TOPICS CORNER 製作担当 河井 継之介

トピックス151号 08/03/01発行

海外ファンドと税金2008年版No.2・保存版
元本確保型ファンド(米ドル建て・ユーロ建て)」に投資されているほとんどの方は、bondsという形で保有されています。
bondsとは「債券」です。そして「元本確保型ファンド」の一つである「Man IP-220Limited」の目論見書の「Coupon(クーポン)」 の欄には「当債券はクーポンがつかない」(参考訳)と書かれています。
そこで、「元本確保型ファンド(米ドル建て・ユーロ建て)」は「ゼロクーポン債」とみなすという見解と、 「元本確保型ファンド(米ドル建て・ユーロ建て)」の投資対象からみると、「証券投資信託」ともとれる。
このように、見解がわかれるのでは投資されている方からみると困る。
今回は外国籍投資信託の法務に詳しい弁護士さんの指導のもとでより妥当と考えられる判断に迫ってみました。
まず、「外国投資信託」か「外国投資法人」かという問題です。
元本確保型ファンドの名前には、「Limited」「Ltd」という言葉がついています。これは「有限責任会社」を意味します。
つまり法人であると考えられます。これは目論見書上でも確認できます。
「Man IP-220Limited」の目論見書4ページには、
[マンIP220リミテッドは、1996年8月9日の会社法に準拠した投資持株会社として、バミューダに有限責任で法人化されている。 会社は1996年10月1日付の目論見書の条項に従って、オリジナルボンドを発行した。]
したがって、ファンド名に「Limited」「Ltd」と付いている元本確保型ファンドは「外国投資法人」であると考えられる。
さて、「外国投資法人」であるとすると、「元本確保型ファンド(米ドル建て・ユーロ建て)」も「ADP」などと同様「株式等」 に該当するのでしょうか?
ここで判断するにあたっての基本は、投資家の方が投資しているのが「shares」なのか「bonds」なのかという点です。
日本語にすれば、「株式」なのか「債券」なのかということです。
「ADP」などの場合、投資されている方の契約書(Contract note)をみていただくと、投資されているのはshares=「株式」です。
それに対してほとんどの「元本確保型ファンド(米ドル建て・ユーロ建て)」の場合は、bonds=「債券」です。
それは「Man IP-220Limited」の目論見書30ページにも下記のように記述されています。
[法人化
会社は1996年8月9日に会社法に準拠してバミューダで有限責任の投資会社として法人化された免除会社である。会社の定款と付随定款が組織を制定する。
(中略)
会社が設立し、法人化された主たる目的は、
(a) 投資持株会社としてのビジネスを運営し、その目的に従ってボンド(またはその他の債務受益権)を発行または募集、販売、提供し、 かつボンド(またはその他の債務受益権)を変更または解約、買取をする。
(b) ボンド(またはその他の債務受益権)発行による収益をゼロクーポン米国政府債券、または会社法によるところに係らない企業のゼロクーポン預託や株式を取得することに用いる。
] ですから、大半の「元本確保型ファンド(米ドル建て・ユーロ建て)」の場合、それは「債券」に該当すると考えられる。
「元本確保型ファンド」でも後で出てくるような豪ドル建て・NZドル建てのものはshares=「株式」ですから、個別に判断する必要がありますが。
「外国投資法人」が「債券」を発行することもあるのは、「投資信託及び投資法人に関する法律」第2条23項において「外国投資法人」について記載されている中で、 「投資証券又は投資法人債券に類する証券を発行する」と書かれていることからも明らかです。
そして、弁護士さんによれば、「投資法人債券」は日本の税法上「債券」として取り扱われることになると思うとのことです。
次にこの「債券」が「割引債」に該当するか否かです。
先ほど述べたように、この「債券」にはクーポンが付きません。
クーポンというのは「債券」の利息部分のことで、クーポンが付かない「債券」は「ゼロクーポン債」と呼ばれ、通常は「割引債」を意味します。
利息部分がない分、債券自体の価格が割引されているからです。
そして、「割引債」に該当するか否かは税法上極めて重要です。
なぜなら、次の「租税特別措置法第37条の15」の通り、「公社債」の譲渡所得には所得税が課されませんが、「割引債」の譲渡所得だけはその例外となるからです。
[租税特別措置法第37条の15(公社債等の譲渡等による所得の課税の特例)
次に掲げる所得については、所得税を課さない。
一 公社債(中略)並びに公社債投資信託、(中略)の譲渡(中略)による所得
] [租税特別措置法第37条の16
(割引の方法により発行される公社債の譲渡による所得の課税の特例)
次に掲げる所得については、前条第一項の規定は、適用しない。
一 割引の方法により発行される公社債で国外において発行されるものを国内において譲渡したことによる所得として政令で定めるもの
二 利子が支払われる公社債で割引の方法により発行される公社債に類するものとして政令で定めるものを国内において譲渡したことによる所得として政令で定めるもの
