第5章 長 編 と い う ロ マ ン

    梶山季之は、日本人としては珍しく、長編の書ける作家だ。
    いや"本質的に長編作家だ"と、言ったほうがよいのかもしれない。
    文壇への本格的デビュ−を果たしたのは書き下し長編『黒の試走車』だったし、そ のときには『スポ−ツニッポン』に「赤いダイヤ」を連載していたのだから、文芸も のといえども短編は影が薄くなる。オムニバス長編を含めたシリ−ズものは15あり、 本文中では(シ)を付しておいた。
    雑誌掲載中は独立した題名が付いているので短編かと思っていたら、そのうちに単 行本が出て、通読すると一貫した長編になっていた、という場合もある。『傷だらけの 競走車』や、没後に単行本化された『稲妻よ、奔れ』などがその例であり、『銀座ナミ ダ通り』『現代悪女伝』『わが鎮魂歌』なども同様なものといえよう。
    津村公を主人公とする一連の物語「産業ミステリ−調査資料avは、サンケイ新聞 社出版局から『虚栄の館』および『白い廃液』として刊行された。『梶山季之傑作集成』 (桃源社)では20巻と21巻に収録されているが、一部は別系で『夜の凶器』(廣済 堂出版)にも収録されている。
    代表的な長編は『梶山季之自選作品集』全16巻に入っているが、ここでも1題名 1件として登録しているので、物足りなさを感じられる向きがあるかもしれない。
    たとえば、オムニバス長編『せどり男爵数奇譚』は、桃源社版(昭和49年7月) とその豪華版(同年9月、限定出版伍拾部)、集英社版(1976年10月)、河出文 庫版(昭和58年2月)、夏目書房版(1995年6月)など5種があり、所蔵の限定 版には<せくな人生 どうせ浮き草 りん気はやめた>という揮毫と署名落款がある。 "せどり"を折り込んであるところがミソだろう。
    また、例の『巷説梶山季之』における「自選作品集を出すにあたって」のなかで、彼 は、<チボ−家の人々や大菩薩峠を上廻る(ただし、枚数においてである)大長篇を ものしようと考えている私>と書いて、大作への意欲を見せている。『週刊読売』に連 載されたあと単行本になった『血と油と運河』(昭和50年1月、集英社)なども、民 族の将来を描くポテンシャルは感じられるが、未完のライフワ−ク「積乱雲」が完成 していたら、まさに国民文学的な大作となったに違いない。
    ともあれ、平成11(1999(平成11)年までに出版された単行本343冊のう ち、短編集やノンフィクションなどを除いて整理した長編(シリ−ズものを含む)を、 Rの記号を冠して並べてみよう。
    内在している可能性と、パタ−ン認識機としての人間の能力を組み合わせれば、荒唐 無稽と思われる試みも実現可能かもしれないのだ。



