61・ザガン
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Zagan
グリフォンの羽を持った牡牛の姿で現れる悪魔。
ヴァプラと同様の発想で考え出された悪魔であるようで、こちらはケル
ビムを構成する要素の中から、四福音書の書記者の一人聖ルカを象徴
する牡牛の姿が取り出されたものなのだろう(ちなみに、ワシは聖ヨハネ
を象徴している。ただし、蛇は聖なる動物ではないために、聖ヨハイは
「人間」が象徴となる)。
こちらはその出自通りというか、ワインを血に変えたり、それを水に変
えたり・・・といったことを自在に行える、という聖書のパロディ的な存在ら
しい能力を兼ね備えている。もっとも、そんな能力がなんの役に立つの
かはわからないのだが。
また、その他の能力として、人を賢明にし、逆にしたり(笑)。金属を硬
貨にしたり、知識を与えたりしてくれるそうである。
「地獄の辞典」では紹介こそされたものの、ヴァプラ・ザガン共に挿絵
は描かず、それ故にマイナーな悪魔となっている。
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62・ヴァラック
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Valac
天使の姿を持つ悪魔の一つ。人の前では、双頭の竜にまたがった翼
のある少年の姿で現れるという。
双頭の竜が象徴するように、爬虫類を支配する悪魔され、隠れ家で引
きこもってる蛇を見つけたりしてくれるというが、それがなんかの役に立
つのかというとちょいと疑問である。また、隠された財宝の在り処を教え
る、といういつもの能力も完備しているので、蛇好きかつ宝探しが趣味
の人にお勧めである。
おなじみ『地獄の辞典』では天空の惑星の所在を知っている、との記述
も。なお、同書の中ではヴァラックはデフォルメされまくったやんちゃっぽ
い少年の姿で描かれており、なんとも奇妙。ルシファーさんもそうだけ
ど、もうちょっと悪魔っぽくならんかったもんだろうか。
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63・アンドラス
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Andras
鳥の頭を持った地獄の侯爵。体は天使であるが、剣を持ち、狼にまた
がって現れるという攻撃的、破壊的な性質を持った悪魔。不和を撒き散
らし、人を殺す、はた迷惑なお方である。
頭部は通常はカラスだといわれていたらしいが、『地獄の辞典』におい
て、地獄の30の軍団を率いるフクロウの頭をした悪魔、とお馴染みの
挿絵付で紹介されてしまったことから、フクロウ頭の方が定着してしまう
ことに。まあ、そのおかげでそこそこ有名な悪魔になれたんだから、人
生チャンポンであろう。うむ。
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64・フラウロス
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Flauros Haures
豹の姿を持って現れる悪魔。魔術師が他の悪魔に対抗するために召
喚するとされ、召喚のために用いられる三角形の外に居るときは嘘しか
言わないという。子供かお前は。
しかし、呼び出した者には過去・現在・未来を語り、問いに答え、その
人物が敵対するものを焼き殺してくれるという。
『地獄の辞典』では、敵対する魔術師に対してはあらゆる悪魔をけし
かけて襲い掛かる、という攻撃力のパワーアップがなされており、直立
した豹の挿絵とともになかなか印象深い悪魔の一体となっている。
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65・アンドロアルフス
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Andrealphus
鳥と関連付けられる悪魔・・・もこれで最後である。バンジャーイ。人の前
に現れるときはクジャクの姿を持って現れ、人を鳥の姿に変えたりしてく
れるというが、こいつらを考えた人ってそんなに鳥が好きだったのか?
