
     ベートーヴェンの最高傑作はひょっとするとこの曲かもしれない。

     ベートーヴェンはこれまでに挙げた曲以外にも大曲「ミサ・ソレムニス」があるが、100
     枚という制約を設けたため、泣く泣く選ぶことができなかった。

24.ベルク:ヴァイオリン協奏曲
        管弦楽のための3つの小品
      クレーメル(vn)、C・デイヴィス指揮バイエルン放送O (84年、Ph)

     シェーンベルク、ウェーベルン、アルバン・ベルクの三人は新ウィーン学派と呼ばれて
     いる。そして彼らの音楽を難解だとして敬遠する人が多い。彼らの作品にはぼくのよう
     にかなり聴いているリスナーから見ても実際に訳のわからないのも少なくないのだか
     ら、一般にそのように思われるのも無理はないと思う。しかし、上の三人を一括りにす
     るのは良くないと思う。またこの三人の作品をいろいろ聴いていると、結構良い曲だな
     と感じるものに時々出会うことが出てくる。ベルクのヴァイオリン協奏曲はその最たる
     もので、古今のヴァイオリン協奏曲の中でも屈指の名作だと思う。

25.ベルリーニ:歌劇「ノルマ」
     セラフィン指揮ミラノ・スカラ座O、同CHO、カラス(S)、コレッリ(T)、他
     (60年、EMI)
     不世出の女神マリア・カラスの代表作として知られるもの。なお本ページでは、あまり
     オペラのCDは選んでいない。なぜなら、ぼくはやはりオペラは聴くものではなく見るも
     のだと思うし、オペラのCDはあまり持っていないからだ。以下では、主なオペラ作家
     (ベルリーニ、モーツァルト、プッチーニ、R・シュトラウス、ヴェルディの5人)について1
     作ずつオペラCDを選ぶことにする。ただしワーグナーだけは3作選ぶ。なぜならワー
     グナーの作品は、オーケストラ部分が非常に精妙に作られているので、CDでも十分
     楽しめるからだ。

26.ベルリオーズ:幻想交響曲
     ミュンシュ指揮パリO(67年、EMI)
     歴史的名盤とされているので選んだ。だがこれはぼくの勘違いかもしれないが、
     幻想交響曲という曲自体が、ブルックナーやマーラーの人気上昇と反比例して段々と
     愛好家の間で聴かれなくなってきている。

27.ブラームス:交響曲全集
     バーンスタイン指揮ウィーンPO(81、82年、DG)
     全集でそろえるとしたら、ベートーヴェンの時と同じでバーンスタイン盤が良いと
     思う。

28.ブラームス「ピアノ協奏曲第2番」
    バックハウス(p)ベーム指揮ウィーンPO(67年、Dec)

29.ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集
    クレーメル(vn)アファナシエフ(p)(87年、DG)

30.ブルックナー:交響曲全集
    ヨッフム指揮ドレスデン国立O (75−80年、EMI)

31.ブルックナー:交響曲第8番
    カラヤン指揮ウィーンPO(88年、DG)

32.ブルックナー:交響曲第9番
    ヴァント指揮北ドイツ放送O(93年、R)

    ブルックナーは、別のページで書いているようにぼくにとって、モーツァルト、ベートーヴ
    ェンに次ぎ、バッハと並んで好きな作曲家だ。ここに挙げた以外にも、ベーム指揮ウィ
    ーンPOの第四、クナッパーツブッシュ指揮ミュンヘンPOの第八、ジュリ−ニ指揮ウィ
    ーンPOの第八及び第九、バーンスタイン指揮ウィーンPOの第九等数々の名演奏が
    ある。

33.ショパン:ピアノ協奏曲第1番
   リスト:ピアノ協奏曲第1番
     アルゲリッチ(p)アバド指揮ロンドンSO(68年、G)

34.「ショパン・リサイタル第2集」(ピアノ・ソナタ第2番、アンダンテ・スピアナートと華麗
   なる大ポロネーズ、スケルツォ第2番)
     アルゲリッチ(p)(74年、G)

35.ショパン:マズルカ全集
     ルービンシュタイン(p)(65、66年、R)
     今更言うまでもないが、このHPのタイトルにもなっているルービンシュタインのショパ
     ンはマズルカに限らず全て名演奏である。

36.ショパン:練習曲集
     ポリーニ(p)(72年、DG)

37.ショパン:夜想曲全集
     ピリス(p) (95−96年、DG)
     いい年してショパンのノクターンなんて、と思われる読者もおられるかも知れない。
     だがルービンシュタインは70歳を過ぎてからショパンのノクターンを録音している。
     ピリス盤は近年出色の出来で、しかも全21曲収めた貴重なもの。