    L001青い群像、集英社691130
    L002青いサファイア、講談社630921
    L003青い旋律、集英社700325
    L004赤いダイヤ(上・下)、集英社521210
    L005悪女の条件、光文社641215
    L006悪人志願、講談社660528
    L007朝は死んでいた、文藝春秋新社621120
    L008明日考えよう、桃源社750505
    L009甘い樹液(シ)、★サンケイ新聞社出版局641220
    L010甘い道草、中央公論社720725
    L011妖しい花園、集英社720130
    L012生贄、徳間書店670415
    L013一匹狼の唄、実業之日本社671220
    L014稲妻よ、奔れ、新潮社750815
    L015うぶい奴ら、祥伝社710425
    L016海の薔薇は紅くない、集英社640615
    L017エアー(前編・後編)、集英社701230
    L018男を飼う(鞭と奴隷の章・蛇と刺青の巻)、集英社690225
    L019囮、光文社640805
    L020お待ちなせえ(上・下)日本脱出編、光文社690420
    L021女の警察、新潮社670530
    L022女の斜塔(愛欲篇,復讐篇)、集英社641215
    L023怪女赤頭巾譚(単)、文藝春秋751010
    L024影の凶器、講談社640820
    L025梶山源氏(いろはの巻、ほへとの巻)、文藝春秋721101
    L026梶山好色機械学・根ピューだあ(シ)、徳間書店710305
    L027梶山季之とその世界、山と渓谷社770415
    L028梶山季之の快美感覚、KKベストセラ710315
    LO29関白亭主・志願(エアー前編)、集英社720520
    L030かんぷらちんき、徳間書店721104
    L031傷だらけの競争車(単)、光文社671001
    L032奇妙な人たち、講談社750904
    L033虚栄の館(シ)、★サンケイ新聞社出版局630715
    L034銀座ナミダ通り(単)、徳間書店741010
    l035銀座遊侠伝(単)、文藝春秋700920
    L036雲か山かー若き日の頼山陽、集英社741215
    L037雲耶山耶「中國新聞」600111
    L038暗い花道(シ)、文藝春秋新社650120
    L039狂った脂粉、光文社660215
    L040黒い船渠(「海の薔薇は紅くない」改題)、集英社651200
    L041黒の試走車、光文社620220
    L042くんずほぐれつ(前編・後編)、集英社690425
    L043現代悪妻伝(単)、新潮社710315
    L044現代悪女伝(単)、講談社700304
    L045巷談名人列伝(シ)、徳間書店710505
    L046五年まえの女、桃源社670510
    L047色魔(青春篇,怒濤篇,完結篇)、徳間書店681010
    L048小説GHQ、光文社760430
    L049試用女房・募集(エア−後編)、集英社720610
    L050昭和元禄女大学(青い渦の章,紅い焔の章)、集英社690925
    L051白い廃液(シ)、★サンケイ新聞社出版局650705
    L052すけこまし(火望篇,完結篇)、徳間書店700801
    L053せどり男爵数奇譚(シ)、桃源社740725
    L054大統領の殺し屋、光文社740425
    L055血と油と運河、集英社750124
    L056知能犯(シ)、桃源社641025
    L057罪の夜想曲(上)、集英社751029
    L058敵はどいつだ(愛欲篇,復讐篇)、集英社670825
    L059てやんでエ、光文社660615
    L060都会の湖、★角川書店640510
    L061と金紳士(歩,海外雄飛,王手飛車,金)、文藝春秋691025
    L062どないしたろか、徳間書店740315
    L063虎と狼と、実業之日本社750510
    L064どんと来い、桃源社651025
    L065流れ星の唄、桃源社710720
    L066涙は拭かずに、講談社740408
    L067苦い旋律(前篇,後編)、集英社680425
    L068にぎにぎ人生(疾風怒濤篇他4篇)、集英社710930
    L069逃げるが勝ち、実業之日本社710320
    L070虹を掴む、講談社660217
    L071日本人ここにあり、実業之日本社740825
    L072濡れた銭、★サンケイ新聞出版局691110
    L073のるかそるか、★文藝春秋新社640520
    L074バツグンの女(シ)、徳間書店701205
    L075薔薇の咲く道、集英社681030
    L076非常階段、光文社650810
    L077人妻だから、光文社690106
    L078美男奴隷、光文社690910
    L079ぴらめんねエ、光文社720225
    L080鱶のような紳士、集英社680725
    L081ペテン師物語、税のしるべ610100
    L082彫辰捕物帖(一)〜(六)(シ)、読売新聞社720401
    L083見切り千両、講談社710220
    L084ミスタ−エロチスト、光文社770510
    L085密閉集団、光文社691125
    L086みんな黙れ(天の章,地の章)、徳間書店711225
    L087紫の火花、講談社650226
    L088名人にて候(シ)、徳間書店701001
    L089メロメロの女(シ)、徳間書店700331
    L090モ−レツな女(シ)、徳間書店690930
    L091野望の青春、実業之日本社690401
    L092やらずぶったくり(やらずの巻)、集英社710520
    L093夢の超特急、光文社631215
    L094夜の配当、光文社630225
    L095わが鎮魂歌(単)、講談社681012
    L096罠のある季節、文藝春秋新社650720


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