その他の能力として、呼び出した者に幾何学や代数、測量など数学
に関する知識や天文学などを教えてくれる、というものがある。『地獄の
辞典』によれば、これらの知識を教えてもらうときは、アンドロアルフス
が鳥ではなく人間の姿をとっている時に聞くべきである、という。同書の
中ではアンドロアルフスは数学ばかりではなく、屁理屈も教えてくれる
という。一休さんか、おまえは。
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66・キメリウス
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Cimeies
異形の姿をとらず、馬に乗った兵士の姿で現れる悪魔。
文法・論理や弁論を教え、なくしたものや隠された宝を見つけてくれる
他、その姿が象徴するように人に勇猛な心を与える、戦闘的な性質も
持っている。また、アフリカについて深い知識を持っているとも(何故アフ
リカ)。
しかし、このように大した特徴を持っていない人は当然のように印象に
残りにくく、『地獄の辞典』では見事に無視されている。残念無念。
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67・アムドゥキアス
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Amdusias
音楽家的な性質を持った地獄の侯爵。オーケストラ抜きで美しい音楽
を奏でるというが、実は見えない楽隊を率いているのだ、という話もあ
る。
一角獣の姿で現れ、召喚者に使い魔を与えてくれるのだそうである。
また、木を撓ませたり、切り倒したりという何の関係があるのかも何の
意味があるのかもわからない能力も。
『地獄の辞典』では出世したのか大公爵とされ、そんなお偉い立場で
ありながらも召喚した者が頼めば音楽会を開いてくれるというのだから
気さくなものである。
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68・ベリアル
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Belial
本コーナー最後の大物悪魔。
旧約聖書や死海文書などからその姿を現し、現在の天使や悪魔の概
念が出来上がる前から神と敵対する者として頑張り続けていた苦労
人。その名は「無価値」「邪悪」「無益」などを意味する。
元々、「無価値」「邪悪」などの悪を指し示す言葉が、悪魔そのものと
して扱われるようになったことから発生した悪魔といわれる。旧約聖書
『士師記』や『サムエル記上』では人間を形容する言葉として用いられ
ていることからもそれがわかるだろう。
悪魔の一人として自立した後も、古代から中世にかけてもっとも活躍
した悪魔の一つとなったために、キリスト教的にはサタンやアンチキリス
トなどと同一の存在として扱われるようになる。絶え間ない努力はきち
んと実るものなのである。
サタンとの同一視によっては、イブを誘惑した蛇もこのベリアルである
ということにされており、美しい姿や声を持ちながらも女性をたぶらかす
性質を持っているとされるのはこの辺りに源泉があるのではないだろう
か。
旧約聖書偽典『ベニヤミンの遺訓』ではユダ王国15代国王マナセ王に
取り付き、ユダヤ教への改革を否定し、偶像崇拝を起こし、信徒に対し
ては暴虐の限りを尽くしたという。その結果国は荒廃し、高名な預言者
であるイザヤもマナセ王に殺害されてしまった。しかし、この神への叛
逆行為もいつまでも続くわけではなく、マナセ王はアッシリア軍に捕ら
えられ、バビロニアへと連行されてしまうことでこの乱痴気騒ぎも終わり
となったのであった。その後、帰国できたマナセ王は敬虔な信徒になっ
て悔い改めたというが、そんだけで今までの悪行が許してもらえる辺り
信仰って不思議なもんですね。
また、別の伝承ではベリアルはソロモン王によってその手下たちとと
もに瓶詰めにされてバビロン郊外の井戸に投げ込まれてしまったともい
う。そのまませんせいさんの所に辿り着ければまたーりとした四季それ
ぞれをテーマにしたほのぼのアニメになれたかもしれないが、あいにく
その瓶は井戸を宝の隠し場所と勘違いした盗人によって拾われ、再び
世に放たれることとなった。その後、偶像崇拝の洞窟に逃げ込み、そこ
で隠遁とした生活を送り始めるかと思いきや、気まぐれか何かではじめ
たご神託ごっこがバビロンっ子の間で評判となり、勘違いした彼らによ
って神として崇められるようになったとも。まったく、人生山あり谷ありで
ある。
15世紀の怪著『ベリアルの書』では主人公として登場し、かのイエス
たんを告訴することになる。ベリアルは、「イエスと呼ばれる人物が不法
にも地獄の権利に干渉し、彼のものではない事柄、すなわち地獄、海、
大地、大地に住むすべてのものの支配権を強奪した」というわかるよう
なわからんような訴えを起こし、ソロモン王を裁判官、モーゼをイエスの
弁護人として呼び、裁判を開いた。
その後の控訴審で召集されたヨセフ、エレミヤ、イザヤなどのメンバー
を見ても、なんだか出来レースのにおいがプンプンするのだが、しかし、
こんな面子を呼び寄せたのはベリアル自身なわけで、明らかに自らを不
利な立場においた意味があるのかと思えば、ベリアルはソロモンのご
