「取り合えず……上着、脱ごうか……」 襟元に手がかかるのをまるで待っていたかのようにおとなしくされるがままになる柳生が不意に口を動かしたのは、タイを抜いたときだった。 「仁王くん……」 「ん?」 「伝えておきたいことがあるんですが……」 「伝えたいこと? なんじゃ?」 「……実は、意識のほうははっきりとしているんですが、熱のせいなのでしょうね……躯の方は結構だるいんです……ですから、あれこれと応えられないこともあるかと思うんです……許してくださいね」 こういう状況になっても律儀さを失わない柳生に可愛いかねと、眼鏡の外されたその潤む目元に突き上がる愛しさを籠めて、仁王は軽く唇を押し当てる。 「気にするな。なんもせんでよか。オレが頑張るし。お前の今のあまりにも可愛いセリフのおかげでめちゃ気分よかと」 「……そうなんですか?」 「……ああ」 やはり熱のせいで唇はいつもと違う温もりで、かさついてもいたし、熱くもあった。 自分から唇を開いて舌を誘う柳生を、労わるようにベッドに沈め、柳生の性格さながらにかっちりととまるボタンを手際よく外していく。当然だが肌も酷く熱い。まるで今の今まで火のそばにいたかのようである。 それにしてもなすがままと言うシチュエーションも、手間が掛からないだけでなくほのかに興がのり、今後もお願いしてしまいそうである。気遣いを忘れることはないものの普段絶対に起こりえない事態なだけに純粋に、楽しくって仕方がない。つい顔がにやけてしまうのも、これはもう致し方ないことであろう。柳生がこれからどんな反応を見せてくれるのか実に、楽しみだ。 「柳生、ここ、結構きつそうやね……」 仁王は期待に胸を躍らせながらベルトを外すと躊躇いなくファスナーを引き、柳生が穿くそれを一気に足から抜いた。 「ほぉ……相当キてるようじゃな。そうじゃろ? 柳生」 仁王は意地悪く笑って、もうかなりの張りを見せる……手で添えなくても自力で勃つ柳生のものを根元付近で絞めると堪らないとばかりに声を上げる柳生に、少々荒い仕種になるだろうと自覚しながら指の先で先端をぴんと弾いて刺激を与えた。 「あぁ……! く……っ」 「時間を掛ける気はないんじゃが、こんままは辛いやろ。とにかく一回、イっとき?」 手のひらでふわりと柳生のものを包んでゆるりゆるりと上下の動きで擦り始めると、見るからに爆発寸前であったせいか、先端から悦びの蜜がこんこんと湧き、あれよと言う間にせっせっと働く仁王の指を濡らし始める。 ときおり指の腹で撫でると、いまにも蕩けそうな声を上げて柳生は頭を忙しく振った。 「っあ……あぁ……っ…………ふ……」 やはりだるいのか。喘ぐ割には躯の跳ねが少ない。いつもならもっとしなやかに踊るのに――……仁王とて事情はわかっているのだがいささか物足りない感が否めず、我侭なものでたまにだが棘の生えた気持ちも生まれてきてしまう。 「仁……王っ……く……」 「なんじゃ?」 仁王は伸び上がって、浅く息を吐く柳生に軽く口づける。 「躯が自由に動かせのやから、今日くらいはきちんとこの口で言わんといけんよ?」 「く……うっ……」 わざと先端を引っ掻くと、これはさすがに小さくだが背がしなった。 「……ん……あぁ…………あ……あぁ……ん、…………っふ……」 その声だけを聞けば十分過ぎるほど感じまくっているようではある。 「あ……あ……っ」 声が上がる度、うっすらと開かれる薄い唇の隙間からやけに赤い舌がちらちらと、随分と扇情的な動きを見せている。その色に誘われるようにして仁王が隙間から強引に舌を差し入れると、緩慢な動きながらすぐに柳生も応え、仁王のが絡まると吸い付くといったねだるような仕種を見せ始める。 「ん……、……んんっ……」 いつになくつたない動きをする舌にあっさりと煽られ、仁王の方も思わず握る手にちからが入る。そして『イヤ……』と抵抗する柳生にリズムを付けて射精を促した。特に集中して弄ったのはくびれ付近だ。 「は……あっ……」 柳生の大腿部がいつものように小刻みに震え、方頬をシーツに押し付けたままぴたりと動きが固まる。 直後に手のひらに放たれたものを掬うと仁王はそれを、おとなしく横たわる柳生の後部へと運んだ。人差し指と中指。その二本を使って侵入を一気に進めた。やはり熱の為か。内部はやけに熱かった。
6/27にようやっと発行出来ますよ。思えば三月に出そうと取り掛かったものです。ええ、すっかりと時期外れであります。コートはないだろよ、このじめっとした梅雨の今の時期に…。嬉しいけど悲しい…。 可愛い柳生を目指してみました。そんな柳生に振り回される仁王。でもまぁ熱のせいってことで。どっちにしろ仁王はちゃんとおいしい思いしてんだし。 でもあれだ。看病はどこいったってハナシです。やってちゃダメだろと。 表記はさせてないけどだいたい15禁くらいなもんでしょうか。 (04.06.10) |