・上級六大悪魔・
 「地獄の辞典」における「契約」の項等でおなじみの上級精霊だとか、魔神だとか呼ばれている6体の悪魔。
 この階級は契約の際に重要とされる順序とされからなのか、同書の「地獄の宮廷」や「地獄の騎士」の項とまったく
噛み合ってないが、細かいことを気にしていると大人にはなれない。解釈色々十人十色である。
 元は、ソロモン王の著作とされる魔術書の一つ「グラン・グリモア」または「大魔法書」と呼ばれる書物。この本の中
でルシファーやベルベブブ、アスタロトとともにこれらの悪魔は紹介されている。ここでは関係ないけど、これは現在の
ルシ、蝿、アスタを魔界3大巨頭とする解釈の原点の一つと言えるかもしれない。
 とっても困ったことに、どいつもこいつも決まった容姿、特徴的な能力が無い。どうしてくれようか。
 そのせいか、通常悪魔よりも偉いはずなのに、一般的な知名度はほぼ皆無な微妙な人達である。
ルキフグス





 Lucifuge Rofocale
 ルキフゲ。ルキファージュ・ロフォカレルとも。その名は「光を避ける者」を意味する。
 地獄の宰相。皇帝ルシファー、君主ベルゼブブ、大公爵アスタロトの3最高権力者に仕える6体の上級悪魔の最上位にあたる存在。地獄の総理大臣という重要な地位を任されているだけあって、世界のあらゆる財宝と富に関する知識と力をルシファーから授けられているのだという。
 その能力ゆえ、悪魔召喚者たちからはもっとも呼び出したい悪魔のひとつとされていたという、が、彼を呼び出す事は非常に難しいのだとも言われている。
 なお、名前こそそっくりなものの、ルシファーと関連して語られたのは「グラン・グリモア」が最初で、「グラン・グリモア」ではルシファーから派生した悪魔のようにされているらしいが、実際にはそれまで両者が同一の存在であるなどと考えられた事は無かったようである。


 財産、富にまつわる大物悪魔としては、マンモンという有名どころもいるが、この人も名前がルシファーっぽいからか、漫画やゲームなどでもよくその姿を見かける人気者。
 バエル、アガレス、マルバスをその部下としている。

サタナキア





 Satanachia
 サバトの山羊にして地獄の大将。
 女性を服従させる支配力を持ち、彼を召喚した者はその力によってあらゆる女性を屈服さ
せることが出来るのだと言う。考えた人がどういうことを考えていたのかが手に取るようにわ
かりますね。もっとも、召喚者には反抗的な態度をとるそうですが。
 そのほかの能力としては、母親に強い影響力を持ち(内弁慶か?)、全ての惑星に関して
深い造詣を備えているという。サバトの主催者としては魔女たちに使い魔を与えたりも。
 部下としてアモン、プロケル、バルバドスの名前が挙がっている。

 さて、この名前での知名度こそ高くは無いものの、この悪魔こそ現在の私たちにも「悪魔
の絵」として良く知られているサバトの主催者である山羊の頭の悪魔・バフォメットなのであ
る(もう一つ、同一視される悪魔の名前にレオナールというものもある)。ちなみに、現在も知
られているあの有名な絵を描いたのが、(この分野では)有名なエリファス・レヴィ。
 
