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 不思議なことに日吉を追い詰めているはずなのに焦りはなかった。その気楽さが歩調にもばっちりと表れている。
 さてだいぶ奥へと入って来たがそろそろ日吉もこの辺に隠れているはずと、歩みの速度を徐々に緩めていきつつ周辺からの気配を探ろうと、耳をそばだてて付近を探り、周囲に間断なく目を配った。
 息を詰め緊張しているだろう日吉は一体ドコに隠れているのか。
 躯を完全に隠せる太い幹は見当たらない。隠れていれば肩か腕か、どこかしらが見え隠れするはずである。さあ、どこだ。
 「日吉」
 まさか呼んで応えるはずもなく。だけど気配が動くかもしれないと思ったのだ。
 「ひーよし」
 身じろぐ気配すらもしてはこない。さて、ここではないのか。
 「日吉ぃ、ここまで避けられるといくら俺でも傷つくよ? ねえ、本当は俺のことそんなに好きじゃないの? 俺がうるさいから仕方なく付き合ってくれたとか?」
 情に訴えれば黙っていられなくなるだろうと踏んだのだがさすがにそれはちょっと甘かったか。
 「あ。もしかして日吉俺に隠れてこっそり自分で処理してたとか。だから平気だったんだろ。寂しいことすんなよ日吉。せっかく近くに俺が居るのにさ。あ、ねえ、する時ってやっぱ俺のこと考えてし」
 「黙りやがれ変態!」
 「なーんだそこか」
 しまったと言う顔を今さらして見せてももう遅い。瞬発力は日吉よりも鳳の方がわずかにだが優れているのだ。小さな差は、記録を賭けた時はどうということはないが、いざ勝負という時には運命をわける大切な鍵になるものだ。まさかそんなに大差ない差が致命的になるとは、迂闊にも姿を見せてしまった日吉は思いもしなかったことだろう。
 「鳳っ!」
 「残念でした。俺の勝ちだね。と言うことで……」
 もがく躯をしっかりと腕の中に抱き込むとすかさず宣言通りに地面に押し倒してやった。じたばたと、組み敷かれてもなお諦めがつかないらしい。らしいと言えばそれまで。往生際が悪いなぁと零せば『お前の方こそしつこいぞ』と怒声が響く始末。
 「しつこいのはこういうことだけじゃないよ。それを今から実践するから覚悟してね」
 「鳳! やめろって!」
 まずは最初に頂く箇所は首筋。それも喉仏があるところから下がってすぐのとこで筋が浮き上がっていたが、その筋のちょうど真上だ。浮き上がったラインをなぞって舌を動かすと、うわあっと、身を縮めながらの声が上がって縋るようにして掴んできた手にウェアの裾を引っ張られる。
 日吉のこういう仕種が可愛いんだよなぁと、舐めながら浮かれる鳳は、取り敢えず固まっているのをチャンスとばかりに考えてすかさず押し上げるようにしてウェアを胸まで捲り上げた。
 「お、とりっ、……」
 摘み上げた乳首を指の腹でさっと軽くこすり撫でてやると、きゅっと、きつく瞼と唇の両方が閉じられてしまった。こういうところは可愛くない。ほかに誰かが居るわけでもないのだからこういう時くらいは出そうになっているのであれば、もっと素直に出してくれたっていいのだ。そうやって意地を張るから意地悪されるんだぜ日吉、と恨めしそうに見下ろしていた鳳は薄く唇を綻ばせたあと、わざと胸の突起ばかりを執拗に弄り回した。
 「ッ、……お、とり、……」
 「なに?」
 唇の端に唇を寄せながら訊ねれば返ってくるのは無言の沈黙。
 「だめだよ。ちゃんと言ってくんないとわからない。なに?」
 摘んだりさすったり引っ掻いたり、それはもう自由に悪戯をしていたので日吉のそこはぷっくらと脹れ手のひらで転がせば千切れてしまうんじゃないかと心配になるほどよくころころと転がってくれていた。
 「ッ……たい、……」
 「なに? よく聞き取れなかった。もう一回」
 「……鳳っ……」
 「何回も言わせないでよ。ちゃんと言ってくんなきゃわからないんだって」
 鳳を睨みつけてくるその目には怒りと羞恥、そして熱の色が見えている。鳳が唇だけで笑うとやがて観念したように日吉も息を呑み喉を大きく鳴らせた。
 「だって仕方ないだろ。勝ったのは俺なんだから。捕まっちゃった日吉はもう諦めるしかないんだって。大丈夫。加減はしてあげるから。ね」
 「……いい加減なこと言ってんじゃねえよ……手加減するようなこと言ってそれを守ったことなんかねえくせに……」
 あれ、そうだったっけ?
 とぼける鳳のその言葉に、忌々しく日吉が舌を打った。
 「鳳、……もう一度話し合おう」
 「だから言ってんじゃん。観念する道しか日吉には残されてないの。勝負に不正はなかったんだからやり直しなんかしません。OK?」
