たばこ




煙を肺の中に吸い込んで 僕は少し噎せる
らしくなく高い煙草を吸ったせいだと笑われた 僕は笑い返して

この煙草は君が好きだった銘柄 いつも吸ってた 君はその煙草しか吸わなかった ささやかな贅沢として

君の誕生日には花束じゃなく山ほどの煙草の箱を贈ろう 君はどう思うか知れないけど


僕は毎年この日にだけその煙草を買う


もう一度噎せて 僕はふとおかしくなった
知り合いにこの煙草が好きな奴がいたと言えば 仲間はみんな暗い顔して黙って

空気の読めないジャックが君の恋人かと茶化して聞いた 僕はそんなものだよと答えた
ギルは真面目くさった顔して 今夜は俺の奢りだと照れ臭そうな呟いた 僕は有難うと言った

僕らは毎日馬鹿やって 笑って暮らしている とても楽しいのは変わらないけど 僕の机の上の写真がいつも君だってこともそうだ

君はその煙草しか吸わなかった これを吸ったら他の煙草がまずくなったと言った
僕は大して違いを感じないけど 君はその煙草しか吸わなかった ささやかな贅沢として

僕は毎年この日にだけその煙草を買う


そして僕の肺は煙に満たされる 君に満たされる
そして僕は仕事はけた後に 君のところに行くんだ
そして君はきっと微笑んで待ってる




僕は毎年この日にだけ君の煙草を買う




今日はいつもより多く 君のためにその煙草を買う




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