■2005年5月号

今月の潮流
News
News2
今月のできごと


今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る





























バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
米国で未承認GMトウモロコシの流通が発覚

 3月23日、米国大使館は農水省に対して、米国で未承認の殺虫性(Bt)トウモロコシ「Bt10」がスイス・シンジェンタ社より農家に販売され、収穫されたと報告した。これは前日3月22日にnature誌のスクープで明るみに出たためである。同社は昨年末には米国政府に報告していたが、両者ともこの事態を隠しつづけていた。2001年から2004年にかけて、9つの州で最大1万5000ha栽培されたが、米農務省、食品医薬品局、環境保護局はいずれも、食品としても環境上も問題ないとして製品回収を命じなかった。日本でもBt10は未承認であり、検出されれば積み戻し措置が取られることになる。だが、どのような形で検査が行われるかは未定である。
 2000年に未承認作物スターリンク混入事件が起きた。GMトウモロコシ「スターリンク」は、日本では未承認だったが米国では飼料用として承認され栽培されていた。今回は日本でも米国でも未承認のトウモロコシが栽培された初めてのケースで、より深刻な事態といえる。
 Bt10には、抗生物質耐性遺伝子として「アンピシリン耐性遺伝子」が用いられており、アンピシリン耐性菌の拡大が強く懸念されている。食品や飼料としての安全性も未確認である。

GMナタネは生物多様性に悪影響を及ぼす

 英国王立協会は、GM作物が生物多様性にもたらす影響について680万ポンド(12億5000万円)をかけて調査してきた。2003年10月16日には、春蒔きナタネ、テンサイ、トウモロコシの3つの作物の調査結果が公表された(本誌2003年12月号)。残された秋撒きナタネに関する結果が、3月21日に発表された。
 この調査の実験では、同じ作物のGMと非GM品種を、それぞれ実際と同様の条件で栽培し、雑草や昆虫、野鳥など野生生物に及ぼす影響を調べた。調査結果は、雑草の数に差は出なかったものの、GM品種が昆虫や小鳥の好む広葉雑種の減少をもたらし、蝶や蜂、小鳥の減少が確認された。実験結果は環境影響評価委員会によって評価され、政府のGM作物認可の参考となるため、英国でのGMナタネ認可は難しくなりそうだ。 〔FoE UK 2005/3/21〕

シンジェンタ社が新ゴールデンライス開発

 ビタミンAの前駆体であるベータカロチンをより多く含んだ「新ゴールデンライス」がシンジェンタ社により開発された。同社の研究者によると、以前のゴールデンライスのベータカロチンが1g当たり1.6μg/gであるのに比べて、新しく開発した品種は37μg/gあるという。これによって、ビタミンA摂取量が少なく効果が乏しいとされた批判を封じることができる、と同社は判断しているようである。
 旧ゴールデンライスは、ラッパスイセンの遺伝子3種類とエルウィニア菌(軟腐病菌)の遺伝子計4種類の遺伝子を導入していたが、今回はラッパスイセン遺伝子のひとつフェトエンシンターゼ(フェトエン合成酵素)遺伝子をトウモロコシ由来のものに変更している。〔New Scientist 2005/3/27〕

生物資源研がコエンザイムQ10産生イネ開発

 独立行政法人・生物資源研究所は、第2・3世代GM作物開発を進めているが、現在試験中の花粉症対策イネにつづいて、コエンザイムQ10産生イネを開発した。もともとイネがもつコエンザイムQ9産生能力を、GM技術で改造してQ10に変えたもの。コエンザイム(補酵素)Q10とは、高等生物の細胞内小器官であるミトコンドリア内でエネルギー生産に関与する生体分子である。最近、健康補助食品として話題になっている。

ブルガリアがEUに足並み揃えGM作物禁止へ

 ブルガリア議会は2007年にEUに加盟するために、EUの規制に沿って、リストに載ったGM作物の栽培、食品流通禁止を決定した。禁止されたGM作物は、タバコ、ワイン、綿、バラ、小麦、野菜などで、大豆、トウモロコシはリストから外された。また流通するすべてのGM食品に表示を義務づけた。 〔Science AFP 2005/3/09〕

GMアルファルファが初承認

 3月23日、生物多様性影響評価検討会総合検討会(環境省、農水省)は、モンサント社申請の除草剤耐性アルファルファ3品目(J101系統、J163系統、両者の掛け合せ) をカルタヘナ国内法に基づく第一種使用、すなわち野外栽培を許可した。
 また3月31日には食品安全委員会が、同じアルファルファ2品目(J101系統、J163系統)を、食品として安全であると確認した。これによって日本で初めてGMアルファルファが食品として流通する可能性が出てきた。

●豪州事情
オーストラリアでGM飼料使用中止

 オーストラリアの大手養鶏業者インガムズ・エンタープライゼズ、バーター・エンタープライゼズ、バイアーダ・ポールトリーの3社は、消費者からの強い要請で、GM作物の飼料使用を中止した。3社は合わせて年間4億5000万羽を市場に出荷している。グリーンピースが中心となった手紙、ファックス、電話での抗議活動が功を奏したものと思われる。 〔Wired news 2005/3/11〕

西オーストラリア州でGMナタネ栽培禁止継続

 西オーストラリア州議会選挙は与党の労働党が勝利し、GMナタネ禁止が継続されることになった。2月26日に行われた選挙の最大の争点は、GMナタネの栽培禁止継続であった。同州は日本に年間約160万トンのナタネを輸入している。禁止継続を訴えた労働党が勝利した背景には、主要生産物である小麦などにGMナタネの影響が出ることを恐れた州民の意思が働いたと見られる。


●北米事情
米国ミネソタ州がGMイネ禁止地区計画

 米国ミネソタ州政府は、先住民居住区ホワイトアースをGMイネの栽培を禁止する保全区に指定した。同州は湖が多く、ミシシッピー川の源流でもあり、古くから野生のイネが自生している豊かな土地である。先住民の人々はイネを主食としてきており、GMイネの影響を懸念していた。米国先住民運動の発祥の地でもあることから、環境保護の運動が展開され、栽培禁止地区指定になった。 〔Organic Consumers Association 2005/3/14〕

カナダの市民はGMOフリーゾーンを望む

 カナダのプリンス・エドワード・アイランド州は、GMOフリーゾーンを宣言する直前で足踏みしており、いまだに市民の意見を聞く作業を継続している。一方で、市民の間では、GM作物に対する批判の声が強まっていることが、グリーンピースの分析で明らかになった。それによると、カナダ人の58%、プリンス・エドワード・アイランド州住民の62%がGMOフリー宣言を望んでおり、ケベック州住民の64%がGMOフリーゾーンを支持している。 〔Greenpeace Canada 2005/3/30〕