ハーパニエミ百貨店
2011クリスマス伊勢丹

































































































































































































shinjyuku-isetan 2011

2011年12月、駆け足で立ち寄った京都駅伊勢丹の大空間エントランスのクリスマス・ディスプレイに、まったくもって心うばわれてしまいました。
白からチャコール・グレーへのグラデーションを基調に、あざやかな差し色を使いながらデザインされた奇妙な動物たちが雲や木立のなかにだまし絵のようにひそんでます。フィンランド出身のクラウス・ハーパニエミ氏 (KLAUS HAAPANIEMI )のイラストは、美しくユーモラスだけれど、グロテスクリーやダークネスの影もふんだんで、本来は一般受けするものではないと思う。それを、百貨店という商空間でこんなにも大胆に展開した確信犯っぷりに、さすがは伊勢丹だぁ、とちょっと感動してしまったんでした。















京都伊勢丹のフライヤー

帰宅してみるとハーパニエミ氏は新進気鋭の人気デザイナーにしてアーティストで、伊勢丹でのクリスマスコラボは2009年からはじまりもう3度目だそうな。ここ数年クリスマスはあまりに忙しかったので、な〜んにも知りませんでした(笑)。
オフィシャルサイトもまたすばらしくうつくしい。それによると、
「クラウス・ハーパニエミ (KLAUS HAAPANIEMI ):デザイナーであり、アーティストでもある。フィンランドで生まれ育ち、数年間のイタリア暮らしの後、現在はロンドンを拠点に活動するファッション・デザイン界の新星。故郷の文化や自然を大切にしながらも、現代的なアイデアを描線や色使いで表現するのが彼の作品の特徴です。想像力をかきたてられる不思議なキャラクターたちと風景が、今さまざまな人気ブランドや世界中のメディアから注目を集めています」。



ひー、このポートレートは出来すぎ〜とのけぞりましたが、youtubeでみた動画では、フツーのフィンランドのにいちゃん、という感じでした。…やっぱり伊勢丹の演出はんぱナイ(笑)。


というわけで新宿店はどんなだろ?京都伊勢丹のあの10階までぶち抜き空間にはちょっとかなわないだろうと思いつつ、興味惹かれて行ってみたらば…


小さな空間を大空間に反転させる見事なたくらみがなされていました。大正15年に建てられたアールデコ建築のなかに、いくつもいくつも小さな箱庭・ジオラマが嵌めこまれていたのです。
これは地下のエントランス、クッキーのためのジオラマ。もともとある壁龕のレリーフにも、ふわりと軽そうなクッキーとも調和してる。こんなふうに店内いたるところに、トレジャーハントの楽しみが仕込まれ、取り合わせの妙にうならせるディスプレイが展開されてました。そしてもちろん高名な伊勢丹の外壁大ウィンドウの17面に展開されるジオラマはほんとうにすばらしかった。



…正直言って2011年3月以降、六本木ミッドタウンのディーセントな商空間をみても、銀座の以前のままの賑わいをみても、これは嘘なんだ、震災復興のすすまない東北、ことに放射能汚染のなかに閉じ込められ見棄てられた福島をなかったことにして進もうとする醜い中央の演じる虚像なんだという気持ちが晴れることはなかったです。
でもこの新宿伊勢丹の、ハーパニエミ氏のディスプレイに、久々に東京のもってたはずのクオリティを素直に楽しむことができました。
オフィシャルサイトの記録を見ると、2009年、2010年の「ワンダークリスマス」はカラフルでファニーです。(こちらがハーパニエミ氏の従来のテイスト)。それと比べるなら、ことしの「ホワイトエデン」はあきらかに眠りの森、というより時を留めてかろうじて生きながらえる「腐海の森」が描かれていると思います。2011年の「ホワイト・ワンダー・クリスマス」のテーマは「日本の固有種をモチーフとした生きものたち」、「日本の生物多様性」だとリーフレットは語ってます。それを「時を超えて語り継がれる純白の楽園」の物語として紡ぎ出したと。一見、ちまたにあふれる復興プロパガンダとおなじ言葉を使いながら、伊勢丹=ハーバニエミのアートワークは「100年ののち、山は眠りから目を覚ますだろう」という、[シュ]の言葉を美しく告げている? キラキラとした氷の粒のふりそそぐまっしろな冬の森、でもそれはかろうじて死の森ではない。それぞれ独特の面差しをした生きものたちがそれぞれのやりかたで時を乗り越えて目覚めのときまで到達しようとしている不思議の森、それを今この2011年の年の瀬に、質実ともに関東を代表してきた商業施設である新宿伊勢丹が、こんなにも洒脱に清々しく表現して見せたことに、さらに深く感動を覚えてしまったんでありました。

我々と我々の巻き添えをくった生態系はいま腐海の森にある。
偽りなく測り、親身に助け合いながらこの逃れられない半世紀を乗り越えていくこと。その知性と誠実さが、来年こそ顕れますように…。



kyoto-iseyan, 2011

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