 14世紀初頭、フランスの国王フィリップ4世は十字軍運動から派生した秘密結社・テンプ
ル騎士団を異端的な結社に指定し、徹底的な弾圧を行った。十字軍運動が生み出した多く
の宗教的結社の中でも、テンプル騎士団は協会と融和した活動をおこうなうわけでもなく、
儀礼や儀式などを隠匿していたために秘密結社的な要素を強く持っており、弾圧へとつな
がっていったのであった。
 執拗な異端尋問の結果、暴かれたテンプル騎士団の実態は、まさに悪魔的教団としか
言いようの無いものであった。彼らは、入団の際にはキリストを否定し、十字架に唾を吐き
かけ、踏みつけることを強要させられる。さらには入団者には男色を受け入れることまで誓
約させられるのだという。そのなかでも最も象徴的だったのが彼らの偶像崇拝にまつわる
尋問であった。
 彼らはバフォメットという独自の神を信仰していたとされ、その神の悪魔的な要素はまさに
彼らが反キリスト教組織であったということを人々の知らしめるには充分すぎるものであっ
た。
 しかし、である。
 このバフォメット、現在ではもっとも有名な姿をした悪魔の一つとして知られているが、テン
プル騎士団の信徒たちが信仰していたバフォメットがどのような姿をしていたのかは定かで
ないのである。長い髭を生やし、光り輝く目を持った醜怪な男の姿、というのが最も一般的
であるが、この他にも女の顔であった、猫の顔だった、両性具有の像であった、首が3本あ
った、脚が4本だった、などなど、様々な説が存在している。また、その偶像にしても木製で
あったとか、金箔が貼られていたとか、像ではなく絵であった、など、尋問の結果の告白は
明らかに統一性に欠いたものであった。そもそも、尋問を受けた231名の団員のうち、バフォ
メットという名前を「知っている」と告白したものがわずか12名であったと言う時点で、この
「尋問」がいかなるものであったかは容易に想像できるだろう。
 結局の所こういった証言の多くは、ヒステリックな妄執に取り付かれた尋問官たちによっ
て、身体に楔を打ち込む、といった壮絶な拷問の果てに得られたものであり、テンプル騎士
団の真の実態については、その真偽を確かめることなど出来ないのだ。
 この弾圧は言うまでも無くやり過ぎで、アンフェアなものであったが、強い軍人的な資質を
持った組織であり、十字軍として遠征に出ていたテンプル騎士団の構成員たちが長い間異
教徒と接して生活していたことも事実であり、彼らがイスラムやグノーシス主義の教義・慣
習の中からその神秘的要素を取り出して自分たちの組織に取り入れていた可能性は否定
しきれないだろう(それが悪魔的な要素を持ったものであったのかどうかは当然別である
が)。
 バフォメットという神の名前はイスラム教の創始者マホメットから採られているが、これは
つまり、当時の熱心なキリスト教徒たちは、イスラム教という存在自体を悪魔そのものとし
て捉えていたということであり、如何にキリスト教結社として活動していたとしても、そこにイ
スラム教的な要素が含まれているのだとしたら、彼らはそれを寛容に認めたりはしなかった
であろう。バフォメットという名前を考えたのがテンプル騎士団ではなかったとは言い切れな
いが、これはやはり、テンプル騎士団をイスラム教的性質を持った異端結社として知らしめ
るために、尋問官たちが使用したものなのではないだろうか。
 1307年にこういった弾圧を受けたその後、1312年には教皇クレメンス5世が騎士団を廃絶
させ、1314年に総長ジャック・ド・モレイが火あぶりの憂き目にあい、テンプル騎士団は事
実上消滅したのであった。
 
 さて、テンプル騎士団は無くなったが、人々の心には彼らの信仰していた邪神の名前が
消えることなく強く残っていた。これはフィリップ4世の考案した弾圧がどれだけ人々にとって
強い印象をもたらしたか、という「成功」の証拠でもあろう。なんのバックボーンも無く、その
名もまだ知られたばかりであったが、この悪魔はすぐに人々の考える「悪魔」の代表者の一
つとなっていった。当然のように悪魔学者や魔術師を自認する人々は、この悪魔の存在を
無視するわけにはいかなかった。彼らとて人間である、多くの人々のニーズに応えるに越し
たことは無いのだ。バフォメットは同じく人々に知られていた「悪魔」の一般的な姿の一つで
あった、山羊の頭を持った悪魔と同一視され(これには当然、テンプル騎士団と言う秘密結
社とサバトのイメージの同一性も関係しているのだろう)、先述のエリファス・レヴィの「メンデ
スのバフォメット画」が人々に知れ渡るにいたって、とうとう大物悪魔の一人としてその存在
を確固たるものにしたのであった。

 地獄の大将であるサタナキアという悪魔がバフォメットと同一視されるということは、つま
り、このなんのバックボーンも持っていなかった悪魔に、後付でも良いから強力な設定を加
えて、あたかも元から存在していた強大な力を持った悪魔のように振舞わせたかった、とい
うことなのではないだろうか。「ファウスト」以前はその名が知られていなかったメフィストフェ
レスが、いつの間にか地獄の7大王子なるものの一人である、などとされていたりするのを
見てもわかるように、こういった例は決して少なくないのである。

 そういえば20世紀最大の魔術師などと呼ばれるアレイスター・クロウリーも魔術結社東方
テンプル騎士団に入団する際にバフォメットを名乗っていたけれど、「666の獣マスターテリ
オン」といい、この人、本当にメジャーどころが好きだねえ。


 この項だと、こいつだけ語ることが多いなあ。とりあいず、これでもうバフォメットを別に書く
必要はなくなったな、うむ。

フルーレティ




 Fleuretty
 ベルゼブブの部下とされている地獄の副将。
 夜の間に全ての仕事を済ませてしまう能力を持ち、凍結の悪魔としては雹を自在に降らせることが出来るという。さらに、有毒植物や幻覚を起こす薬草の専門的な知識を持ち、その能力によって人間の性欲をかきたて、戦争を起こす。また、アフリカを支配しているともされている。

