進学したいと思う高校は、頑張れば入れるかもしれない。でも、落ちる可能性も高い。たとえ受かったとしても、ついて行けるだろうか。
こんな悩みを持つ中学生を何人も見てきた。しかし、実際には中学生の心は決まっていた。悩むのは保護者の方だ。
偏差値の高いA校と、A校より偏差値がやや低いB校に進学した4人の例を書く。中学時の成績は、概(おおむ)ねみんな同じ。
Zは負けず嫌いということはなかったが、努力家であった。塾であたって答えられなかった問題があると、2・3日のうちには必ず周辺を含めて復習をしていた。特に目立つ言動はなく、周りとうまくやれる性格だった。
高校に入ると宿題などに追いまわされて、自分のやりたいと思う勉強までは手が回らなくなった。それでも、宿題はできるだけ理解できるようにていねいにやった。理解できないものも多かったが、そういうものは暗記するしかなかった。不思議なもので、理解しようと頑張っても理解できないものは、その分だけすんなり暗記できた。はじめから暗記しようと決めたものは、なかなか覚えられなかった。
やることが多くて、いっそこと勉強なんてやめてしまおうかと思ったが、なんとか3年間が無事にすぎた。成績は、だいたい中くらいだった。
地方の国立大学に合格。現在教員を目指して勉強中。
負けず嫌いではあったが、喉元過ぎれば熱さを忘れるタイプ。熱しやすくさめやすい。言動は派手で、自分を主張するタイプ。中学では生徒会の役員もやっていた。
中学では、サボっていてもそこそこの点が取れた。ちょっと頑張れば満点に近い成績も取ることができた。しかし、高校に入って勝手が違うことに気がついた。宿題も多く難しい。理解できないものは解答を丸写して済ませた。そうしないと時間がなくなるのだ。英語の授業では、毎回ほど単語や連語の小テストがあった。この勉強は通学途中の電車の中で済ませた。毎回50%程度のできだった。
成績は3分の2程度のところだったが、自分は能力があるから、やる気になればすぐに3分の1まではいくと思っていた。しかし、マシンガンのように出される宿題と実力テストには、うんざりしてやる気をなくし、ずるずると時が過ぎた。実力テストには、与えられた参考書・問題集などから範囲が区切られ、そこを勉強するように強いられた。しかし、自分の身になるようには勉強できず、結局範囲を眺める程度にしかできなかった。
第3志望の私立大学に合格。合コンなどをして楽しい学園生活を送っている。
慎重な性格。あまり他人には流されない。人からは暗いと思われていたが、話してみるとそうではない。中2の途中までの成績は、そんなによくなかった。勉強する内容がすべて細切れの断片的なものだ、という認識があった。しかし、指導を受けることによって、1つのことが多くのことにつながっていることを理解した。そこからは、つながりを自分で探ることができるようになり、飛躍的に成績が向上した。
内申点が低いこともあり、無理をせずB校へ。A校に比べれば少ない宿題ではあったが、確実にこなしていった。英語の予習もやり、進んだ範囲の数学の問題集も少しずつやっていった。おもしろくない授業がほとんどだったが、内容は理解できた。
休日や放課後、周りは楽しそうに遊びまわっていたが、うらやましいことはなかった。充分遊ぶ時間は取れた。徹夜でゲームをやったと言う友達もいたが、そこまでしてやりたいとは思わなかった。クラブにも入り、そこそこ参加した。拘束が強いクラブではなかった。
成績はいつも学年7位以内に入っていた。望めば、ある程度の私大の指定校推薦の枠も取ることができた。しかし、結局公立大学を受験することにした。みごと合格して、現在はエンジニアを目指し勉強中。
周りに流されやすいタイプ。人気者だがお調子者でもある。ゲームには熱中する。
テスト前に、適当にやれば中の上はキープできた。単語の小テストなどは時々さぼり、何回か書かされる罰則をすることもあった。クラブにも所属。一時期は一生懸命にやったが、限界を感じ2年途中で退部。退部してから時間もできたが、友人などと楽しく遊び、勉強時間は以前と変わらず。
初めから私立にしぼり、第2志望の私立大学に一般入試で合格。本当の第1志望は、無理なことを悟り受験しなかった。中学校のとき、自分より成績の悪かったので、別の高校へ行った友人が、同じ大学に入ったことが、少し気に入らない。
※ボーダー(ボーダーライン・Border Line)
「境界線」または「境界線上の」という意味。受験界では、合格・不合格が分かれる点数(または偏差値)。
※偏差値
統計用語。ここでは学力測定の際のその学力の程度を表す。
ある1人の受験者の得点と平均点との差を標準偏差で割り、その値の10倍に50を加える。その受験者の全体に占める位置を知ることができる。