■2003年9月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物

カナダの科学者がGM小麦に警告

 カナダ小麦委員会(CWB)は7月9日、カナダ・マニトバ大学のルネ・ヴァン・アッカーら3人の植物学者がまとめた、モンサント社の除草剤耐性小麦は厳しい制約下で栽培しないと種子汚染など環境に及ぼす影響が大きいとする結論を発表した。とくに農家の自家採種による在来種作付けなどに影響が出る、としている。
〔Grainnet 2003/7/9〕

GMパパイヤ栽培に警告

 ハワイのパパイヤ栽培農家メラニー・ボンデラがタイ・チュラロンコーン大学のセミナーで、GMパパイヤは環境を破壊し経済効果もない、と警告した。米国政府は1997年にハワイでのGMパパイヤの栽培を認可している。このパパイヤについては現在、食品としての安全性審査が日本では続いているが、アレルギーを引き起こす懸念があり、いまだ認可されていない。
〔Hoover's Online ビジネスニュース 2003/7/4〕

モンサント社のGMナタネに問題判明

 バイオ産業界がGM食品推進を目的として、FSANZ(オーストラリアとニュージーランドの食品基準局)に提出していた研究報告に、健康を損ねる可能性のある問題点があった。1995年と1996年にモンサント社がGMナタネを用いて行った動物実験で、ラットの体重が減少したにもかかわらず内臓の重量が増加していた。市民団体「遺伝子工学のない食物と環境・ニュージーランド」は、この実験は英国で行われたプシュタイ博士の実験結果を裏づけるものだと指摘している。 〔GE Free NZ 2003/8/1〕

東洋紡などがGMサツマイモ開発

 東洋紡総合研究所、三重大学生物資源学部、石川県農業短期大学はポリアミン合成遺伝子を導入、低温や塩への抵抗性を高めたサツマイモを共同開発した。ポリアミンそのものをサツマイモに添加しても、同様の性質をもたせる実験結果が出たとしている。温暖な地域でしかできないサツマイモの栽培拡大につながるとしている。
〔日経バイオテク 2003/7/21〕

パラグアイでGM大豆作付け拡大

 南米では、アルゼンチンから近隣諸国へGM大豆の種子が密輸され、作付けが拡大している。すでにブラジルついては報告したが(本誌2003年5月号、7月号)、GM作物の栽培が禁止されているパラグアイでも広がり、GM大豆栽培は約5割の190万tに達していると見られる。
〔毎日新聞 2003/7/21〕

●牛成長ホルモン

モンサント社が新たな訴訟

 モンサント社は、米メーン州のオークハースト乳業が、乳牛に牛成長ホルモン剤を使用していないことを販売戦略にしているのは、モ社の製品に対する不当な中傷行為だとして訴えた。牛成長ホルモン剤は発がん性などの疑いがあり、欧州が米国産牛肉を拒否する要因になっている動物薬である。モ社は同時に、メーン州も提訴した。同州には「品質保証認証制度」があり、この認証を受けるには、牛成長ホルモン剤が使われていないことが条件になっているからである。 〔Cropchoice 2003/7/14〕


●遺伝子汚染

イタリアでGM品種混入


 7月12日、イタリア北部ピエモンテ州のエンツォ・キーゴ州知事が、381haの土地に作付けされたトウモロコシに遺伝子組み換え品種が混入したとして、廃棄を命じた。イタリアでは、野外でのGM作物の作付けは禁止されている。なぜGM品種が混入したかについては明らかにされていない。同国最大の農民組合は、この措置は「GM許容ゼロ政策」が貫かれたとして歓迎しているが、イタリア種子協会(AIS)は、すべての責任を種子会社に押しつけるものだとして反発している。
〔ABC newsnet 2003/7/12〕


●家畜伝染病

米国で新しいウイルス病の兆


 米国東海岸で致死性の馬の病気が拡大している。「トリプルE」と呼ばれるウイルス性の疾患で、脳神経障害を引き起こす。鳥が宿主で、西ナイルウイルス同様蚊が媒介する。人にもごくまれに感染し、致死率が高く、一命をとりとめても重い後遺症が残ることがある。6月21日にジョージア州で最初の犠牲者が報告された。ノースカロライナ州公衆衛生疾病担当者は、異常気象による降雨量増大で蚊の異常発生を招いたことが要因のひとつだ、と述べている。 〔New Scientist 2003/7/3〕


●遺伝子組み換え樹木
ニュージーランドでGMトウヒ植樹


 ニュージーランド北島の北部ロトルア近郊の森林研究所で、7月初旬にGMトウヒの植樹実験が始まった。トウヒはマツ科の大高木である。同国ではまだ、「認定木材」としてGM樹木は認可されておらず、現在認定するか否かをめぐって議論の最中である。市民団体「遺伝子工学のない食物と環境・ニュージーランド」のジョン・カラピエットは、樹木の寿命は長いため環境への影響が計り知れないことに加え、ニュージーランド産トウヒが輸出先から拒否されるなど木材貿易に支障が出る可能性がある、と指摘した。 〔GE Free NZ 2003/7/24〕


●表示問題

北京でGM食品表示始まる


 中国では2002年3月20日に遺伝子組み換え食品に関する表示制度が発効しており、7月21日に北京で全食品表示がスタートした。この日北京の農業局が調査したところ、GM表示のある食品は少なく、10種類のサラダ油だけだった。GM原料が用いられているにもかかわらず、「不使用」表示となっているものもあった。
 また、グリーンピース中国の調査によれば、32の食品企業が非GM食品しかつくらないと回答している。この中には、リプトン、リグレーなどの外国企業とともに、中国国内の主要醤油メーカーも含まれている。
〔中国ユースデイリー 2003/7/21ほか〕


ことば
*プシュタイ博士の実験結果
 1987年夏に発表された、英国ローウェット研究所アーパド・プシュタイ博士を中心に行われた、GMジャガイモを使ったラットの食餌実験のこと。GM食品の有害性を示唆する結果だったため、実験の信憑性などをめぐりGM食品推進側と反対側の応酬がいまなお続いている。公表の経緯などを理由にプシュタイ博士は同研究所から解雇された。

*ポリアミン
 単純タンパク質の一つ。種子の貯蔵タンパク質。