里中満智子01
「ABCれぽーと 恋の片道きっぷ」 (「週刊少年マガジン」1984年26号、36頁)

 はっきり言って、どうという作品ではない。里中満智子にとっても、まんが史的にみても、さしたる意味 があるとも思えない。古い雑誌を整理していて、たまたま見つけた短篇だが、問題は、何故、この時代に、 里中満智子が、こういうまんがを、「週刊少年マガジン」に、発表したのか?……という事だ。
(C)1984年;里中満智子;講談社  どいうまんがかと言うと、あまり冴えない男子高校生トリオが、隣のケバい女子大生にSEXの手ほどき を受ける……というだけの話だ。この女子大生がヤケ酒を呑み“そうなる”切っ掛けとなった失恋の場面の 陳腐さは、もう目を覆いたくなる程だ。ただ、少年誌で“C”までいってしまう まんがは当時(1980年代半ば)では、とても珍しかったのではないか。
 同じ雑誌に、大和田夏希「虹色town」が、同じ月の「月刊少年マガジン」に中西やすひろ 「Oh!透明人間」が、掲載されている。さらに、余談だが、この雑誌に《第32回新人漫画賞》の最終選 考に残った20編のラインアップが掲載されていて、その中に上村純子の名前が見える。(という事は、 彼女の衝撃的な作品群は、まだ世に出ていないのだ。(^^ゞ ) 多分、この頃を境にして講談社の少年誌は、 主に「月刊少年マガジン」を舞台にH路線へと転換して行く。
 ただ、その作品群は、エロまんがよりキワドイ描写をしながらも、決して“C” までは行かないエッチまんがだった。そんな時代の「週刊少年マガジン」に、里中満智子は どんな思いでこのエッチまんがを描いたのだろう。
 しかも、《第1回マガジン★コミック★カップ》のエントリー作品としての発表である。因みに、他の 9人の作家を名前だけ挙げると、大島やすいち、村生ミオ、楠みちはる、しげの秀一、柳沢きみお、 蛭田達也、(ここに里中満智子が入り)、小林まこと、中西やすひろ、ちばてつや、である。作品名は、 残念ながら資料がないし、記憶も殆どない。ただ、総て描下ろしの短篇だし、読者によるアンケート投票が 実施される舞台への発表である。
 あまり正確に覚えていないが、この頃かもう少し後か、里中満智子は「週刊少年マガジン」に連載をした ような記憶がある。その作品の記憶も(読んだ覚えはあるのだが)まるで残っていない。多分、その程度の 作品だったのだろう (^^ゞ。
 本来なら、《第1回マガジン★コミック★カップ》のエントリー作品を総て目を通した上で発言すべきだ ろうが、この小文で僕が言いたいのは、舐めるな、里中満智子! (^^ゞ である。エッチな少年まんがというものを、小手先だけで描いた作品、としか思えなかった。多分、他の 9人の作品はエッチ路線ではなかった筈だ。エッチ作品を描けば読者に受けるとでも思ったのだろうか。 何だかとても残念である。

(2002.02.03)
テキスト:「週刊少年マガジン」1984年26号(1984年6月13日発行、講談社)、36頁 (4色扉付)、《第1回マガジン★コミック★カップ》第7弾作品。


戻る            進む
タイトルページへ