はなみずき 第36号 2/11/99




 この冬も温暖な日が続いています.雪が降ってもさっと雪かきする程度ですむので岳志は雪だるまを作るだけの雪を集めるのに苦労しています.さて,アメリカは空前の好景気で,目に見える変化だけでも,例えば近所の小さな家が突然4倍位の大きな家に次々と建てかえられたり,うす暗くて安いだけがとりえのスーパーA&Pが売り場面積2倍に明るく豪華に改装されて,ワンランク上の高級スーパー「フードエンポリウム」に格上げされました.寿司職人がいる寿司売り場まであります.スシはクールでヘルシーな食べ物と思われているのでNYに通勤する人が多いグリニッチでは最近どこのスーパーに行っても冷凍の寿司がおかれ,人々の嗜好は年々ぜいたくになっているようです.今回は友人のウエンディと話していて気づいたことを書きます.
 
 

いつも極端なNYタイムズの日本に関する記事

 先週,ウエンディが電話をしてきて,NYタイムズの日本の失業についての記事を読んだかきかれました.たいていNYタイムズの記事はだれか特定の一人の日本人を主人公に仕立ててその人の姿を通して日本の文化や社会現象を一般化して伝える語り口で,内容はひきつけられて面白いですが,日本人が読むと不愉快になる内容が多いです.今回はショウシバという会社を解雇された元課長のアキモトさんの話や,飯田橋のハローワークで出会った人々の話が書かれています.記事の中で驚いたのは,日本では社長と社員のつながりが大変強いので,社長が自殺して従業員の給料を払う場合がある,という部分です.実際に起こった事件とはいえ,これを読んだ人は日本ではこういうことがしばしばあると思うかもしれません.
 NYタイムズのスター記者のクリストフ氏とウーダン女史が書く記事はいつもこんな感じで,先日は友人のペニーと論争になり,普段は日本びいきの彼女ですが,NYタイムズは絶対に正しいと言い張ってゆずらないのです.確かに記事の中の例は事実なのですが,それが特殊な場合が多く,たとえば,聞いたこともない北海道の離れ島に住む人を取り上げて,それで日本全体を一般化して受け止められるとフェアじゃないと思うのですが.
 NYタイムズに憤慨しているので私だけでなく,ジパングというグループの人達が『笑われる日本人』という本を出版しています.まだ前書きの部分しか見ていませんので早く全体を読みたいです.
 
 

アメリカの景気がいい訳

 寿司の話に戻りますが,何かと集まりがあると日本人グループで色々な寿司を作って持っていきます.まず最初になくなってしまうのがカリフォルニアロールです.昨日はウエンディに作り方を教えました.カリフォルニア巻きは裏巻きの一種で,中にアボガドとカニカマボコを入れ,表面に白ごまをふりかけたご飯がきます.普通ののり巻きより簡単に巻けてとてもおいしいです.
 ウエンディのだんなさんのアレックスは小さな会社を経営しています.彼は最近コンピュータから離れない「コンピュータゾンビ」になっていて,インターネットで株取り引きをして大儲けしています.次男のアンディは中2です.去年学校のプロジェクトで初めて株を買って今はIBMを始め優良株を5種類も持っています.最近は一般の人がインターネットで自分で取り引きするので株の動きが非常に活発でアメリカの好景気をささえているのだそうです.その話をヨシにすると,昨晩乗ったリムジンの運転手さんも車の中にコンピュータを置いて株の売買をしていたそうです.
 じゃあ儲けたお金は貯金しているの?とウエンディに聞くと,「とんでもない,今こそお金を使わなくっちゃ」というのです.子供達が大学に行くようになるとお金がかかるので今がお金を使うチャンスだというのです.そういうわけで,彼女はちょうど今日から家に業者を入れて玄関と地下室の大改造を始めました.彼女が家にお金をつぎこむのは背景に,日本では不動産の価値というとほとんど土地の値段ですが,こちらでは土地の広さよりも家の広さとメインテナンスの良否で不動産の価値が決まるという違いがあります.
 儲けたお金はためないでどんどん買い物をして,どんどん家を改造するからますます景気が良くなるという経済の好ましい循環を見ていると,私達日本人も考え方を変えないと不景気から脱出できないのではないかとつくづく考えさせられました.
 
 

戻る