蝶が舞うように見えるから・・・そう名づけられた花がある・・・。
青々とした葉を掲げ、純白の翼を天に、悠々と空を舞うファレノプシス。
そんな花に負けないほど素敵な幸せが俺のところに飛んできた・・・。
ずっと兄、光輝に片想いだった。好きなら性別は関係ない・・・そう割り切ることが出来ない恋だった。
相手は兄であり、男である彼・・・。もし俺が女だったら良かったのかもしれない。
身内に恋心を抱くことはないけれど、一つの禁忌からは逃れられたんだ・・・。
だからずっと俺は苦しんだ。その苦しみは、自分の記憶さえ封じ込めてしまった。
恋の蕾は、一生開くことはなかったはずなんだ。
だけど、彼はそんな想いを受け入れてくれた。恋としては見てくれなくても、強い想いで俺を抱きしめてくれる・・・。
そんな光輝兄がいるから、俺は羽ばたける。どこにも飛んでいくことが出来るんだ。
だから貴方にこの花束を贈ります・・・それがもらってばかりの俺の、せめてものプレゼント・・・。
『Phalaenopsis』
クリスマスも近いから、弟に何か贈ろうかと思う。今年のクリスマスは特別で、俺と弟が付き合うようになって、初めて迎えるクリスマスだ。
何か残る物もいいけれど、クリスマスらしく、食べ物関係でいこうかと思った。
だけど、最近彼はどうも花に凝っているらしく、花束を贈るのが妥当なような気がした・・・。
最初贈られた勿忘草をきっかけに、俺たちは何か気持ちのやり取りをするときには、花を贈ることが多くなってきた。
俺たちはこの器用でない口よりも、何かに気持ちを託して伝えたほうがストレートに伝わるんだ・・・。
とは言え、男に贈る花は何がいいのだろうか?贈ろうと考えてしまうと、その種の多さに悩んでしまう。彼なら何を贈っても喜びそうだけど・・・
ふと白く、蝶のような花びらが目に入った・・・。
好きになったのは、弟が先で、俺は彼の一途な想いにほだされた・・・のかもしれない。
同じ男に恋をしているけれど、弟の瞬には、不思議と背徳といった汚れはない。どうして?と思ったけれど、それはやはり『瞬』だからだ。
意識していなかっただけで、誰よりも大切な存在だったから、時間をかけても受け入れよう・・・そう思ったのかもしれない。
だから俺は彼と共に歩くことを『選んだ』んだ。
今ならそれがただの同情でないと言い切ることが出来る。俺は俺の意志でそれを決めたんだ・・・。
だけど、弟は前へ進むことを恐れている。俺を好きになってしまったことで、臆病になってしまった。
今の位置が心地いいらしく、決してその線を踏み越える覚悟は持っていない。俺が近づけば、逃げる・・・そんな男なんだ。
だから、俺が翼を与えてやりたい。自由に空を飛べるよう・・・。
それなら、この花束を置いて他にはないだろう。
清廉で、気品あふれるこの花は、彼にぴったりで・・・そして・・・このメッセージに気づいてくれれば・・・と思う。
だから君に捧げよう。このメッセージを添えて・・・。
そして、共に歩いていこう、これからも・・・。
『あなたを愛します』
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これはこちらかもリンクさせていただいている、「Himmels Zelt」の神楽刻矢さまからのクリスマスプレゼントのお返しものとして書かせていただきました。テーマはファレノプシス。クリスマスとはちょっと離れていますが・・・何となく書いてみたかったテーマです。花言葉は・・・。
クリスマスなので・・・ちょっと『恋」』愛モード入っています。
ということで、このSSを捧げさせていただきます。(このSSは神楽さまのみお持ちかえり可となっております)
では、素敵なクリスマスを送ってくださいませ!
秋山氏(2004/12/23)