<喧嘩・ケンカ>
犬舎東側が縄張りの「ブラタン・ファミリー」のドンであるペペロンチィーノA(以下、ペペロンA)が
牛爪を意気に横咥えして歩いていると、前方から西側を仕切る「スムース・ファミリー」のドンである
ナポリタンU(以下、ナポU)が艶々した光物のスーツを気障に着こなし、お尻をフリフリやってきた。
「おう、ナポUのひさしぶりだな」「お前さん、黒光りアイの姉さんにヒートがきたのを知ってるか?」と
声をかけた。「ペペロンAの、俺は、姉さんには可愛がられてるから知ってるぜ」と応えた。
「アホか!お前先週、上物のジャーキーを横取りしようとして咬まれてたじゃねーか!」と薄笑いをうかべた。
「そそ・・れは、俺が礼儀をかいたからしかたのないこと、姉さんと俺には愛の結晶もできたし」と目線を
そらせた。そこへ最近めきめきと、勢力を伸ばしてきた「ギャング団チョコ」のリーダーであるカプチィーノK
(以下、カプK)が「親分さん、お元気でしたか」と二人に挨拶をしながらクイッ・クイッとやってきた。
ペペロンAが「お前最近、ちっとばかし態度が大きいじゃねいのか」とカプKを睨みつけた。「まあそれは
今度ゆっくり、今日は黒光り姉さんに挨拶に行くので失礼」と立ち去ろうとした。「ちょっと待ちな、お前
イケメンだと思って跳ねてんしゃねーぞ」と二人のドンが唸る。さあ、この仁義なき戦いはどうなるのでしょう・・・
ケンカになるきっかけは、人間のように複雑なプロセスはありません。食欲・生殖などの本能が司る原因で
争いになって、普通は相手に深いダメージを与えるほどのケンカにはなりません。ただし、一部の犬種や、
特殊訓練を受けた犬の場合には「止め」の指示があるまで攻撃します。これはケンカではなく、攻撃性が高い
本能や、訓練による攻撃ですから厳密にはケンカではありません。
多頭飼いの方からのご相談に、よくケンカについてのご相談がありますが、これらに該当しなければご心配は
いりません。仔犬の歯は鋭いですので、軽く咬んでも深い傷になる場合があるのでそれだけは注意が必要です。
他の章でも書かせていただいたように、順位確定や遊びの場合には、エスカレートしない限り見ているだけに
しておくべきです。相手が他人さまの犬や、あまりに身体の大きさ・年齢差がなければ無理に人間が介入しない
方が、後々のことを考えても正解です。稀なケースとしては、先住犬や外で出会う犬などと、どうしても相性が
悪い場合もあります。この場合には残念ですが、いっしよに過ごすことが無理なこともあります。
時間をかければ改善する場合と、まったく不可能な場合もあって、先住の猫とは仲良くできても、後からきた
子犬とは拒否反応が出てしまう不思議なこともあります。私たち人間からの観点で、ケンカとふざけあいとの
区別が困難なケースには、劣勢の方を保護するより、優勢の犬をおちつかせた方が、良い結果が得られることが
よくあります。人間が逆の行動をとると、原因によっては信頼関係に影響を及ぼして、後で人目のない時に
もっとひどい争いになることもあります。この点を注意してあげてください。
二人のボスから逃れたカプKは、黒光り姉さんのゲージ館の前でイライラしながら帰りを待っていた。
「あら、カプKじゃない、なんの風の吹きまわしだい?」と、しっぽを鞭のようにふりながら住処へ黒光り姉さん
のご帰還である。「綺麗な姉さんにプロポーズしようと思ってさ」と、必殺技褐色の流し目をくれる。
黒光り姉さんは、マッタリーとピカピカの背中を見せつけながら「なにいってんだか、お前さんは毛長族だろう。
そのうえ、まだお子様ランチじゃない。バカじやないの。」と、艶のある声で囁くように言った。
「姉さん、そう冷たくしないで・・・」と背後から歩み寄ろうとした。「ガゥ!!!」と黒光り姉さんの牙が光る。
「キャイ〜〜〜〜ン」カプKは、黒光り姉さんの熊のような前足で押さえつけられ、薄れいく意識のなかで、
低い唸り声を聞きながら軽率な行動を深く後悔した。
チョコ団、カプKの命運ここに尽きる・・・ 黒光り姉さん強い!お〜〜〜こわ。
犬は自分の背・後ろをとられるのを極端に嫌います。まるでゴルゴ13のように(笑)。ですから、
飼い主に対して背中を向けたり、お腹を見せるのは安心しているからです。争う犬が一方に背・腹を見せている
ようなら勝負がついたことになります。ふざけあいの場合には、お互いがそのような行動をとり、行為そのもの
からは優劣の判断は困難になります。小さなお子様が、ふいに犬の背後から近づき咬まれるケースもあります。
犬にとって、その子の性格にもよりますが、飼い主以外に頭を撫ぜられたり、背後から何かをされることは
嫌なことなのです。頭を撫ぜられることは、支配されることをあらわしていますから、他人にされることを
許せない子がいるからです。ワンコたちは、カプK君のように恐〜い勉強をしながら、本当のケンカにならない
ような社会性を身につけていくのです。
皆さんも、カプK君の精神的な復活を祈ってあげてください(汗)。
次回は、<ダイエットについて>の予定です。