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 「……っこの! 我侭男めっ!」
 「それだけ日吉のことが好きだってことなんじゃないか。ダメ、俺、もう止めらんない」
 「ダメとか言うな!」
 「だってしたいんだ、仕方ないだろ」
 「仕方なくない! 俺の都合も少しは考えてくれ!」
 「ムリ。俺もう全然余裕ないし」
 「わぁぁ! 待て待て! ちょっ、お前どこ舐めてんだよっ、ちょっ、ちょっ、鳳ぃぃぃぃ……!」
 慌てふためくその最中にも、要領がいいのだろう、首のあちこちに唇が当たってきているのがわかる。生暖かさとくすぐったさ。その二つが混在している震えが背中にぞくぞくときて、それのせいでそのうちにバランスがうまく取れなくなってくる。
 背中が当たっているロッカーの扉が二人分の体重を受けてがたがたと騒ぐが、日吉の喚く声にも耳を傾けてくれない鳳である、そんなものにまでは構っていられないのだろう。日吉を抱きすくめるのにもう必死という感じである。
 「っ……おいっ! ……っとりっ、……」
 「日吉、……ダメだよ止まんない……」
 濡れて色づく唇に目が奪われでもしたのか、そんな物欲しげにさせた唇で呼ばないでよと少し掠れたような声で囁かれる。普通に話すのとは違うその声質にぞくりときて腰から上が震えてしなった。余韻を残した背中にするりと忍び込んできた手がじかに肌に触れてくると、ほぼ同時に日吉の方も目を閉じてしまう。撫でられる行為は素直に気持ちがいいと思える。ましてや鳳のその手は愛撫を施してくるのだ。ろくな抵抗など出来ようはずもない。
 「……好き、好きだよ日吉、……」
 ストレートに気持ちをぶつけてくる鳳の口づけに、日吉も抗えなくなった。鳳のようには口に出せないが、日吉だって鳳が好きなのだ。でなければ同姓の鳳に口づけを許したりはしない。
 「……ん、……」
 思えば、自分はこの甘い言葉と共に絶えずいいように振り回されてきた。そして同時に自分も愚痴を零しながらもそのつど鳳を甘やかしてきていた。こんな風にして鳳に熱を押し付けられてまんまとうまく逃げ出せたことなんてないのだ。きっと今日もまたこのもがく腕と足をその手に括られて欲の海へと投げ込まれてしまうのだろう。
 「……ぁ、……っとり……」
 まるで貪るような忙しさで首筋に舌が這い、あちこちへと刻印が刻み込まれていく。そのかんにも指が用意良くシャツのボタンを外しに掛かり、ついでとばかりにベルトまでもが外されてしまった。許したのはキスだけであったはずなのに、これではここで抱かれてしまうことになる。だがいまさら慌てたところでどれほどの抵抗が出来るというのか。日吉はどうしたらよいのかとつい、愛撫を受けていながらその場の空気に相応しくもない唸り声を上げてしまった。
 「……日吉」
 鳳もその反応を不思議に思ったのか、顔を上げて日吉の目を覗き込んできた。
 「どうしたの?」
 「べつに……」
 「立ったままなのはイヤ?」
 えらく方向の違う勘違いをしてくれた鳳に日吉は恨みのこもったまなざしを送った。そういうことは聞かれても答えられないのである。どうせこの状態で幕など下ろせやしないのだから、とっとと手際よくどうにかしてくれてかまわないのだ。いや、とっとと進めてくれないと困るのである。煽るだけ煽って間の悪さを露呈さす鳳のこういうところが常から歯痒さに油を注ぐが、焦燥の勘に駆られても切羽詰まってくるだけなのだ。
 「……するんだろっ、もうどうだっていいからお前の好きなように進めろよ……!」
 しかしながら日吉だって、性格上こんな風にしてでしか想いを伝えることが出来ないのだ。色気の欠片もなく乱暴に胸元を掴んで引き寄せてそれからしてやれることはただ一つ、荒々しく唇を押し付けてあとは鳳にまかせる為に口を薄く開いてやるだけ。
 「……っ……」
 それでも思いが伝わったか、すぐさまに舌が忍び込んできて絡め取られたあとはしつこく吸いつかれ鼓動も早くなる。歯列を舐められたり舌の裏を弄られたり、追い立ててくるような愛撫にそれまでは立っていられた日吉でもここに来て急に膝ががくがくといい始めた。
 「……ん、っ……あ……」
 抱きつくようにして鳳の躯に縋った。もう、立っていられない。踏ん張るだけのちからがもうないのだ。
 「あ、……っん……」
 首筋に噛み付かれながら躯が床へと案内されて横たえられた。すぐに組み敷かれてちからの抜けた躯のあちこちがまさぐられ、てのひらで優しく撫でられもして、熱を持ち出す躯の火照りをどうにかしてもらいたくなり背に腕を回して自分から腰を擦りつけねだった。
 「……鳳っ……鳳……」
 もどかしくて熱くて腰が揺れて堪らない。はやくどうにかして欲しいのだ。
 「あぁ、あ……!」
 それにこうやって密着してわかったことなのだが、鳳の牡も徐々にではあるが硬さを増してきていて、だいぶ持ち上がってきている状態にあった。
 「っあぁ……あ……」


 


 

8/13の夏コミにて発行します鳳若の『愛しているから好きと言って』から一部抜粋してきました。

とりあえず、お約束な展開ですが、夏なのでラブ度は230度くらい? 上がってます。熱い二人です。

ただこれまでと違って日吉がちと積極的かも。自分から強請ってるかも。や、ほら、夏だから!

で、夏だから花火もしてもらったよ。や、サイトの方で15のお題に載せようと思ったやつをちと手を加えてこっちに載せてしまいました。カワイイなぁ、もう…。

内容は…そうね、一応15禁な程度なし上がりになりました。

(04.07.27)

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