三 国内において割引の方法により発行される公社債で政令で定める者により発行されるものを譲渡したことによる所得として政令で定めるもの(後略)]
上記では「ゼロクーポン債」は「割引債」で、その場合の税法上の解釈について説明しております。
しかし、大切なのは実態です。
「元本確保型(米ドル建て・ユーロ建て)」は利息部分を割引された債券なのでしょうか?
このファンド(この債券)の価格が運用の成果を反映して上下することは、投資されている方ならご存知でしょう。
利息部分を割引された債券価格が満期時の100に向けてじわじわ推移していくような「割引債」とは全く異なります。
そのことは、「Man IP-220Limited」の目論見書11ページの「The Trading Subsidiaries(トレーディング子会社)」及び それに続く「Valuation(評価)」の記述でも確認できます。
[トレーディング子会社
ボンドのための会社のすべての投資戦略はトレーディング子会社を通じて行われる。トレーディング子会社とは、 米ドルクラスボンドは「ManIP220米ドルボンドトレーディングリミテッド」、そしてユーロクラスボンドは「ManIP220ユーロボンドトレーディングリミテッド」 である(後略)。]
[評価と報告
評価
いかなる評価日における各クラスのボンド毎のそれぞれの基準価格は、評価会社によって計算される。計算は評価日における各ボンド口座の評価を各クラス内の発行済みボンド数で割った数字に等しい(後略)。]
実はこういう債券を「パフォーマンス債」あるいは「パフォーマンス・リンク債」と呼び、日本の証券会社でも販売されているものがあります。
「パフォーマンス債」の値動きは運用次第ですから当然通常の「債券」のように安定的ではありません。 しかし、「『株式』か『債券』かどちらかに区分しなければならないので、『債券』に分類されることにならざるをえないのでしょうか」というのが、 外国籍投資信託の法律に精通されている弁護士さんの見解です。
なぜなら、「債券」に関する税法の定めは、上記の公社債であるか、その例外である「割引債」であるかしかなく、「所得税法」に定める「公社債」の定義は極めてシンプルなものであるからです。
[所得税法第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(中略)
九 公社債 公債及び社債(会社以外の法人が特別の法律により発行する債券を含む。)をいう。]
したがって、これが一番判断が困難なファンドではありますが、「元本確保型(米ドル建て・ユーロ建て)」 のほとんどは、「割引債」ではに「公社債」に該当。
なお、上記のとおり「公社債」の譲渡所得は原則非課税ですが、「償還差益」は雑所得として総合課税されます。
通常「償還差益」とは満期まで保有した場合の利益を意味しますが、満期前に売却した場合の利益も税務署によっては「償還差益」とみなすことがあります。
なお、「元本確保型ファンド(豪ドル建て・NZドル建て)」については、「会社型投資信託」、「外国投資法人」の投資証券であると考えられ、よって、 「株式等」に該当。上場の事実は認められません。
海外ファンドが、上場ではなくとも「株式等」と認められた場合は、本則通りの税率(20%)となります。
さらに、この「株式等」が「上場株式等」と認められた場合には、期間限定で税率が10%になります。
「上場カビ式等」についての優遇措置は、「租税特別措置法」第37条に下記のように記されています。
租税特別措置法第37条の11
[上場株式等を譲渡した場合の株式等に係る譲渡所得等の課税の特例]
居住者(中略)が、平成15年1月1日から平成20年12月31日までの間に第37条の10第2項に規定する株式等でその設定に係る 受益権の募集が公募により行われたものの受益権(中略)の譲渡のうち次に掲げる上場株式等の譲渡をした場合には、 当該上場株式等のこれらの譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得(中略)に対し課する所得税の額は、 [第37条の10]第1項前段の規定にかかわらず、上場株式等に係る課税譲渡所得等の金額の100分の7に相当する額とする。
一号 金融商品取引法第2条第9項に規定する金融商品取引業者または同法第2条第11項に規定する登録金融機関への売委託により行う上場株式等の譲渡
軽減税率を適用させるには金商法上の「金融商品取引会社」を通じて売買された上場株式等でなければなりません。
「金融商品取引業者」とは内閣総理大臣への届出を行っている者をいい、証券会社などを営む者をいいます。 「登録金融機関」とは銀行、共同組織金融機関その他の政令で定める金融機関をいいます。
海外ファンドは、シンガポールにあるファンド事務取扱会社を通じて売買したものです。
この会社は日本で金融商品取引業者には該当しないと考えられるので、税務署によっては軽減税率の適用外と判断するところもあります。
海外ファンドについてはまだ税務署での見解は固まってはいないようなので、軽減税率を適用したい場合は地元の税務署に判断を仰ぐのが賢明です。
参考までに、「上場株式等」の売却益は、昨年の終わりに、本則は20%(所得税15%、住民税5%)のところ、 新しい特例により、以下の条件で10%(所得税7%、住民税3%)となることが決まりました。
[上場株式等の譲渡益
 