38.ショパン:ワルツ集
     リパッティ(p)(50年、EMI)
     これはブザンソン音楽祭のライヴ録音ではなく、スタジオ録音の方。ショパンのワルツ     は、他に、コルトー、ルービンシュタインも決して劣らぬ名演である。

39.ドビュッシー:交響詩「海」、バレエ音楽「遊戯」、交響的断章「聖セバスチャンの殉
   教」、牧神の午後への前奏曲
     デュトワ指揮モントリオールO(89年、Dec)

40.ドビュッシー:ピアノ音楽全集
     ギーゼキング(p)(50−54年、EMI)

41.ドヴォルザーク:交響曲第8番、スラヴ舞曲第10番、同第3番
     セル指揮クリーブランドO(70年、EMI)

     1960年代に全米随一のオーケストラと言われた(らしい)セル指揮クリーヴランドOの
     代表盤として選んだ。セルのディスクは今聴くと、どれもきちっとしたムラのない演奏で
     (ぼくの勘違いかもしれないが)今は忘れられつつあるようだが、再評価されてしかる
     指揮者べきだと思う。

42.ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
   チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲
     ロストロポーヴィチ(vc)カラヤン指揮ベルリンPO(68年、DG)

43.フォーレ:レクイエム
     クリュイタンス指揮パリ音楽祭O、エリザーベト・ブラッスールCHO、他
     (62年、EMI)

44.フランク:ヴァイオリン・ソナタ
   フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番
   ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
     ティボー(vn)コルトー(p)(27、29年、EMI)

45.ハイドン:「ロンドン交響曲集」
     ブリュッヘン指揮18世紀O(86−93年、Ph)
     ハイドンは今となってはオリジナル楽器による斬新な演奏で聴きたい。

46.ハイドン:「弦楽四重奏曲作品76」
     ウィーン・コンツェルトハウスSQ(W)

     ハイドンの弦楽四重奏曲は宝の山だと思う。有名な「皇帝」や「ひばり」等のあだ名
     のついた曲以外にも良い作品が多い。演奏会では、まるで前座のように時々取り上
      げられるだけだが、惜しい事だ。ぼくの好みでは、最後の作品77(2曲しかない)だ
     が、一般にはエウリディーティ四重奏曲と呼ばれる作品76(「皇帝」や「五度」が含ま
     れている)の方が人気があるので、こちらを選んだ。ウィーン・コンツェルトハウスSQ
     の演奏は、いかにも古き良き時代の風情に溢れるもの。

47.リスト:ピアノ・ソナタ
   シューマン:ピアノ・ソナタ第2番
     アルゲリッチ(p) (71年、DG)
     驚異的な名演だと思う。上述のショパンとともにアルゲリッチのピアノ・ソロの代表作
     と言える。

48.マーラー:交響曲全集
     バーンスタイン指揮アムステルダム・コンセルトヘボウO、ニューヨークPO、
     ウィーンPO、他(74−90年、DG)
     マーラー演奏史上のマイルストーン。どれも主観性の強い濃厚な演奏だが、これに
     魅せられると他の演奏は聴けなくなってしまう。バーンスタインのマーラーは、フルト
     ヴェングラーのベートーヴェンのようなもので、21世紀はもちろん22世紀までも残る
     と思う。

49.マーラー:交響曲第9番
     カラヤン指揮ベルリンPO(DG)
     このディスクは、この後でバーンスタインによる同じ曲のディスクが出たので少し
     蔭が薄くなったのかもしれないが、カラヤンとベルリン・フィルという20世紀の演奏
     芸術の代表的なコンビの到達点と言っても過言ではないほどの名演だと思う。
     なにしろ曲が究極の名曲だけに、バーンスタイン盤と共に座右に持っておきたい
     ディスクだ。

50.マーラー:交響曲「大地の歌」
     ワルター指揮ウィーンPO、フェリアー(A)、パツァーク(T)(52年、Dec)
     これも語り尽くされた感のあるディスク。名歌手フェリアーの絶唱はまさに涙が出るほ
     ど感動的。

51.モンテヴェルディ:聖母マリアの夕べの祈り
     ガーディナー指揮イギリス・バロックO、モンテヴェルディCHO、他
     (89年、Ar)
     音楽史と言われるジャンルはぼくが最も苦手だ。ぼくにあのヴィヴァルディ「四季」です
     らあまり良さがわからない。ましてやモンテヴェルディが分かるわけがない。だがここ
     15年くらいの間に主にピリオド楽器によりモンテヴェルディの録音は多数行われ、
     名曲との評価が確立したように見える。そこでこのページでは、ヴィヴァルディ「四季
     」とモンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」のみを音楽史というジャンルの代表
     として選ぶことにした。

