皆様からのご相談が多いテーマのひとつ「吠える・なく・うなる」を考察してみましょう。


<原因の発見と対処の基本>
1)吠える刺激となる原因を突き止め,それをなくすか減らすようにする事がポイントです。
   可能な場合は,必ず吠えるのにつながるような刺激をなくすか変えるようにしてみて下さい。
   その子が驚いたり、嫌がるものを排除するのもひとつの方法です。
   刺激をコントロールしたり、変えることは脱感作法の重要な要素でもあります。

2)吠える行動を助長しているものを発見・改善してみましょう。
   吠える行動の衝動因子となっているものを突き止め,確実にそれをなくす。
   (例,おやつ,注意関心,弱すぎる罰,閉じ込めていたのを出してやる,など)
   もしも吠えることに対して刺激がきっかけならば場合には,犬をコントロールしながら
   刺激からそらす方法を使うのが良いでしょう。(具体的には後記:5)

3)「静かに」などの命令語で教えてあげて下さい。
   指示語は短くてはっきりしたアクセントのものが適切です。

4)行動矯正など。
   行動矯正を行うには,まず飼い主が犬をよくコントロールできなくてはなりません。
   そのためには、食事・散歩・室内での態度等で上下関係の確立が大切です。
   犬をコントロールできるようになったら,問題行動のきっかけになる刺激か、
   類似的なきっかけをコントロールし、大きさ・強さ等を変えて犬にアプローチしてみて下さい。
   刺激はチャイムなどなら録音したものを使ってもよいですし、ドアの閉まる音、家族がドアを
   ノックする音などなら協力者とアプローチしてみて下さい。
   この方法で最も大切なのは,犬がその場から逃げることなく、刺激が吠え声に退却することなく
   服従訓練を行い、あるいはアイコンタクトよって吠える行動がコントロール出来るようにすることです。
   矯正訓練の回数を重ねるにつれて刺激緩和を徐々に強いものにしていきます。
   (くり返しがポイントです)

5)各種機器の使用
   飼い主の与える罰は、叩いたり、怒鳴ったりするよりもその子の要求を無視または、失望させる方が
   効果的です。

  a)飼い主のいる前で吠える場合
      警報(超音波,霧笛,防犯アラームなど)・水(水鉄砲)などを利用し、屋外・室内とも反射刺激を
      与えて下さい。
      ただし、使用する場合は警告をせずに使用する事です。

   b)飼い主のいない時に吠える場合:
      吠えることによって作動する機器、犬の嫌う香りを出す首輪・超音波や可聴域の音を出す首輪、
      電気ショックを与える首輪などを使用するのも方法ですが、ストレスによる疾患や、アレルギー
      反応が出てしまう可能性もありますから使用は注意が必要となります。
      (貴方がいない時の使用は逆効果になる可能性大です)

6)分離不安の場合
   前記の矯正訓練でも改善の無い場合。(訓練師などの専門家が不可能と判断した場合等)
   分離不安の治療一薬物療法を行ってくれる医院もありますのでご相談されるのも一法です。

7)劇症反応行動の場合
   劇症反応行動の治療一飼い主・他人に関係なく攻撃(噛む)が酷い場合にも薬物療法を相談してみて下さい。

8)不適切な刺激からの転移
   運動を増やす、服従訓練をする、飼い主との社会的接触を増やす、遊びを教える、スキンシップの
   機会をふやす、退屈させないことも改善に向かわせる方法です。

「無駄吠え」対処の基本

矯正訓練は、「吠えたい」という衝動を抑え、「やめよう」という新たな習慣付けをすることが基本です。
このことを理解せずに対応しようとしても、吠えるのはなかなか抑えることは出来ません。
それに無駄吠えの原因はひとつだという保証などどこにもありません。必ずしも間違っていないことでも、
そのケースに合っていない対応をすると、かえって前より吠えるようになってしまうことも珍しくありません。
深刻な「無駄吠え」の場合は、きちんとした行動カウンセリングを訓練所などで受けることも適切な対処方です。
精神的以外の問題が無いか医師の指導も必ず受ける事です。

