茶経

およそ1200年前、唐の時代。
当時のお茶の知識や情報が網羅され、しかも体系的にまとめられた『茶経(ちゃきょう)』という
世界初の茶の専門書が、唐の陸羽(りくう)という文人によって著され既に存在していました。
この書は、「茶は南方の嘉木(かぼく)なり」という書き出しで始まります。
「お茶は南方(現在で言う所の揚子江南岸辺り)に自生する良木(嘉木)である」という意味です。
茶経は上中下の3巻に分かれる全10章からなり、
第1章から順に「茶の木の性質や効用」「製茶の道具」「製茶方法」「お茶の器や道具」「茶の煮立て方」
「茶の飲み方」「茶の歴史」「茶の産地」「“陸羽式茶道”の紹介」「まとめ」となっています。
ここで紹介されているお茶は日本に伝わった頃のお茶の形で、蒸した葉を煮詰めて団子のように固めた
固形茶で、『磚茶(だんちゃ)』と呼ばれるものに近く、現在私たちが口にするお茶とは異なります。
茶経のある一節に「お茶の味は寒、お茶の性(しょう)は倹」とあります。
薬学用語にある温・涼・寒・熱の4種のうちの1つ、寒は、沈静(ちんせい)に薬効があるという意味です。
更に、お茶の性(性格)は華やかさとは対照的な味(倹)にあって、すぐに感じる強い味ではなく、
よく味わって初めて感じる事の出来る飲み物だという解釈が出来ます。
お茶本来の味わいをいい得たこの一節。
喉の渇きを癒すだけでなく、おいしく、深い魅力のある飲み物として、その本質を見事にとらえています。
わが国の今日までの茶に関する知識は、その源をたどれば直接的、間接的にこの書の恩恵を受けていると言われています。
茶経のまとめられた唐の時代と言えば、日本では奈良時代。
お茶が日本に定着し始めるのはその500年近くも後のことです。

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