<ワンコの帰巣本能について> 麻呂くんの帰郷によせて。。。 渡り鳥や、海洋に生きるクジラ類などは、体内にGPSが内蔵されているとしか思えない正確さで、遠距離をあたりまえのように移動しています。方向おんちのわたしなどは、彼らの能力が羨ましくもあり、理解できないことでもあります。空を行くものは、地球の磁気、太陽の位置、風向きなど、海を行くものは、海流、水温、塩分濃度、海水成分など、季節による生活環境の変化や、新しい命を創るために移動していきます。陸でも、大型草食動物が同じような目的で移動し、それに合わせて肉食動物も移動します。「帰巣・種の大移動」とは生きるための大切な定めでもあります。 帰巣にしろ、大移動にしても、それはその動物たちの生活システムのなかにセットされたプログラムです。平原に生きるライオンが、お留守番のメスを残し、ほとんどのメスたちが群で狩に行って獲物を確保し、遠く離れた「巣」に無事に帰りつける。彼らにとっては簡単なことかもしれませんが、人間が地図やコンパスを持たずに広大な平原に連れて行かれ、「ハイ!頑張って夕ご飯までには帰ってきなさいよ」と、言われても、ここは貴方のお墓ですよと言われることと同じことです。人間も「文明の利器」がなければ、野生の血を抜かれた「家畜」と同じぐらい非力な生物なのです。 犬の祖先について、他項でも書かせていただきましたが、DNAの研究や解剖学的な分析で、最近は「狼」が有力なルーツであることがわかってきたようです。狼は他の野生動物と同じように、「自身位置の認識・方位判断能力」についても優れた能力をもっています。祖先のひとつに「狼」をもつ「犬」もまたその能力があっても不思議ではないはずです。吠えまくり、悪戯ばかりする自分の飼い犬に怒ったおやじさんが、「お前なんか、隣町に捨ててやる」といって、置き去りにしても、数日のうちにひよっこり帰って来て、チンチンなんかしてるミックス犬。そうと思えば反対に、蝶よ花よと大切にされていた美犬が、目を離した隙に脱走して、そのまま行方不明になっちゃうこともあります。生物たちの姿かたち、能力は、決して奇をてらったものや、無駄なものはないのです。生きるために必要だからその「姿」であり、その能力をもつのです。ですから、人の手が入った動植物は違う「生物」ともいえます。 お話しのレベルをもっと身近にしてみましょう。 愛玩犬が、生きるために群れで大移動するなんてことはないのですから、本来の意味の「帰巣本能」なんて、必要ではない能力かもしれません。でもその能力を発揮するためのベースである「安全で、楽しく、居心地の良い場所=巣」という鍵が愛犬と貴方の絆を太くもし、細くもさせるのです。「巣」の最高管理者で、最高権力者の指示に愛犬は従います。でも、貴方が優柔不断で、頼りない存在であるなら、愛犬は貴方のために外来者に吠え、時には貴方に逆らいます。それは愛犬が、自分自身で「巣」を守り、「巣」を支配できると思っているからです。 「狼」が目的地(狩)に行く、そして巣に帰る、「人間」が仕事に行く、そして家に帰る、どちらも同じことです。これらと、TVネタになる出来事の故意、事故に関わらず、とんでもなく遠くに置き去りにされた犬が、数ヶ月もたってから自宅に帰還するというエピソードとは違うと私は思っています。昔、「マリリンに逢いたい」という物語が映画化されました。南海の島にいる恋人に会いに、海を泳いで渡る犬の実話から創られたお話しです。警察犬や生存者捜索犬であっても、川に匂いを遮断されれば、追跡することは困難になります。まして、海ですよ!彼が華麗なクロールや力強い平泳ぎができるはずはありません。犬かきで泳ぎ、波や海流に打ち勝って島の恋人に会いに行くんですよ!すごいと思われませんか?極寒の地で生き残ったタロウ&ジローも方位を認識し、危険を避けて生き残ったんですよ!信じられないほどの物語だとは思われませんか?これらからわかることは、彼らは犬のなかの特別な超能力者で、本能に操れながらも類稀な「意志」の持ち主だったのです。震災にあっても、漂流しても、病気になっても生還するには最後には、頑強な「意志」だそうです。帰巣能力を最大限発揮するためにも、「意志」と「集中力」が大切ですし、しつけが上手く入る仔はその素質が充分にある個体といえるでしょう。たぶん。。。デス(^.^;... 今日、カーマインから旅立った仔が飼い主さんと、遠い地から犬舎に遊びにこられたそうです。助産夫としては、ぜひとも里帰りした仔に会いたくて、さっきからお尻がムズムズしております。立派に成長した姿はウルウルものです。 次回は、<ワンコのアンニュイな日>の予定です。 |