はなみずき     第30号  5/5/98





 冬に続きこの春も暖かく,いろんな花が順々にでなく,いっき咲きしてしまい,あっというまにハナミズキとライラックの季節になってしまいました.岳志は今日から3泊4日の修学旅行でワシントンに出かけました.あと2カ月ちょっとでミドル・スクールも卒業です.今回は岳志の学校のミュージカル,町立博物館の「日本民藝展」について書きます.
 
 

屋根の上のバイオリン弾き

 4月初めに全校行事のミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」がありました.これはブロードウェイのミュージカルを思わせるできあがりで,かなり本格的なものでした.出演者は8年生を中心にオーディションで選ばれます.台本はブロードウェイとほぼ同じものが使われ,今年は著作権料に$1,200も払ったそうです.演技は3晩,7:30から3時間も続きます.真ん中には休憩があってソーダとクッキーが売られました.
 資金集めはPTAの仕事で,全席指定のチケットは前もって1枚$7で売り出されました.知人のエリカ・バワットは娘が主人公の妻ゴルダ役を演じたので47枚もいい席を買い占めてヒンシュクをかいました.プログラムには父兄が1ページ$100で「自分の子供や出演者がんばれ!」という内容の広告を載せ,これは$3,200の収入になりました.我が家も岳志が端役で出たので,今年も1/4ページ$25のを載せました.今年の傑作の広告は劇中歌の「もし私が金持ちだったら...」を使って「もし私が金持ちだったらこの広告は1ページになっていたでしょう」という1/2ページの広告でした.「バイオリン弾き」Tシャツも$7で売られました.
 岳志は昨年はコーラスで,今年はコーラスとダンサー役で出演しました.1カ月前から練習は朝と放課後,リハーサルは夜まで行なわれました.熱心に指導する先生達や手伝う父兄も皆楽しんでやっているのにいつもながら感心しました.岳志も楽しかったようで,ミュージカルが終わった今もシャワーを浴びながら大きな声で調子良く歌っています.同様のミュージカルは小学校,高校でも行なわれ,ブロードウェイに至るまでの人の層の厚さを感じました.
 
 

ブルース・ミュージアム 日本民藝展

 グリニッチの町立博物館の1つにブルース・ミュージアムがあります.この博物館には岳志の好きな鉱物・動物等の科学関連の常設展示以外に,1点か2点の特別展示があります.昨年,「叫び」で有名なノルウェーの画家エドワード・ムンク展が開かれた時はとても複雑な思いがしました.というのは,私は20年前,上野の美術館で数枚のムンクを見るために長時間並んだ覚えがありますが,ここでは町の住人のコレクションだけで数十枚のムンクが集まり,それで特別展示ができてしまったのです.ウェンディと見に行った時,お客は私たちだけでした.
 今月から開かれている「民藝」展はモンゴメリーという人の個人コレクション175点で,日本の15〜19世紀の藍染の着物やベッドカバー,漆器,鉄びん,水瓶,のぼり,お地蔵さんから,館林の宿場町の看板までありました.親友の加藤圭子さんはこちらに12年もいる永住組の人ですが芸大の染色専攻だけあって,この「民藝」展には大変熱心で,学校の生徒やグループ単位の訪問者の案内をボランティアでやっています.
 展示で2点おかしなことがありました.藍染のベッドカバーがさかさまにつるされていて「五三の桐」の葉が花の上になっていたのと,木魚(もくぎょ)が座っていなくて立てられていたのでぱっと見ただけでは何なのかわかりませんでした.これは加藤さんの抗議にもかかわらず訂正されなかったそうです.
 ムンクと違って,たぶん日本人にはあまり有難みのないと思われるこの展示は米国5カ所を回り,$38の厚いガイドブックが出版され,記念に幾つかのレクチャーが開かれました.日本の民芸博物館ではおそらくこれほど高く評価され,大切に扱われないのではないかと推測すると,これらの品々はこちらにいて幸せなのではないかなと思ったりしました.
 
 

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