 なお、その部下はバシン、プルソン、エリゴールだという。


ネビロス





 Nebiros
 アスタロトの陸軍元帥を務める、地獄の検察官。
 メソポタミアの木星の神であるネビルがその名前の由来だとされている。ちなみに、ネビルというと、もう皆様忘れたかもしれませんが、あの白装束集団さんが「地球に接近するぞ!」とか声高に叫んでいたニビル星の名前の由来でもあります。ネビルはその別名をマルドゥクといい、シュメール・バビロニア神話の主神(木星の神、というものは主神格となるのはギリシャ神話と同じ)であるのだが、マルドゥクの持っていた軍神的性質はまったく受け継がれておらず、名前を流用しただけのようである。同じようにシュメール・バビロニアの神話から悪魔学に持ち込まれた神に地獄の支配者であるネルガルが存在するが、こちらは地獄の秘密警察の長官という役職に就いているが、元が冥王にして厄災の神だけにそんなに違和感は無い。
 
 で、気を取り直してネビロスであるが、飛行能力を持ち、空から魔神たちの様子を観察することで検察官としての役割に精を出しているのだという。未来予知の力を持ち、金属、鉱物、植物、動物を自在に見抜き、金の在り処がわかる魔法の手を見つけることが出来るという(遠回りな能力だなあ)。また、動物を操り、望む相手に苦痛や傷を与える
 有名な性質として、魔神達の中でも有数の降霊術があり、現在ではネクロマンサーの悪魔の代表例とされることも。その力を使ってのものか、北米を支配下においていると言う(凄いな)。その部下にはイポス、グラシャボラス、ナベリウスが就いている。


アガリアレプト





 Agaliarept
 地獄の第2軍団の指揮官を務めるとされている、家老。
 ヨーロッパや小アジアを支配下とし、世界のあらゆる宮廷や会議室における謎、極秘情報を暴いてしまう、というなんだか良くわからない人。どんな謎でも解いてみせる、という辺りスパイか探偵のようだが、将軍も兼任しているのだからなかなかに多忙な生活を送っていそうである。その他にも、人間の間に憎しみや不信感を引き起こすことや過去と未来をコントロールすることも得意としているというのだから、とんでもない便利屋である。
 しかし、悪魔の能力に「過去と未来を自由に操れる」つーのをほいっと置くのは、多分あんまり考えないでやってるんだろうけど、凄すぎると思うのだが。
 グシオン、ブエル、ボッティスがその部下とされている。
サルガタナス






 Sargatanas
 アスタロト直属の部下とされる、地獄の旅団長。
 人を透明にする術や移動にまつわる能力、人の心、記憶を操るなどといった能力を持つ。
 ヴァレフォル、フォラス、レライエがその部下とされている。

 そういえば、懐かしの「ゴッドサイダー」ではアスタロトの直属の部下、という設定からの発
想か、アスタロトの弟として登場していた。上位に当たるルキフグスの後の登場ながら、さ
らに強い敵キャラとして描かれていたが、その理由が意外とキッチリまとまっていた上に、ラ
ストにつながっていた(伏線、と言うようなものじゃないだろう。作者、展開を考えて描いてる
とは思えないから(笑)のはちょっと関心。ゴッドサイダーははっきり言ってアホ漫画*だが、
壮大系神話漫画のラスボスとして神や悪魔ではない存在を持ってくるのは結構好きな考え
方である。
 
 *首すっ飛ばされて死んだはずのメインキャラが平気で再登場する展開や「ジーザスグレイテストフラッシ
ュ」などの素晴らしすぎるネーミング、おっさん顔の赤ん坊などの壮絶なビジュアルなどは当然ながら、白
眉はなんといっても「やった!とうとう2巻の発売だ!!これでハリウッドに乗り込んで、念願の映画が撮れ
る・・・ウウ(うれし泣きの声)。スピルバーグに頼もうか、いやいや、コッポラに、なて、スコセッシ、でもデ・パル
マに・・・。よし!制作費はドンと百億円!これでアカデミー賞は決定だ!!もちろんタイトルは『ゴッドサイダ
ー』だ!!監督は、アカデミー賞、十連覇の巻来功士様だ〜〜〜!!ドハハハ!!」などの巻来先生ご本
人のコメントであろう。暴走しすぎである。しかし、なんだこれは。ここはゴッドサイダー解説コーナーか。

                モドル