 「ちょっ、……待てっ、て……っん! ……だ、からっ……! ちょっ、待てって……!」
 うるさい口を塞ぐ手は二つ。一つは唇を合わせて黙らせる。もう一つは胸の突起にしゃぶりついてとにかく喋れなくさせてしまうかのこの二つ。鳳が咄嗟に選んだのは口ではなくて突起。
 「……ッ! ……やめ、…………あ……っ! ……噛む、……っな、くそっ……!」
 唾液に濡れて艶やかに脹れ上がった突起は、唇を使って優しく食むと舌の先で突付かれたり下からきつく押し上げられたりしながら、刺激を受けるたびに地面に転がった日吉の躯をも忙しなく震わせていた。
 当の日吉はと言うと抗議の声でも上げようものならその開いた口から嬌声なんて言う余計なものまで飛び出してきそうだったからか、舌の施す愛撫に終始唇を噛んで無言を貫ぬいていた。
 「可愛くないなぁ……そういう態度取り続けるんだったらコレ、本気で噛むよ? いいの?」
 「…………ッ……!」
 コレと、ためしに舌の先で潰してみたが日吉の声は聞くことが出来なかった。
 「っ痛いっ……!」
 「だから言っただろ、そういう態度取り続けたら噛むって」
 「本気でやるとは思わなかったぞっ……なに考えてんだお前は……」
 「なに考えてるかって? 決まってるじゃないか。声上げてくんないと楽しくないのにホント頑固に意固地だよなぁって、少し呆れてんだけど」
 「……お前いっぺん死ね……」
 「今死んだら腹上死ってことになるけどいいの?」
 「っ、誰が今すぐここで死ねって言ったよ……! 目の届かないとこ行って勝手にくたばれって言ってんだ……!」
 「ホントお前って強情な上に手厳しいね」
 からかわれて、腕で顔を覆ってしまった日吉の、たまたま露になっていたその首筋に唇を落として鳳はくつくつと笑う。
 日吉が問い掛けた思考の形を口にしてやったと言うのに激しい抗議も起きず、ただ不愉快そうな表情を見せただけの彼の心がすでに諦めの地点に手を掛けていたことを悟っていた鳳は、引き剥がそうとする動きがまったく見えないのを好機と見るや一気に手をウェスト辺りまで伸ばし、顔を隠したきり表情を見せてはくれないものの『やめろ』と制止の声は多分上げないつもりなのだろうと、察っするや、さっそく臍へのいたずらを次の手として思いつく。
 「ッ……! く……っ」
 地面につけていた膝を立てるやそれを日吉の中心まで持っていき、ぐりぐりと押さえつけながら膝頭で刺激を与えると、その与えられる刺激から逃れようとするかのように日吉も膝を起こして身を捩ろうとする仕種を見せるのだが、ちからでは敵うはずもなく、捩れないままずっともがいていただけの日吉に、鳳は好きなだけ思うように刺激を与えたのだった。
 「日吉、どう?」
 強引に剥がした腕の下から覗いたのは泣いたあとのような双眸。その視線が困惑気味にふらふらと泳いだ。目を合わせることが出来ないのか。その眦に鳳はぽてりと唇を軽く押し当てた。しばらくじっとして様子を窺がってみたが、目を閉じる気はないらしく睫毛は震えるものの開けたままでおとなしくじっと固まっていた。まだ意地を張ろうと言うのか。そう出るならこちらにだって考えがある。軽く唇を突き出すと鳳は、なにをされるのかまだ気付いていない様子の日吉のその眦に、唇ではなくて動かしやすい舌の先を贈った。
 「手、使わないままいかせてあげようか?」
 「ちょっ、やめてくれっ……」
 「だよね。このままって言ったら下着が汚れちゃうもんね。そりゃ困るよね」
 「わかってんなら、……どけよ……」
 「なんでそうなるかな。手を使ってくれって言えばそれで簡単に済む話じゃん」
 「だからっ……あ、っ……!」
 聞き分けのない日吉の態度に少しいらついて、不意をついて膝頭を強く押し込んでやった。日吉が意固地な性格をしているのは知らないわけではない。それでもしつこく抵抗されるのは面白くないものなのだ。


 

3/20の全国大会に発行します鳳若の『森に隠れる。』から一部抜粋してきました。

隠れていちゃいちゃしてます。ラブラブな二人がとっても青臭いことしています。

でも可哀想にチョタは挿れてません。すんでのとこで邪魔者が…。

鳳若はいつもこんなカンジでじゃれてんだろーなぁと、一人妄想してうはうはしてました。

チョタはきっと尻に敷かれてるんだと思う。攻めなくせして日吉にめちゃ弱いの。可愛いなぁ。

日吉も苦労が耐えないんだけどすっかりとほだされちゃって彼もまたチョタに弱いの。

つーか、チョタに挿れさせてあげられなかったことだけが心残りです。

(04.03.04)

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