Side Koki

だから何故俺がこういう本を読まなければいけないんだろうか・・・。買うのは瞬なのに、結局育てるのは俺のほうだ。

「ホトトギス・・・か」

ユリ科ホトトギス属の多年草、花びらの斑点が同じ名前の鳥に似ているからそう名づけられたという。色は地味なものから黄色まで案外多彩らしい。日本原産のせいか、鉢植えで育つといっても地植えのほうが似合うような気がする。これじゃ実家のほうがいいか・・と思いつつも、どうして彼はこの花を買ったのかと思ってみる。

一方、鳥のほうは・・・かなりの性格の持ち主ではあるが、夏を告げる鳥として古来から愛されてきたらしい。その背景を知らなくても、有名な句がある。



『鳴かぬなら・・・』



瞬はどれを選ぶのだろうと思ってみる。



彼の場合、鳴くまで待つんだろうな・・・。恐らくそういう意味合いが・・・。本当に馬鹿な子だと思う。瞬が可愛いと思うのは俺が兄であるからであって、他人から見ると違うのかもしれない。魅力的・・・であると言われることもあるので、もてないわけじゃない・・・と思う。だから・・・俺を見ないで他の人を見たっていいだろう?どうして俺なんだ・・・?なぜ、傷ついても俺を想うことが出来る?

理由は解っている。『俺だから』だ。俺が瞬を突き放せない理由と一緒だ。理屈など存在しない。存在しないからこそ、深みにはまっていく。・・・馬鹿なのは俺のほうか。多分瞬に好きな奴が出来たら、邪魔するんだろうな。どんなに俺から離れたくても・・・瞬はそんな俺の汚さなんか知らない。お前の好意を利用していると知ったら、お前を閉じ込めようと目論んでいることを知ったらどう思うだろうな?そんなの恐くて口に出せるはずがないけど・・・。

何気なくページをめくってみた。そこにはこう書かれていた。瞬がそこまで意識しているはずがないから、恐ろしい偶然である。本当に・・・いつも瞬にはしてやられる。これもまた彼の想いなのだろう・・・。俺の胸が締め付けられるのと同時に、ふっと笑みが零れ落ちる。





『永遠にあなたのもの』





さて、皆さんはそれがなんであるかご存知だろうか・・・?俺は図書館を出て、瞬に電話をかける。

『もしもし、光輝兄?どしたの?』

「今から時間取れるか?」

『帰ってからじゃダメなの?』



「いや・・・つまり・・・・・・・・・ただそれだけだ」





“I-want-to-hear-your-voice”