52.モーツァルト:交響曲第38−41番
     アーノンクール指揮ヨーロッパ室内O(91年、93年)
     1991年のモーツァルト没後200年の命日の記念碑的演奏のライヴ録音。

53.モーツァルト:後期6大交響曲集
     ワルター指揮コロンビアSO(59−60年、SC)
     ワルターのモーツァルトは絶対に落とせない。

54.モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番、第21番
     グルダ(p)アバド指揮ウィーンPO(74年、DG)

55.モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番、第27番
     カーゾン(p)ブリテン指揮イギリス室内O(70年、Dec)
     モーツァルトのピアノ協奏曲は名曲揃いで、他にも名盤は多い。昔からクララ・ハス
     キルのピアノによるものが名盤とされているし、ぼくの考えではラローチャによる最近
     の録音(R)が非常に優れている。以下ピアノ協奏曲以外の協奏曲の名盤を選ぶ。

56.モーツァルト:クラリネット協奏曲
           ファゴット協奏曲
     ウラッハ(cl)、エールベルガー(fg)、ロジンスキ指揮ウィーン国立歌劇場O
     (54年、W)

57.モーツァルト:ホルン協奏曲全集
     ブレイン(hrn)カラヤン指揮フィルハーモニアO(55年、EMI)

58.モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲
           クラリネット協奏曲
     ランパル(fl)、ラスキーヌ(hp)、ランスロ(cl)、パイヤール指揮パイヤール室内O
     (63年、E)

59.モーツァルト:弦楽五重奏曲全集
     ブダペストSQ、トランプラー(va)(65−66年、SC)
     一世を風靡したブダペストSQの最後の録音に当たるもの。

60.モーツァルト:クラリネット五重奏曲
   ブラームス:クラリネット五重奏曲
     ウラッハ(cl)ウィーン・コンツェルトハウスSQ(51年、52年、W)
     このクラリネットを使った2大名曲は、ほとんどの場合カップリングされている。いか
     も古き良き時代を思わせるウラッハとウィーン・コンツェルトハウスSQで聴くのが
     一番良いと思う。

     なおこの当たりで古い録音ばかり取り上げているとお感じになる読者もおられると思
     う。たしかに現在は録音技術が格段に向上し、また演奏家の演奏技術も向上した。
     しかしこれらのディスクで聴くことのできる「味わい深さ」は、それと反比例するかの
     ように段々と失われてきている。

61.モーツァルト:弦楽四重奏曲第14〜19番「ハイドン・セット」
     アルバン・ベルクSQ(87−90年、EMI)
     アルバン・ベルクSQの2度目の録音。

62.モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集(25、28、32、34番)
     グリュミオー(vn)ハスキル(p)(58年、Ph)
     愛好家の間で昔から名盤として聴き継がれてきた1枚。グリュミオーが持ち前の美
     のびのびと弾いている。ただぼくの考えでは、モーツゥルトのヴアイオリン・ソナタは、
     オイストラフ/バドゥラ・スコダ盤(72年、De)(これは存在すら余り知られていない)も
     グリュミオー/ハスキル盤とスタイルはまるで違うものの、決して劣らない名演だと思う。

63.モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集
     ピリス(p)(89−90年、DG)

64.モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」
     ベーム指揮ドイツ・オペラO、同CHO、F=ディスカウ(Br)、他
     (68年、DG)

65.モーツァルト:レクイエム
     ベーム指揮ウィーンPO、ウィーン国立歌劇場CHO、マティス(S)、他
     (71年、DG)

66.ペルト「タブラ・ラサ/アルヴォ・ペルトの世界」
     クレーメル(vn)、ジャレット(p)、他 (77−83年、ECM)
     現代曲というジャンルは今後一体どういう方向に行くのだろうか。ほんの20年ほど前
     まで前衛音楽の代表のように言われたジョン・ケージは今ではあまり話題に上らなく
     なったし、90年代前半大きな話題になったグレツキ「悲歌のシンフォニー」たった5年
     で忘れ去られた。現代音楽が危機に貧しているのは間違いない。ぼくが最も天才性を
     感じるのは、先年逝去したアルフレート・シュニトケだが、同じバルト3国出身のアルヴ
     ォ・ペルトの方が聴きやすい音楽を創作していので、こちらを選んだ。

67.プッチーニ:歌劇「トスカ」
    デ・サーバタ指揮ミラノ・スカラ座O、カラス(S)、ディ・ステファノ(T)、他
    (53年、EMI)