<原因の本質>
どんな原因で吠えているにせよ、声をかけると大抵はより吠えるようになります。
犬にとって飼い主がそばへ来てくれたり、声をかけてくれたりするのは、ご褒美の意味を持つことで、吠えた
ことに対してご褒美が出たことになってしまうのです。
同じ理屈で、吠えている犬におやつをあげたりして注意をそらそうとするのも不適切ですし、反対にタイミング
悪く叱るのも逆効果となってしまいます。飼い主の注目を欲する心理が根底にある犬だと、少しくらい叱られても
飼い主が接触してくれれば、逆にご褒美になってしまいます。攻撃的な興奮状態の犬の場合は、飼い主の与える各
刺激が「火に油」となる場合もあります。
飼育環境が、正常な行動欲求を満たしていない場合は、これを改善してあげることが最重要ですし、これをしない
で、問題行動を止めさせようとするのは不可能です。
攻撃性の治療が必要な深刻な場合は、単に吠えるのさえ止まるだけでは意味がなく、攻撃である以上、咬みつく
という最悪の事態に発展する可能性があるからです。飼い主に対する優位性攻撃もある場合には、その投薬治療
も必要になる場合もあります。飼い主が自分で矯正できる範囲は、防犯アラーム程度で効果がある子達だけです。
それ以上の場合には専門家にお願いする方が賢明です。

<仔犬のころから生じる原因>
ふつう生後5週目ころに子犬が一度吠えることを覚えると、飼い主と会話する、知らせる、果ては飼い主を操縦する
ために吠えるようになります。自然界で母犬への要求と同一のものです。これとは別に、威嚇のために吠えるのは、
攻撃性の問題行動へと発展します(特殊な場合ですが・・・)。

<子犬が吠える理由>
対象への要求信号・淋しさ・テリトリーの確保・等があります。
★子犬のいろいろな要求ために吠える時は食事を与えたり散歩に出したりしてはいけません。
 人間を操るために吠える癖がつきますので耐えて下さい。
★孤独が原因の場合は、犬が吠えようとした時、別の音(防犯アラーム等)などで犬の気を抑制して下さい。
 犬を必ずひとりにして、隠れて監視しながら、犬が相当長い間静かになるまで繰り返し行います。
★テリトリーの確保が原因の場合は、友達に家に来てもらい、犬が吠えた直後すぐに犬を呼び安心させてあげます。

一日に何回かこの訓練を行うとやがて家を守るのは自分ではなく飼い主だと判断出来るようになります。

<特殊な方法の例>
「ゲージに入れられる」「相手にしてもらえない」等の疎外感や不安感から吠える場合には躾けのためには要求に
屈しないことが大切です。とは言っても家族のためにも、近所の方達のためにも「啼き声」は困ったものです。
制御の方法を一通りためして、改善しない場合に最後の手段となります。それには条件があって、夏では夜間のみ
で冬には保温の処置を必ずしなければならない事です。可哀想なのですがワンちゃんにはクルマのなかで寝てもらう
方法です。子供が悪さをした時に母親に押し入れに入れられるのと同じと思ってください。

とうぜん車ですから、泣き叫んでもある程度の防音効果で消音されますし、哀しげな姿を見て動揺することもあり
ません。車庫の環境や、車種によっても実行が困難な場合もありますが、想像以上の効果は期待できます。初めは
いつものように泣き叫びますが心を鬼にして我慢して下さい。泣き止まない限り出してはいけません。

■■■実行上の厳守事項■■■
1.夏は冷えピタ、冬はほかろん等を使用することエンジンは絶対にかけっ放しにはしない事。
2.おしおき時間は可能な限り短時間で行う事。
3.お迎えの時の笑顔は最高で!
4.車内に持ち込むケースはハードタイプを選択。
5.ワンちゃんが車内で粗相しても怒らないで。
 (汚れを防ぐシート・タオルを敷いておきましょう)
6.車庫が民家にあまりに隣接した環境では行わないように。
7.セキュリティーのためにドアは必ずロックする事。

最も重要な注意点
ワンちゃんの啼く原因が、健康上の問題などが無いか必ず医師の診断を受けておく事と、家族全員が同じ態度で接する
事も必要です。一般的にはここまでする必要はないのですが、あくまでも最終手段としてのお話です。


