<ワンコの記憶について>
美味しいこと、褒められたこと、大好きな人のこと。。。怒られたこと、恐いこと、嫌いなモノのこと。。。

犬は、ヨチヨチ歩きの頃から、驚くべきはやさで環境に適応していきます。その間に色々なことを学んでいきます。なにも「学習=記憶」は、
私たちだけの専売特許ではありません。家庭内に複数頭の犬がいれば、同じ出来事でもそれぞれの反応があり、個性と、定説以上の
知性も感じることもあります。犬にも、先天的な能力格差が存在します。それは「勘」、すなわち第六感です。他項で書かせていただいた
「超能力」ではなくて、まさしく人間と同じ「勘」です。要領良く理解し、学ばなくても直感力で行動できる犬もなかにはいます。
カーマインさんの犬舎では、ユウくんと、レーチェちゃんがその筆頭です。ここで少しだけ例として、ご紹介することにしましよう。

この彼と彼女は、縁があって通常より少し大きくなってから、こちらの犬舎に入って来ました。

<ユウくんの場合>
彼は元々、やや過敏症ぎみでした。原因は不明ですが、男性を忌み嫌い、女性に対しては絶対の信頼をよせておりました。
私は、なんとか原因を見つけ出し、問題行為を改善させようと、五里霧中ながらも努力する日々を過ごすうちに、あることに気がつきました。
これではまるで、プロ○ェクトX風ですね。。。風のなかのス〜バル〜♪

私自身が疲れ、冷静になってから、やっと気づいたこと。
それは、問題児であるはずの彼が、犬舎の誰よりも、私の行動をいつも見つめていたことです。彼の過去(嫌な記憶)を修正したり、
消去することばかりに夢中になっている私をです。そんな大汗をかいている私を、冷ややかに見つめる鋭い瞳がありました。
吹っ切れました。そして、悟りました。。。
彼は、青筋たてて、目くじらたてて、しつけを入れようとする私が嫌いなのです。たしかに、彼は匂いや声でも、男女の識別をつけては
いますが、無骨で優しさのない男性という存在が、過去の記憶に何らかの陰をおとしていたのです。
そうだとわかっても、私が女装し、お姉さま言葉を使うわけにはいきませんし。。。気持ちわ〜る(-_-;)冗談ですf(^_^)ぽりぽり
そんなバカ!をしても、彼に違うトラウマがめばえそうです(爆。

悩みましたが、出た答えは簡単でした。「何もしない・何もいわない」が最善の方法でした。しつけは女性にお任せし、無味無臭の
存在をアピールしたのです。徹底的に人畜無害を演じました。ユウくんがわざと、吠えようがわめこうが、オシッコ攻撃&脱糞奇襲を
してきても日陰の雑草のごとく、存在を消しておりました。辛かったです。。。ホント。嫌われるって辛いっス。
そんなイバラ道を行く間に、彼に変化が現れてきました。
「こいつは、なにもしない無害なアホかもしれない」と、そう認めてくれたような行動が、時々見られるようになってきたのです。
涙が出そうでした。。。まじで。
それからは、坂道で雪だるまができるがごとく、彼との関係(他の男性も含めて)が改善されていきました。彼は、賢く感受性が強い
からこそ、過去の男性に対する「暗い記憶」が、よけいに忘れられなかったのでしょう。いまではすっかり、犬舎一のおりこうさんになって
います。めでたし、めでたしo(^o^)oです。
もちろん彼のおかげで、巣立つ仔犬の育て方が、より慎重になっているのはいうまでもありません(笑。