これまでの優遇措置 新しい決定
2008年(平成20年)12月31日までは、売却益の10% 2008年(平成20年)1月1日〜2010年(平成22年)12月31日までは、売却益のうち、500万円以下の部分は10%
 
これまでの優遇措置 新しい決定
2009年(平成21年)12月31日までは、配当の10% 2009年(平成21年)1月1日〜2010年(平成22年)12月31日までは、配当のうち、100万円以下の部分は10%
海外ファンドの税金は儲けが確定した時に確定申告しますが、ロイヤル倶楽部で情報提供している海外ファンドは分配金がでませんから、 売却した時のみです。
<税金を計算する時に役立つ書類>
@ 投資資金を預けていた銀行の通帳<投資元本額>
A 外国送金依頼書兼告知書の写し<投資元本額、為替レート>
B 買付時のコントラクトノート<約定日、保有口数>
C 解約時のコントラクトノート<約定日、解約口数>
D 解約金を受け取った銀行の通帳<着金日、解約受取金額>
<外貨を使って買付、あるいは外貨のまま解約金を受け取った場合>
最近多いのですが、外貨のままで買付あるいは外貨のまま解約した場合、 適切な為替レートを用いて円貨に換算しなければなりません。
ここで気になるのは、「いつの日の為替レートを使うのか?」です。
海外ファンドの売買にはたくさんの日付がかかわります。
<買付時>
@ (手元にもともと持っていた)外貨を以前買った日
A 手元にある日本円を外貨に換えた日
B 海外送金を実施した日
C 海外ファンドの管理銀行に着金した日
D 海外ファンドの買付が約定された日
<解約時>
E 海外ファンドの解約が約定された日
F 解約金が引き渡された日(ファンド会社から返金の送金がなされた日)
G 解約金が自分名義の銀行口座に着金した日
H (外貨で解約金を受け取った場合)後日、解約金を日本円に戻した日
<乗換時(スイッチング)>
I 乗換元のファンドの解約の約定日
J (為替の交換がある場合)管理銀行が為替交換を実施した日
K 乗換先のファンドの買付の約定日
[租税特別措置法第37条の10関連通達
「外貨で表示されている株式等に係る譲渡の対価の額等の邦貨換算」
10−8 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算に当たり、株式等の譲渡の対価の額が外貨で表示され当該対価の額を 邦貨又は外貨で支払うこととされている場合の当該譲渡の額は、外貨で表示されている当該対価の額につき金融商品取引業者と株式等 を譲渡する者との間の外国証券の取引に関する外国証券取引口座約款において定められている約定日におけるその支払をする者の 主要取引金融機関(その支払をする者がその外貨に係る対顧客直物電信買相場を公表している場合には、 当該支払をする者)の当該外貨に係る対顧客直物電信買相場により邦貨に換算した金額による。なお、取得の対価の額の邦貨換算については、 対顧客直物電信売相場により、上記に準じて行う。]
つまり、買付時には約定日の「TTS(対顧客直物電信売相場)」を用い、売却時には、約定日の「TTB(対顧客直物電信買相場)」を使います。
銀行で「何年何月何日の日本円と米ドル(該当する外貨)の為替レートのTTS(あるいはTTB)を教えて下さい」と言えば、調べてくれるでしょう。
通達にあるような「その支払をする者の主要取引銀行」つまりファンドの管理銀行からもらえることはまず難しいでしょう。
複数の銀行に中から最も有利な為替レートを提示してくれた銀行の公表レートを使っても良いということです。
邦貨換算に関する通達によると、買付時はD、解約時はEということになります。
あるいは、乗換(スイッチング)をした時は元ファンドの買付時がDで、元ファンドを乗り捨てたときであるIになります。
約定日とはコントラクトノートに記載されている「Dealing Date」です。
銀行によっては「TTSやTTBはなく、TTM(仲値)しかない」といわれることがあります。
いずれにしてもわからない、不明な場合は税務署に相談下さい。
申告時期のもんだいですが、12月末解約と言っても、所得税法基本通達第36条第12項には譲渡所得の収入すべき時期について、 「譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日」と定めています。
資産の引渡し=送金及び着金は当然年明けですから、所得が確定したのは翌年(2008年)ということになります。
よって、2009年の3月15日までの申告義務が発生します。
上記記事はロイヤル資産クラブのレポートより掲載しています。

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