<叱ったとき、反抗がはげしい・噛む・むだ吠えの対処法>
この場合の問題行動には「要求行動」と「拒否行動」、それに「支配意識」「習慣的反応」など、原因には
各種の可能性があります。ただ、すべてに共通するのは、人間と犬との上下関係バランスの崩れです。
なにげない事でそれはおこります。たとえば食事の事も原因になります。自然界ではけっして、下位のものが
食事を先にしません。犬は前歯の根元のころにある味覚細胞と、舌の貧弱な味覚細胞でしか味はわかりませんが
嗅覚は人間よりもはるかに優れています。匂いで食事は認識しますから、絶対に先にごはんは与えてはいけません。
とにかく良きパートナーとなってもらうためには人間と、犬(本能)のルールを無視しないことが大切です。
犬は主人の「声」「目線の高さ」「態度」などで、本能で優劣を判断しますので注意が必要です。
人間のいる居間などに入れている場合には、座る位置などは主人が特等席を独占しなくてはいけません。
犬に遠慮すると、前記の「支配意識」「要求行動」をうえつけてしまいます。
「別離不安」ですが、これはやっかいな問題となります。その子の性格かもしれませんし、一人の時に嫌な出来事が
あったのかもしれません。この場合には、お留守番に「達成感」「義務意識」をもたせて喜びになるようにするのも
ひとつの方法です。管理人さんが書かれているように気ながに対処しなくてはなりません。
外出の時には、さりげなく出てください。特別の態度は厳禁です。
鍵などを持って音をさせながら、「おりこうにしててね〜」なんかは最悪です。
ごく自然に「ご主人はなんの問題もなく外出して、帰宅すると、美味しいおやつとほめてくれるだ〜」と認識させて
あげてください。
いたずらして困るときには、押さえつけるのではなく、新聞紙などを丸めたもので、床をたたき、大きな音をたて
鋭く大きな声でこちらの怒りを表現します。驚きその行為を止めたときに、過剰なくらい誉めてあげます。
何度も繰り返して、その行為が不快なものにつながり、止めると誉められるという学習をさせて下さい。
絶対に妥協しないことです。リーダーは飼い主だということを理解させて下さい。
矯正訓練中は、留守中の粗相やいたずらに対しては完全に無視して下さい。基本ですが、現行犯でなければ叱っては
いけませんし、叱ったり、叱らなかったりしてもいけません。

<専用器具を使用する場合>
薬物の治療ではなく通常行動修正で対応する時に、深刻な状態が改善しない場合に補助として吠え声防止の首輪を
併用する方法もあります。ただし、これも補助として考えて下さい。付けたからすぐ改善出来ることは稀です。

他の問題行動(通常攻撃性など)が起きる場合もあり、過信するとすぐに慣れてしまってまた吠えるなどと、
より問題行動を複雑化させてしまうこともあります。必ず状況を把握して、あくまで「補助」としてお使い下さい。
アレルギー反応が無いかも注意が必要です。

<仔犬夜泣き>
仔犬は本能で群れから離れると、鳴いて知らせますがこれは犬としてごく自然なことです。
そうすることにより、母犬に見つけられ戻され生命の危機を脱するのです。
この夜泣きの対処として、来たばかり仔犬は貴方の部屋で一緒に寝かせることを勧めます(ゲージ内)。
クンクン鳴いたら原因を見つけて下さい。
トイレか? 水はあるか? 体調の変化はないか?などをチエックしてあげて下さい。
理由のない夜泣きであれば、母犬がするように短く鋭く「静かに」と声をかけてください。
母犬は皆さんが想像する以上に仔犬には厳しく接しています。(そうでなくては自然界では生きていけないから?)
まだ鳴き続けるようなら無視しましよう。必要以上にかまうことはしないことです。
寝る直前には良く遊んであげて、肉体的・心理的にも満足させてあげることです。
そばで寝ることで貴方の気配が仔犬の子守唄となるのです。

<本能としての原因>
人の発声可能範囲は80〜1100へルツの音域であるのに対して、犬は452〜1000ヘルツと狭く、猟犬は
狩りで獲物を追い立てるのに都合がいいように、よく吠える犬を選別して繁殖、改良したため、作出当時は吠える
犬が良犬でした。今では逆にコンパニオンドックとして、吠えない温和なライン(血統)を維持した繁殖が行われて
大人しくおちついた子達が増えてきました。
吠えるというのは犬にとっては正常で自然なコミュニケーション手段です。本来の意味は,葛藤を解決したいという
内在性の必要性,食物や社会的接触に対する本能的欲求,あるいは不安のあらわれとしての行動です。何らかの原因
が吠えることと関連づけられると,吠えたいという衝動がさらに高まり、かまうことにより犬の吠えたい欲求に拍車
をかけてしまい、吠えるという行動に対して報酬を与えている場合がほとんどです。

