■2018年10月号

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バイオジャーナル

ニュース



●ゲノム編集
●厚労・文科省がヒト受精卵へのゲノム編集を容認

 9月28日、厚労省と文科省の合同有識者会議(厚労省の厚生科学審議会科学技術部会のヒト受精胚へのゲノム編集技術等を用いる生殖補助医療研究に関する専門委員会と、文科省の科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会の受精胚へのゲノム編集技術等を用いる研究に関する専門委員会)が開催された。会議では、ゲノム編集技術などによる、ヒト受精卵への応用を禁止するのか、容認するのか、どこまで容認するのかを検討してきた。第4回目の今回、指針案がまとめられ、研究に限定して人間の受精卵への応用を容認した。これまで認めなかった、人間の受精卵に対する遺伝子操作を容認したのである。解禁したことで、将来的には全面解禁の可能性を切り開いたといえる。
目的は生殖補助医療で、扱う受精卵は不妊治療の余剰胚に限定する。人や動物の体内に戻すことは禁止する。研究機関は倫理委員会を設置し審査するとともに、国も倫理委員会を設置し確認する。基本的に研究に関する情報は公開される、となっている。


●ゲノム編集大豆、米国で市場へ

 米国ケイリクスト社は、開発したゲノム編集大豆が今秋収穫され、高オレイン酸大豆油として販売される、と発表した。米国では、ゲノム編集ナタネに次ぐ収穫である。この大豆について米農務省は、GMOではないので規制しない。〔Calyxt 2018/10/4〕


●遺伝子ドライブ技術でケージ内の蚊が全滅

 ゲノム編集の仕組みを遺伝子に組み込み、次世代以降に受け継がれるようにした「遺伝子ドライブ技術」で改造した蚊を用いて、ケージの中の蚊を死滅させる実験が成功したと、英国ロンドン王立大学のアンドレア・クリサンティらの研究チームが発表した。「ネイチャー・バイオテクノロジー」オンライン版に掲載された。〔Nature Biotechnology 2018/9/24〕
●遺伝子組み換え作物
●グリホサートが抗生物質耐性菌を増やす

 最新の研究によって、除草剤グリホサートやジカンバが抗生物質耐性菌を増やすことが示された。これらの除草剤がある時と無い時を比較したところ、10万倍のスピードで抗生物質耐性菌が増えていた。実験を行なったのはニュージーランド・カンタベリー大学教授ジャック・ハイネマンらの研究チームで、「抗生物質耐性は抗生物質だけがもたらすのではなく、抗生物質と化学物質の組み合わせが大きい」と指摘している。論文は「マイクロバイオロジー」163号に掲載された。〔Microbiology 163,1791-1801〕


●グリホサートがミツバチの死や崩壊をもたらす

 ミツバチの死や群れの崩壊にグリホサートが関係していることが示された。グリホサートがミツバチの腸内細菌にダメージを与え、抵抗力を殺ぐのがその理由である。テキサス大学オースチン校のエリック・V・S・モッタらの研究によると、ミツバチには成長を促すための独特の腸内細菌叢があり、それが影響を受けると病原菌に対する抵抗力が奪われ、死亡率が上昇するという。ミツバチをグリホサートに曝露したところ、主要な腸内細菌8種類の内4種類が大幅に減少した。その内1種類は危険な病原菌から防ぐ重要なものだった。この4種類の病原菌が減少したミツバチの死亡率は高かったという。実験結果は米国科学アカデミー(PNAS)誌に掲載された。〔PNAS 2018/9/24〕


●対象ペットフード全製品からグリホサート検出

 コーネル大学のブライアン・リチャーズらの研究チームが、ペットフードも除草剤グリホサートに汚染されていることを明らかにした。18種類のペットフードを分析した結果、すべてから1キログラム当たり80〜2000マイクログラムのグリホサートを検出した。そのうち1製品はGMOフリー表示だった。研究者は、非GMO飼料へのGM汚染を防ぐ必要がある、と指摘している。この調査は、持続可能な未来のためのアカデミック・ベンチャー基金のためのアトキンソン・センターの助成を受けて行われ、『環境汚染(Environmental Pollution)』に掲載された。〔Technology Networks 2018/10/2〕

●iPS細胞
●iPS細胞でヒト卵原細胞を作成

 人間のさまざまな臓器や組織に分化できるヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、卵子の大本の細胞である卵原細胞が作成された。作成したのは京都大学教授斎藤通紀らの研究チームで、9月20日付サイエンス誌オンライン版に掲載された。研究チームは、これまでマウスでiPS細胞から卵子を作成し、受精させ、次世代を誕生させているが、ヒトの卵子の基となる細胞を作成したのは初めてである。〔東京新聞 2018/9/21〕

●省庁動向
●消費者庁がGM食品表示変更の説明会開催

 消費者庁はGM食品表示を変更するにあたり、東京を皮切りに仙台、大阪、福岡、札幌、岡山、名古屋で説明会を開催し、同時に一般からの意見を募集した。今回の変更では「遺伝子組み換えでない」あるいは「遺伝子組み換え大豆不使用」などと表示できる範囲を検出限界値(ほぼ0%)に引き下げることが提案されている。この点については、消費者のみならず豆腐業界や総合商社などの反対も根強い。

●企業動向
●カネカが生分解性プラスティックの原料を増産

 化学メーカーのカネカが、今年8月に生分解性プラスティックの原料「カネカ生分解性ポリマーPHBH」の生産能力を年間1000トンから5000トンに引き上げ、10月にはさらに2万トンに増強すると発表した。汚染が深刻化するマイクロプラスティック問題を受けて、生分解性プラスティックの世界需要は2022年には100万トンを超えると見込まれている。〔カネカ 2018/10/15〕