機嫌を一生懸命うかがうばかり。なんともほのぼのとした光景である。
こうなると、「異議あり!」も「待った!!」も響かない楽勝ムードが漂
っており、実際イエスたんに無罪の判決が下されることになったのだ
が、ベリアル達地獄の住人にも最後の審判以後、地獄に落ちてきた罪
人達の権利に自由に干渉してもいい、ということが確認され、めでたく
和解が成立(?)したのであった。このエピソードが示すように、ベリアル
は地獄を代表する能弁の才や法律知識を持っているのである。ある。な
んだか、みんなまぬけなだけのような気もするけれど。
他にも、有名なソドムの町の堕落などを引き起こすことで、地道に名を
上げた彼は、『コリント信徒への手紙二』の中でキリストの対極に存在
する悪魔にまで出世することになり、近年庵野さんのせいで変に有名に
なった『死海文書』の中では、神が作り出した根源的な光と闇の内の闇
こそベリアルであるとされ、彼は闇の軍団を率いて、世界の終わりまで
光の子の軍団と戦い続ける・・・という超大物として描かれている。これ
は、一神教が普及していく中で、どうしても一般的にわかりやすい善悪
二原論の影響を受けずにはいられなかった、という痕跡であろう。元々
悪という概念を擬人化したような存在であるベリアルには、ある意味うっ
てつけの役ではあるが。
レメゲトンにおける悪魔の一つとしての彼は、贈り物や肩書きを分配
する。友と敵を和解させる。名誉を与える、などのなんとも穏やかな能
力をお持ちになっており、ここでは炎の戦車に引かれた美しい天使の姿
をしているとされている。また、『地獄の辞典』では古代フェニキア、シド
ンにて崇拝された邪神と紹介されている。
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69・デカラビア
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Decarabia
五芒星そのもの、星の形、という無機的な姿で現れる悪魔。
無機的な姿を持った悪魔、というのはレメゲには他におらず、悪魔全
体としてもほとんど見当たらない、非常に個性的な姿である。彼は、こ
の一発ネタだけで個性的かつ印象的な悪魔となっており、『地獄の辞
典』に取り上げられていないにもかかわらずメジャーな悪魔の一つとな
っている。世渡り上手な奴である。
なお、能力は、ハーブや宝石の効用を教える。ありふれたなじみの鳥
を与える。といったつまらないにもほどがあるもので、これではまるで近
所の暇な年寄りである。ハーブや宝石の効用は霊的なものが多分に含
まれたものであり、鳥は使い魔である、ともされるが、それでも地味なも
のは地味である。
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70・セーレ
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Seere
長い髪の男性の姿で、翼のある馬に乗って現れる悪魔。ということ以外
はほとんど記述されておらず、能力も瞬きをするだけでものを運んだり、
伝言を伝えたり返信したりする。盗みを見つけたりかくしたもの、隠され
た宝を見つける、など抽象的だったり地味だったりで救いようが無い。
当然のように『地獄の辞典』にも取り上げられていない。可哀想な奴
である。
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71・ダンタリオン
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Dantalion
無数の男女の顔を持った姿で現れるという悪魔。無数の顔はこの悪魔
が博識であるということを示し、手に持った書物もその特性を象徴してい
るものなのであろう。
その能力もすべての芸術、知識を教える、といったその博識に関する
ものをはじめとし、秘密を知らせる。人々の思考を変える。男と女に愛を
与える。他人によそおう形を見せる、などといった他者の感性に関する
ものなどをもっている。
『地獄の辞典』に取り上げられていない悪魔はどれもマイナーになり
がちであるが、こいつはその姿の特異さから印象に残る悪魔となってい
る。
ところで、「団体で現れるからダンタリオン」ていうのはやっぱり偶然な
んだろうかね?
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72・アンドロマリウス
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Andoromalius
長かったゲーティアの72悪魔紹介もこいつで終わりである。
が、こいつ自体は蛇を手に持った人間の姿で現れ、盗まれたものを取
り戻したり、盗人を捕らえ。不正や内密の取引を白日にさらしたり、盗人
を罰したり、隠された宝を見つけたりする。という、特徴も無ければ能力
が面白いわけでもなんでもない地味な悪魔の王道を行くような奴であ
る。このコーナーでは長らくお世話になった『地獄の辞典』でも、こいつ
は紹介されておらず、これ以上語ることは特に無かったりする。
それではまたいつか。
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