■2021年10月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●北米事情
●カナダ政府が新GMO規制ガイダンス発表
 カナダ保健省と食品検査庁(CFIA)は、ゲノム編集などの新遺伝子操作生物の食品や種子について、安全を守るための規制ガイダンスを作成した。そこでは大半の新GMOを政府の規制から外し、開発企業による自主的な評価だけでよいとした。市民団体は、これでは安全性を守ることができないとして反対を表明した。〔CBAN 2021/9/2〕

●環境中のGM動物の追跡方法
  カナダ・モントリオールにあるマギル大学の研究者Charles C.Y.Xuらが、環境中にいる動物がGMOかどうかをDNAレベルで追跡する方法を見つけた。環境中に逃げ出したり、放出されたGM動物をDNAから検出する。これはミバエやげっ歯類、魚などの動物が体外に出す排泄物の尿や唾液などからDNAを検出する方法で、研究者たちは環境DNA(eDNA)の効率的な検出方法だとしている。〔PLOS ONE 2021/8/26〕
●アジア事情
●インドから違法GM米製品が各国に輸出される
 インドから違法GM米粉が世界中に輸出されたことが明らかになった。輸出量は500トンに達している。EUのRASFF(食品・飼料のための緊急警告システム)が、6月と8月の2回、インドから輸入した米粉から発見した。この米粉は、米国企業のマース社の「M&Msクリスピー」という小粒チョコレートの原料として各国に輸出されている。EU以外にも、米国やイラク、カタール、トルコといった中東諸国にも輸出されていた。〔InfOGM 2021/9/8〕

●インドのBt綿の被害がさらに拡大
 インドのBt綿に、害虫ピンク・ボールワームの被害が広がっている。前号でお知らせした、マハラシュトラ州に続いてパンジャブ州で拡大している。以前からこの害虫による被害がひどかったため、2005年にBt綿が導入され、当初は減少したが、結局、以前と同じ状態になってしまった。〔Millennium Post 2021/9/1〕
●ゲノム編集
●発がん性が懸念される染色体破壊
 ゲノム編集技術の応用で「クロモスリプシス(Chromothripsis、染色体破砕)」がクローズアップされている。この現象は、オンターゲットと呼ばれるDNAの切断個所近辺で起こり、遺伝子治療に用いるゲノム編集応用技術の中で、安全上の大きな問題になっている。もっとも大きな懸念は、クロモスリプシスによる発がん性である。この問題は動物でも起き得るため、家畜や魚などで染色体破壊が起きることによる発がん性が懸念される。クロモスリプシスは同時に、新たな毒性やアレルゲンをもたらす可能性があることを示している。〔Nature Biotechnology 2021/7/15ほか〕

●ゲノム編集作物の種苗への表示
●ゲノム編集作物の種苗への表示と有機認証
 9月16日、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンなど市民団体の代表は農水省を訪れ、ゲノム編集などの遺伝子操作を行なった種苗への表示と、ゲノム編集作物を有機認証するのか否かについて、政府内での議論の現状について聞き取りと交渉が行われた。農水省の担当者は、これまで省内では種苗への遺伝子操作表示について検討したことがなかったが、市民の間で関心が強まったことから検討を開始した、と発言。また省内では、ゲノム編集作物を有機認証しないことは原則確認されているものの、該当食品がゲノム編集を行なったものかどうかを判断できる検証技術がないため、まだ保留状態にある、と述べた。現在、先進国の間で、ゲノム編集作物を有機認証しないと決定している国はカナダしかなく、同国に問い合わせしているところである、という回答だった。