・・・今日は1月1日なんだよな、と一人確認する俺。気がつけば弟を抱きしめて眠ってしまっていた。確か今日は初詣に行くはず・・・いや、忘れた振りをするのはやめておこう。俺は確かにあの時意識があった。瞬が俺を起こそうとしたのを・・・・・・そうでなければ今腕の中で眠っているはずがないと、独り苦笑する。

本当にあどけない寝顔だ・・・。

こんなものを朝から見れる俺は、世界で一番幸せな男だろう・・・と、ノンケの俺が思うなんて、世も末なのかもしれない。
だけど、弟には男同士の壁すらも越えてよさそうな何かがある。
決して女っぽいわけではない。どこをどう見たって立派な男だ。だけど・・・そうだな。一人の『人間』として隣にいてほしいと思う。愛してやりたいと思う。
だから、今年は自分の気持ちに忠実でありたい。素直にならなくて愛しい腕の中の少年を傷つけるようなことはしたくない。

俺は少年の魔法を解こうと思った・・・けども・・・それよりも早く彼にかかっていた魔法が解けてしまったようだ。ゆっくりと目を覚ます。
その瞳は嬉しくても、辛くてもまっすぐと俺だけを見つめてくれていた。ずっとそうしてほしいものだ。

「光輝・・・兄・・・?」

目をきょろきょろさせ、現実を確認する。慌てて離れるかな・・・と思ったけれど、今日は自分の気持ちに素直になるようだ。大人しく俺にすりよる。だから俺はゆっくりと抱きしめる力を強くする。

「い・・・痛いって・・・」

「夢じゃないだろ?」

先制攻撃をしてやった。彼は嬉しいことがあると、すぐ夢だと思おうとする。わかってないな。夢の中の俺は、そんなに気前の良いものではない。瞬もそれをやっと認めたのか、大人しく身を預けた。



「大好き・・・」


照れくさかったのか、わずかに縮こまった。だけど・・・本当に照れくさいのは俺だろう。
その言葉が新年から聞けて嬉しいと思う。今年一年、良い一年となりそうだ・・・いや、一年にしてやろう。そんな野望を秘めていた・・・。



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今日は元旦なんだな・・・他人事のように思う俺。兄に抱きしめられながら眠ってしまった。今日は初詣に行くはずだったけど、光輝兄が面倒くさがったのか、俺を抱きしめながら眠ってしまった。そうでないと、大人しくこうして眠っているはずがない。

気品もあふれるなんて、犯罪だ。

惚れた欲目ってやつだ。眠っていても・・・ハンサムな彼には時々殺意を覚えるけれど、光輝兄の腕の中で新年を迎えるのも、悪くはない。(自主規制)なことを思ってしまうことを除けば。
俺はノンケだったはずなんだけど、気づけば兄を好きになってしまった。その気持ちは決してとどまることを知らず、自分でもどうしようもない。素直になれないから、なおさら。だけど、彼はそんな俺を受け入れてくれた。だから、今年こそはもう少し自分の気持ちに忠実でありたい。

ふと、まぶたが軽くなったような気がする。睡魔という魔法は解けてしまったようだ。まどろんでいた俺は、目を覚ますことにする。すると兄は優しげに俺を見つめていた。ずっとそんな瞳で見つめてほしいものだ。

「光輝・・・兄・・・?」

現実を確認してみた。腕を引き剥がそうかとも思ったけど、今日はお正月だから、甘えても許されるだろう。おとなしく彼に甘えることにしたけど・・・どうも都合のいい夢を・・・と思ったら、光輝兄は俺を抱きしめた。それこそ、肋骨が折れそうなほどの強さで。

「い、痛いって・・・」

「夢じゃないだろ?」

先制攻撃をされた。悔しいけれど、そして嬉しいけれど、これは現実だ。夢の中の光輝兄はこれが夢じゃないとは教えてくれない。だから俺もそれを信じ、大人しく身を預けることにする。



「大好き・・・」



彼の腕の中でしか言えない気がする。だけど、開き直れる性格でもないから、恥ずかしすぎる。
光輝兄は何も言わない。でも、ほんの少し照れてるような気がして・・・今年一年いい一年となりそうだ。光輝兄と共にまた一年歩いていきたい・・・などと、壮大な野望を抱いてしまった。



花瓶の梅が新年の薫りを放っていた・・・。




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秋山氏(2005/01/01)