周囲の人たちに必要なもの



周囲の人たちに必要なもの。
それは、1にも2にも、患者さん自身に対する愛情です。
うつ病さんは具合が悪くなければ普通の人と全く変わりませんが、具合が悪い時、感情的になる時、自分でも思っていないような酷い言葉を口にしてしまったりするでしょう。
身も心も疲れ果てている時だから、貴方に気を使う余裕もない時もあるでしょう。自分の苦しみにしか目を向けられない時もあります。
そんな時に、周囲で支えてくれている人たちに必要なものが、愛情だと私は思います。

時々、愛情を少し勘違いしている人がいます。
その人にとってはそれが正しいと思っている愛情なのだろうと思うし、色々な考え方があると思いますので否定をする気はありません。
しかし、うつ病さんにとって何より一番必要なのは自分の醜い部分、自分の欠点さえ全て認めて、受け入れてくれる愛情です。
人間は誰しも欠点があります。醜い部分も誰でも持っていると思います。
特に自分の醜さに関しては、自分のことなのでよくわかってしまう。うつ病さんはそんな自分に酷く自己嫌悪をして、自分をいじめる考え方をしてしまいます。
そこで、周囲の人たちができること。
うつ病さんを支えている貴方だからこそ、できること。
病院にもお医者さんにも薬にもできないこと。
それが、うつ病と戦っている患者さんに、安心感を与えることなんだと思います。

人は褒められて成長するものだと私は思います。
そして、「自分は認められている」という安心感の中から、素晴らしい仕事や芸術、音楽が生まれるものなのだと私は思っています。
うつ病さんにとっては、まず生きていること、一分一秒息をしていることが苦痛です。
長期間にわたり脳内の化学物質バランスが狂っているために、どこが痛いわけでもないけれど辛い、何があるわけでもないのに落ち込む。そんな時間をずっと過ごしています。
自分は生きている意味があるのだろうか。常に考えています。
自傷をしてしまう自分。死を考えてしまう自分。それは全てうつ病がそうさせているに過ぎない、症状でしかないですが、うつ病さんは自分を責め続けています。
そこで、貴方が「そんなことない。自分を責めることないんだよ」って言葉を口にしてくれるだけで、患者さんにどれだけ安心感を与えることでしょう
愛情に飢え続けていたからこそ、体や脳のバランスを崩してしまうほど頑張り続けてきたうつ病さんへ、そして自分を好きになれないうつ病さんへ「私にとって貴方が必要。貴方を愛している。大好き。」そんな暖かい言葉をプレゼントして下さい。
それは、うつ病に対して、薬よりもお医者さんのカウンセリングよりも効きます。

うつ病さんは心が細やかな状態にあるため、口だけでそういう愛を伝えても、見抜きます。
愛していないのに愛していると言っても、バレます。
そして何よりうつ病さんは人間不信になっている人がほとんどです。
本当にうつ病さんが必要、大事って思えないのなら、中途半端な干渉は逆にうつ病さんを傷つけるでしょう。
しかし、本当に好きなら、それは愛に飢えたうつ病さんにとって最大のお薬になります。
外国人さんを越えるほどの、熱い愛情表現をしてあげてください。うつ病が邪魔をして、貴方の大事な人に愛が伝わらないことがあるから。
少しでも緊張した気持ちを和らげるために、手を繋いだり、背中を撫ぜたり、頭を撫でたり、ぎゅーって抱き締めてあげたり、そんなスキンシップを心がけて下さい。
口で伝わらないのなら、スキンシップで伝える!
そんな意気込みで。

私は、うつ病時代に支えてくれた家族・友達・彼氏のお陰で今こうして生きています。
治ったからこそ思うことのひとつに、お医者さんよりも薬よりも、そういう暖かい愛が私のうつ病を癒してくれたなと思っています。
貴方にしかできないこと。貴方だから、できること。
貴方の愛が、今うつで苦しんでいる大事な人を癒してくれることでしょう。

頑張ることも、前を向くことも、治ってからすればいいんです。
お仕事することも、学校行くことも、治ってからやればいいんです。
「病気だから、できなくてもしょうがないんだよ」
うつ病が邪魔をして、悪い方悪い方へ考えてしまう、貴方の大事な人へ
耳にタコができるほと、言ってあげて下さい。
それがいつしか、うつ病がさせてしまう悪い考え方をとっぱらうための、確かな支えとなります

貴方にしかできないこと。貴方だから、できること。



大学を卒業し、違う道を歩み始めた友達。
縁が遠くなってしまった人たち。
彼氏も、私とは別の道を歩み始め、もう関東にはいないでしょう。
今そばにいない、私の命を助けてくれた人たちへ
私は一生、感謝の気持ちを捧げ続けるでしょう。
言葉に言い表し尽くせないほどの、"ありがとう"と
いつでも、貴方が幸せであることを祈って



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