<レーチェちゃんの場合>
彼女の画像と出逢った時から、ず〜っと恋焦がれておりました。その表情がたまりませんでした。すでに仔犬らしさが消えかけて、
大人びた雰囲気がある仔でした。到着する日が決まり、子供が正月を指折り数えるがごとく、ぷるぷるしながら待っておりました。
ご対面です。。。感動しました!\(^O^)/ぅお〜\(^O^)/ぅお〜アホみたいに喜びました。
これは間違いなく「よい仔」です。これまた涙がこぼれそうでした(T-T)ウルウル
ユウくんと同じく、すこし年長さんだったのですが、彼女からは全く「陰」を感じません。なんと、表現したらよいのでしょう。
艶やかなのに控えめで、何も教えずともすべてが出来る仔でした。素晴らしい、まるで大型犬のような落ち着きがある女の子です。
小型犬でもこんな仔がいるのか!?ただ驚くばかりでした。
感嘆と疑問のまま過ごしておりましたが、彼女もここに慣れ成長するにつれて、いずれ問題が出るものと思い、期待を抑えて成長を
見守ってきたのです。後の落胆を恐れるあまりに。
しかし。。。
脱帽です。作出された犬舎さんと、母犬と父犬に深々とm(_ _)m
なんと、彼女はあの頃のまま成長し、より集中力と理解力を身につけた、素敵な女の子になりました。
犬舎には、他にも良い仔たちもたくさんいますが、彼女ほど仔犬期から成犬期まで崩れない仔も珍しいのです。普通は、仔犬の
頃から初ヒートをむかえるまでに、性格の乱れる波があるのですが、彼女にはそれが全くありませんでした。
彼女のエピソードによって、私の小型犬に対する認識がまた変わりました。今度、母となる彼女の仔が、同じTYPEの仔たちならと、
難しい願いを祈ってしまうのです。今年の年末年始は、期待と希望でドキドキ年が明けそうです。

彼と彼女は、実はどちらも同じぐらい人間対して興味があり、賢いワンコなのですが、幼犬期に「陰」をもらってしまうと、こうも違う
ものかと考えさせられます。私たち人間も、すごく楽しいこと、とても嫌なことを忘れません。犬も同じです。人間と暮らすことに喜びが
あれば、しつけによる我慢も、学校に通う子供たちのように楽しく過ごせるはずです。褒めてもらって喜ぶ子供と、トイレをおぼえて、
おやつを貰えた仔犬とかわりません。どちらも、親と、飼い主の笑顔だけが嬉しいのですから。。。

記憶は、かなうなら忘れたくない「明」の部分と、出来ることならば消してしまいたい「陰」の部分とで、構成された脳内データです。
人工のモノであるHDDでも、書き込まれたデータを完全に消去することは困難だそうです。成長期の脳に、すべて「正しい情報」だけ
を送ることは不可能ですし、毎日の出来事には、良い事も、悪いこともあります。それは避けられないことです。
ようは簡単に「上書き保存」や、ときには「再インスール」ができる「素直な性格」を育てることが大切なのです。私が行った無意味で
逆効果かしかない方法は、記憶という形の無いモノに対して、慎重さと敬意を欠いたものでした。各個人の記憶(思い出)は、生きた
経緯そのもので尊いものなのです。それを他人の思惑で、安易に修正することは無理なことです。いまの自分に満足できずに、
「変わりたい」と、自分自身の意思が作用しない限り、他人の関与は精神的な暴力や迷惑行為にすぎないのです。
現代社会に蔓延する
「鬱」も、他人が「なにしてるの!しっかりしなさい」が最も逆効果だと聞きます。内科治療(投薬)も、
身体の免疫能力を高め改善を
促すだけで、薬そのものが病を治すのではありません。他人が、心の陰に不躾に関わっても、
拒否反応が出て悪化させるだけになって
しまいます。生物にとって、身体を深く蝕む恐い病気は心の病(ストレス)かもしれません。

別項の、「号外」「老いる」にも書かせていただきましたが、犬もこの世を去る日まで、貴方とたくさんの思い出を創って、そして徐々に
それを失っていきます。悲しいですが、生物の避けられないプログラムです。飼い主と犬が、たがいに「癒し」と「ストレス」をぶつけあい
共に過ごした楽しい日々も、いつかは終わりの日が訪れます。そのときに、後悔が無いような関係を日頃からもちたいものですね。
生物には、ゲームオーバーはあっても、コンティニューのボタンは無いのですから。。。


次回は、<愛!?の手づくり食>の予定です。

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