<飼い主がする自己診断と改善方法の選択>
吠える原因診断はどんな事例でも,その問題の今までの経過,特にその問題の起こる状況に基づいて下されます。
吠えた時の飼い主の反応と、飼い主の行動に対する犬の反応も,診断には重要なファクターです。
調教師に相談にいっても、吠える行動のなかに複数のタイプのものが含まれていますから、内面からの欲求行動
から飼い主のいる時に起こることも多いので,非常に矯正が難しいこともあります。環境のいろいろな刺激があまり
にも乏しいと、人の姿や声といったような、ささいな刺激に対してもすぐ興奮して吠えてしまうことになります。
飼い主に向かって吠えたり鳴いたりする場合ですが、いる場所の広さや自由度には問題がなくても、かまってもらう
時間が不足だと、飼い主のいる方に向かって吠えたり鼻を鳴らしたりすることがあります。この場合は、飼い主の
注意を引くことが目的なので、飼い主が留守の場合は一切声を出さないことすらあります。
要求行動には、おやつ・散歩・食事の催促、だっこしてほしい、遊んでほしいなどいろいろです。これも放っておくと
体当たりしてきたり、前足をかけたり、あま噛みしてくることもあります。このように要求が強くなるのは、飼い主や
家族に対する優位性攻撃の一歩手前の段階であることがあるので注意が必要です。
また、飼い主が留守のときに吠えたりするのは、前項でご説明した「別離不安」が原因であることがあります。
これは、飼い主と別れる孤独感から強い不安が起こり、普段は決してすることのないようないろいろな問題行動を
してしまうことです。分離不安のために起こる行動は、実は吠え続けることに限らず、犬によってさまざまで、
トイレでない場所でそそうをしたり、やたらとあたりのものを噛みちぎったりもします。
ただし、こうした行動が飼い主の留守中に起こるからといって、すべてが「分離不安」ではありません。
犬の分離不安はひろく知られることなり、留守中にこういうことが起こるとすぐに分離不安と考えがちですが、
「別離不安」ではなく、ふつうは前記の「要求行動」もしくは「欲求不満」からが多いようです。

<犬への指示・コンタクト>
犬が吠えている時に「静かに」という言葉に応じて吠えるのを止めさせるようにすることが目的ですから、吠える時
に即座に「静かに」と言い,犬を側へ呼んで「座って待て」をさせることが出来れば完璧です。
言葉で言うのは簡単ですがなかなか困難な事です。
ほめるが90%でしかるが10%とは言いますが、最も重要なのは%が少しの「しかる」方法と効果です。
それには「タイミング」「性格の個体差に応じた罰」「ほめるとしかるのメリハリ」がポイントとなります。
これが出来てはじめて、「ほめることの効果」が発揮され報酬を与えられるのであるということが学習出来るように
なります。訓練を行う時にはこの点を注意して下さい。

<しかる・罰の選択>
このことについては、私個人としての意見を記すものとします。(前項にもご紹介しました内容ですが)
吠えると電気ショックを与える首輪というものもが存在します。この首輪は、イギリスでは法律で使用が禁止されて
いますが、日本では販売され使用する飼い主もいます。電気ショックというのは、動物にとってはどんな痛み・刺激
よりも強く恐ろしいものだそうです。20世紀半ば頃まで、心理学の研究のため、実験室で犬や猿などの動物に電気
ショックを与え、動物の行動がどのように変わるか生体実験をしていたそうです。動物たちは、何とかして恐ろしい
ショックを回避しょうと、自閉症のような行動をとるしかなかったと思います。耐えがたい恐怖とパニックの状態の
条件下でそれは想像するのも嫌なぐらい悲惨な状態だったでしょう。犬がコミュニケーションをとるために吠えると
電気ショックがくるのですから、「吠えたい」と「恐ろしい」の問に挟まれ気の狂いそうな葛藤状態になるはずです。
電気ショックの首輪のような残酷な方法は、たとえそれにより吠え声が出なくなったとしても、愛犬に絶えまない恐怖と
苦痛を与えます。どうぞ、そんな残酷な方法を選択しないであげて下さい。
犬は飼い主を選択出来ないのですから・・・。

■■いろいろなことを書いてきましたが、改善への最も良い方法は貴方の忍耐と愛情です。

そのことを充分に理解してあげてください。皆さまの愛犬たちがいつも幸せでありますように。■■

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