■2024年6月号

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バイオジャーナル

ニュース


●ゲノム編集
●CRISPR/Casがもたらす新たなリスク

 CRISPR/CasがマイクロRNA(miRNA)の働きを壊すことが判明し、新たな危険性が明らかになった。miRNAとは長さが20〜25塩基の短いRNAで、それ自体は遺伝子として発現しないが、他の遺伝子の発現を調整する役割があり、成長、発生、ストレスへの対応など、さまざまな複雑な機能を調節している。そのためこのmiRNAの機能に起きた変化は、植物に大きな影響をもたらす可能性がある。Zhouら中国と米国の研究者が行なった研究で、miRNAにかかわる2つの遺伝子をノックアウトした結果、119のmiRNAと763の遺伝子の発現に変化が観察されたという。〔Testbiotech 2024/4/22〕
●欧州事情
●欧州議会が再びNGTsを可決承認

 4月24日、欧州議会は改めてゲノム編集技術を含む新しい遺伝子技術(New Genomic Techniques :NGTs)の容認を支持した。賛成336、反対238、棄権41だった。これに対して小規模農家の団体ヴィア・カンペシーナ・ヨーロッパ連合は、NGTsを対象とする特許の伝統的な種子への拡大など、知的財産権で重要な課題を未解決なまま承認したことを強く批判した。このままでは農民による種子の保存や使用、交換する権利が脅かされることになり、受け入れられないとの見解を発表した。〔European Coordination Via Campesina 2024/4/29〕

●欧州司法裁判所が加盟各国の産業優先の農薬評価を違法と判断

 欧州司法裁判所は、市民団体が提訴した農薬裁判に画期的な判決を下した。訴えていたのは農薬行動ネットワーク欧州(PAN Europe)で、2019年に農薬スルホキサフロル、ジフェノコナゾール、フルジオキソニルの再承認についてオランダの裁判所に提訴した。主な主張は、オランダの農薬の承認機関(CTGB)が、これらの農薬のリスク評価にあたって、内分泌かく乱作用とミツバチへの影響を評価していないことだった。2022年にオランダの裁判所は、欧州司法裁判所にその判断を付託し、このたび判断が示された。判決では、これまで加盟国が行なってきた産業優先の評価を違法とした。EUの構成国は、自国の承認に責任を持ち、他の国の評価に頼ってはいけないと指摘。また農薬の安全基準は市販の農薬製剤にも適用されるとした。〔Pesticide Action Network Europe 2024/4/26〕

●イタリアでゲノム編集イネの試験栽培始まる

 ゲノム編集で開発した「いもち病耐性イネ」の試験栽培が、今年中にイタリアで始まりそうだ。このイネは、同じ染色体上にある3つの遺伝子を壊している。さまざまな機能が含まれ、他の病気に対する抵抗性をもたらす遺伝子も壊している。またこの試験栽培がイタリアの稲作地帯で行われることへの警戒が強まっている。現在ヨーロッパでは、ゲノム編集作物のトマト、小麦、ジャガイモの野外試験栽培は、すべて規制が緩和されている英国で行われている。〔Testbiotech 2024/4/22〕