68.ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
   プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第5番
     リヒテル(p)ヴィスロツキ指揮ワルシャワPO
     リヒテル(p)ロヴィツキ指揮ワルシャワPO (59年、DG)

69.ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番
     ホロヴィッツ(p)オーマンディ指揮ニューヨークPO(78年、R)

70.ラヴェル:管弦楽曲集
     クリュイタンス指揮パリ音楽院O(61,62年、EMI)

71.ラヴェル:ピアノ作品全集
     ギーゼキング(p) (54年、EMI)

72:レスピーギ:交響詩「ローマの松」「ローマの噴水」「ローマの祭り」
     トスカニーニ指揮NBC・SO(53、51、49年、R)
     トスカニーニの代表的演奏と言われるディスク。だがぼくに言わせればこれをトスカ
     ニーニの代表作というのでは、トスカニーニがかわいそう。彼の演奏が最も優れて
     いるのは、ベートーヴェン、ブラームス、ヴェルディのいずれかだと思う。ちなみにト
     スカニーニのブラームスが良いことは、自らトスカニーニ嫌いを称されていた故福永
     陽一郎先生でさえ認めておられた。このHPでは、トスカニーニのディスクは他に、
     ヴェルディ「レクイエム」を取り上げた。


73.シューベルト:交響曲第8番「未完成」、交響曲第5番
     ワルター指揮ニューヨークPO、コロンビアSO(58年、60年、SC)

     シューベルト「未完成」は名曲だが、ぼくは別にワルターがベスト・ワンだと思っている
      わけではない。柔和な未完成を聴きたい時はワルター、素朴な未完成を聴きたい時
      はベーム、深刻な未完成を聴きたい時はジュリーニ、斬新な未完成を聴きたい時に
      はアーノンクールというように、その時々の気分で聞き分けるのが良いと思う。ただ
      ぼくは、10才台の頃から聴いているワルター盤に最も愛着があり現在もワルターで聴く
      事が多いので、挙げたに過ぎない。

74.シューベルト:弦楽五重奏曲
     アルバン・ベルクSQ、シフ(vc)

75.シューベルト:ヴァイオリンとピアノのための作品集(ヴァイオリン・ソナタD574、
   ヴァイオリンのためのロンドD895、ヴァイオリン幻想曲D934)
     クレーメル(vn)アファナシエフ(p)(90年、DG)
     存在すらあまり知られていないが、ぼくの大好きなCDの一つ。シューベルトのメロディ
     の美しさを堪能できる。中でも幻想曲D934は名曲だと思う

76.シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番
     リヒテル(p)(72年、Me)

77.シューベルト:4つの即興曲、他
     ピリス(p)(96−97年、DG)
     これは素晴らしい名演だ。シューベルトの小品集からここまで深い世界を引き出し
     たピアニストはピリスが初めてではないだろうか。ここ10年くらいに録音されたピ
     アノのCDの中では、最高の1枚だと思う。

78.シューベルト:歌曲大全集
     F=ディスカウ(Br)ムーア(p) (66−69年、DG)

79.シューベルト:歌曲集「冬の旅」
     ホッター(Br)ヴェルバ(p) (61年、DG)

80.シューベルト:歌曲集
     シュワルツコップ(S)フィッシャー(p) (52年、EMI)

81.シューマン:ピアノ協奏曲
   グリーグ:ピアノ協奏曲
     ルービンシュタイン(p)ジュリーニ指揮シカゴSO
     ルービンシュタイン(p)ウォーレンスタイン指揮O (67年、61年、R)
     シューマンとグリーグの協奏曲は、メンデルスゾーンとチャイコフスキーのヴァイオリ
     ン協奏曲と同じく、カップリングされていることが多い。

82.シューマン:歌曲大全集
     F=ディスカウ(Br)、マティス(S)、ヴァラディ(S)、シュライアー(T)、他
     エッシェンバッハ(p)
     (74−81年、DG)
     シューベルトと並ぶF=ディスカウの偉業。ぼくは特に「詩人の恋」の名唱を聴いて
     いると、自身の若かった時代の思い出が色々とこみ上げてくる。

83.ショスタコーヴィチ:交響曲第13番「バビ・ヤール」
    ハイティンク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウO、リンツラー(Bs)、アムステル
    ダム・コンセルトヘボウ合唱団
    (84年、Dec)
    ショスタコーヴィチの15曲の交響曲の中の最高傑作は、この第13番ではないだろう
    か。ハイティンクの演奏は作曲された背景をあまり意識せず、曲の傑作たる由縁を
    引き出したもの。

