<噛むことの学習>
まず私たち人間からの観点で、「噛むこと」を止めさせることは難しいと思って下さい。
なぜなら、前記のごとく「噛むこと」は自然な行為なのですから、人間の都合だけで理解させずに
叱るだけでは、成長期なのに性格を歪めてしまう可能性があります。さらに「吼える」でご説明した
ように叱る私たちの反応を期待し、楽しむようになる子もいますからこちらが興奮することは避ける
べきです。人間の子供にも性格があるように、仔犬たちにもそれぞれ違う性格がありますからここで
書かせていただく方法はあくまでもひとつの成功例だとご理解下さい。
この項の前書きに書きましたように、「吸う」から「噛む」へ移行する時の母犬の行動がこの問題を
改善する鍵となります。歯のない仔犬たちは、ただひたすら乳房を「吸う」ことで成長し、「吸う」
と寝るをくりかえします。口も「吸う」ことだけに使われ、まだ「噛む」ことはほとんどしません。
そうするうちにやがて、ちっちゃな「牙」が生えてくると授乳後に自然と「カミ・カミ」をするよう
になります。対象物は自分の足であったり、兄弟のしっぽなんかをさかんに噛むようになって行きます。
そして、授乳時に母犬の乳房にまで歯があたるようになります。そのころから母犬は授乳を嫌がり
逃げるようになって、逃がすまいと吸い付く子犬が乳房に「牙」をたててしまいます。
時期の母犬の乳房はかわいそうになるぐらい幼い歯で傷が付きます。はじめは我慢していますが、
痛みが限界をこえると母犬は全身を震わせ叱ります。母犬によりますが、躾けの厳しいお母さんは
人間もびっくりするような声を出し叱ります。幼い脳にも母の怒りがわかるのかすぐ静かになって、
母犬に媚びるしぐさをみせます。残念ながら、彼たち...彼女たちも一度では覚えずにしばらくは
「噛む」→「叱られ」→「反省」をくりかえし、徐々に「噛む」ことによって他に及ぼす影響を
理解するようになります。他に牙を見せることが威嚇になることや、噛むことにより他に与える
ダメージを体感します。母と子の関係であってもなかなかの忍耐を必要とする教育ですから、まして
人間の都合に合わせた「躾け」は努力が絶対だと思って下さい。
[理解させるコツ]
「噛む」を我慢させることが難しいことや、母犬の忍耐力ある躾けと仔犬の学習能力の程度を理解
していただいたと思いますので、次はその回避・抑制法を書いてみます。
@どのような方法をおこなっても、同じ方法で繰り返し学習させること。(忍耐強く)
Aあまがみ等をしたらタイミングよく叱り、咬んでもよいおもちゃなどを与えて気をそらす。
B仔犬のまわりには、咬んではいけないものや危険なものは置かないこと。
C歯ならびやあごの発育・ストレス除去のためにおもちゃは与えるが飽きさせないようにする。
(おもちゃは仔犬の大きさに合わせて大好きなおやつの匂いなどを付けてもよい)
D日ごろから口内を見ても嫌がらないようにし、歯のぬけ変わり時などにストレスの原因となる
異常がないか確認する。(最も重要で難しいことですが・・・)
E可能な限り仔犬とスキンシップをおこない、甘やかさずに互いの信頼関係と上下関係を学習させて
寂しさからする「ひとり遊び」をさせないようにする。
F刺激物等を使用しても飛躍的な改善は望めず、タバスコなどは仔犬の臓器の機能障害をひきおこす
可能性があるので使用しない方がよい。(アレルギー反応も注意)
G留守番の時に限ってする問題行動は5と6を注意して仔犬と接すると改善する場合が多い。
H退屈が食糞のきっかけにならないようにゲージ内に「躾け用おもちゃ以外」を入れておく。
(ロープ・タオル・牛つめなど、これも出来るなら日によって入れ替えて飽させないように)
Iひどい攻撃性が改善されない場合、投薬を必要とする可能性があるので、獣医さんに診断を
仰ぐことも一つの方法。
★次回は、マーキングについてです★