あけおめ。




 からんからん……
「あああああっ! 寒い寒い寒い寒いっ!!」
「ホントにな〜。あ、リナ、雪がついてるぞ」
「へっ!? ……って、あーっ!! ファーのトコにっ!!」
「…………って、入ってきていきなりそれですかぁ?」
「何よゼロス。文句ある?」
「文句っていうか…………まぁ、いいんですけどね。
 ともあれ、あけましておめでとうございます。リナさん、ガウリイさん」
「おお、おめでとーな」
「おめでと。
 あ、あたしココアね」
「新年第一号のお客様がリナさんとは……ガウリイさんはどうします? 今ならお正月限定の甘酒なんかもありますよ」
「あ、じゃあソレ」

  こぽこぽこぽこぽ……

  コトンっ

「はい、どうぞ」
「ありがとー」
「サンキュ」

  ずずずずずーっ

「――――っはぁ。暖まるわねぇ……」
「だな〜。
 しっかし、今日は人が多いなぁ…………みんなどうしたんだ?」

  ごいんっ!!

「ア・ホ・かっ!! お正月なんだから初詣にきまってるでしょっ!!」
「…………そうなのか?」
「当たり前っ!! だいたい、あたし達だって初詣してきて、今はその帰りでしょうがっ!!」
「…………おおっ! 覚えてる覚えてる」
「「大嘘つき」」

  からんからんっ♪

「あっけましておめでとうございまーすっ♪」
「おいアメリアっ!! せめて雪を払ってから入れっ!!
 ……って、早いな。もう来てたのか」
「ん。あけおめ」
「おう。今年もせいぜいよろしくな」
「…………ところで、なんだかいいにおいがします…………ガウリイさん、何飲んでるんですか?」
「ん? 甘酒だよ」
「アメリアさんもお飲みになりますか? 三が日だけの期間限定商品です」
「限定……っ! いただきますっ!!
 あ、ゼロスさんもおめでとうございます。今年もバイトさせてくださいね♪」
「はっはっは。出来ればお正月にもシフト入って欲しかったんですけどねぇ……」
「この期間、混むだろうなぁ」
「よね。ここの喫茶店、神社が目の前な上にオシャレだし、何より、今年は雪降ったしね〜」
「寒さに負けて帰りに、か。
 となると、混むのはこれからの時間帯だな」
「そうなんですよ〜っ!
 皆さん、僕を助けると思って、これからの時間バイトしませんか? バイト代、はずみますけど」
「「「「イヤだ」」」」
「あうううううううぅぅぅぅぅぅぅぅ…………」
「なんであたしが接客なんてしなきゃいけないわけ?」
「リナにそんなことさせてみろ。二度と客がはいらなくなるぞ〜」
「ど・う・い・う・意・味・か・し・ら・ガ・ウ・リ・イっ!!!?」
「…………それは、ちょっと…………」
「あんたも普通に返すんじゃないわよゼロスっ!!」
「あはは。でも、確かに新年早々忙しいのは、ちょっと……」
「やりたいと云っても許さんぞ。
 だいたい、お前は隙が多すぎるんだ。浮かれた参拝客の相手なんぞさせられるか」
「…………うわ」
「過保護だなぁゼルは」
「お前さんにだけは云われたくない。
 ああゼロス。俺はカフェオレな」
「……話、そらしたわね」

  からんからんっ

「あ、いらっしゃいませー!」
「……増えてきたわね。お客さん」
「一息入れるにはいい時間だもんなぁ」
「だな……って、そういえばヴァルとフィリアはどうしたんだ?」
「フィリアさんはご実家のお手伝いで、ヴァルさんはそのフィリアさんにつきあってバイトです」
「実家?」
「神社」
「ああ、巫女さんのバイトか」

  コトン。

  ……かちゃかちゃ

「はい。甘酒とカフェオレです。お砂糖はご自分でお好きなようにどうぞ」
「ああ」
「人増えてるわよー。頑張れゼロス」
「ううううううううううううううううううううううっ!! 薄情者ーっ!!!」
「「「「なんとでも」」」」





+Fin+