84.ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲全集
    ボロディンSQ(78−84年、Me)
    ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲15曲は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲16曲以後
    で最高の音楽作品ではないだろうか。特に作曲者晩年の11番以降が良い。
    
85.シベリウス:交響曲全集
    ベルクルンド指揮ヘルシンキPO (82−84年、EMI)
    20世紀の最高の交響曲作曲家は、ショスタコーヴィチではなくシベリウスだったので
    はないだろうか。このディスクいわゆる本場物である。

86.シベリウス:ヴァイオリン協奏曲、2つのセレナーデ、ユーモレスク第1番
    ムター(vn)、プレヴィン指揮ドレスデン国立O (95年、DG)

87.J・シュトラウス:シュトラウス・ファミリー・コンサート
     クレメンス・クラウス指揮ウィーンPO(51−53年、Dec)


88.R・シュトラウス:歌劇「ばらの騎士」
     カラヤン指揮フィルハーモニアO、同CHO、シュワルツコップ(S)、他
     (56年、EMI)

89.ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」、同「ペトルーシュカ」
     ブーレーズ指揮クリーヴランドO、ニューヨークPO (67年、71年、CS)

90.武満徹:ノーヴェンバー・ステップス、エクリプス、ア・ストリング・アラウンド・オータム
     小沢征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラ、横山勝也(尺八)、鶴田錦史(琵琶)
     今井信子(va) (89−90年、Ph)

91.チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
     アルゲリッチ(p)、コンドラシン指揮バイエルン放送O (80年、Ph)

     知らない人のいないこのポピュラー名曲は、アルゲリッチが得意にしている。ぼく自身
     も、86年に東京文化会館で彼女がこの曲を小沢征爾と競演したのを聴いた。

92.チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
   メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
     ハイフェッツ(vn)、ライナー指揮シカゴSO、ミュンシュ指揮ボストンSO
     (59年、57年)
     いわゆるメン・チャイの代表的ディスク。ハイフェッツの絶対的名演。

93.ヴェルディ:歌劇「オテロ」
     カラヤン指揮ウィーンPO、ウィーン国立歌劇場CHO、デル・モナコ(T)、テバルディ
     (S)、他
     (61年、Dec)

94.ヴェルディ:レクイエム
     トスカニーニ指揮NBC・SO、ロバート・ショウCHO、ネッリ(T)、他
     (51年、R)

95.ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」
     イ・ムジチ合奏団、アーヨ(vn) (59年、Ph)
     モンテヴェルディのところで書いたように、ぼくにはこの曲の良さが分からない。しかし
     こんなにポピュラーな曲について全く選ばないわけにもいかない。そこで最も有名な
     売れ行きの高かった演奏を選んだ。

96.ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」
     フルトヴェングラー指揮フィルハーモニアO、コヴェント・ガーデン・ロイヤル・オペラ・
     ハウスCHO、フラグスタート(S)、他 (52年、EMI)

97.ワーグナー:楽劇「ニューベルングの指輪」四部作
     フルトヴェングラー指揮ローマSO、メードル(S)、ヴィントガッセン(T)、他
     (53年、EMI)

98.ワーグナー:舞台神聖祝祭劇「パルジファル」
     クナッパーツブッシュ指揮バイロイト祝祭O、同CHO、ロンドン(Bs)、他
     (62年、Ph)
     ワーグナーは古い録音ばかり選んだ。これらの大曲は往年の大指揮者の気宇壮大
     な演奏で聴きたい。

99.「新ウィーン学派の弦楽四重奏曲全集」
     ラサールSQ、プライス(Ms) (68−70年、DG)

100.バックハウス/カーネギー・ホール・リサイタル
     バックハウス(p) (54年、Dec)
     バックハウス全盛期のピアニズムが満喫できる貴重なディスク。

ア.この最後まで読んで頂いた読者の方に深く感謝申し上げます。

イ.読者の中には当然異論をお持ちの方もおられると思う(これは読者とぼくが別々の個性の
  持ち主である以上、当然のことだ)。しかし歴史的名盤と呼ばれるCDはほぼ全て網羅した
  上で、ぼくの独自色も出た100枚になったのではないかと思い、ぼく自身は満足している。

ウ.以上の100枚のディスクは、ぼくが98年に選出したものである。その後何枚かの注目す
   べきディスクが現れている。その筆頭はヴァント指揮ベルリン・フィルによる一連のブルッ
   クナー録音である。これらについてじっくり聴いた上で、数年に1度のペースで上記100
   枚を更新しようと考えている。
     

トップページへもどる