ソルトレークのスキー場(その1)

 

アメリカの50州のうち、ほとんどの州にスキー場がある。たとえば、メキシコと面しているカリフォルニア州、アリゾナ州、ニューメキシコ州の3つの州にもスキー場はある。本来避寒地のアリゾナは、どちらかというと巨大なサボテンが荒野に並ぶ灼熱の砂漠地帯というイメージがあるが、州の北側のグランドキャニオンの近くには、標高2000mの高原にスキー場がある。ニューメキシコにいたっては、ロッキー山脈の南の端ということもあって、州都アルバカーキと隣のサンタフェにちょっとしたスキーリゾートさえある。しかし、こういったスキー場は、ロサンジェルス近郊のビックベアと同じで、あくまでも気軽にスキーを楽しむためのものであって、わざわざ遠くから滑りに行きたいような規模ではない。

アメリカで有名なスキーリゾートと言うと、カリフォルニアとネバダの州境のレイク・タホ周辺、ユタ州のソルトレーク周辺、そしてコロラド州のベイル周辺とアスペン周辺の4箇所をあげることが出来る。今回は、この中からソルトレーク近郊のスキー場を紹介させていただきたい。

ソルトレークは、ロサンジェルスから北東に飛行機で2時間程度の距離で、ちょうどロッキー山脈の西側の入り口に位置する。アメリカ有数のスキーリゾートとして有名なだけでなく、夏はアーチーズやキャニオンランズといった、日本ではそんなに有名ではないが非常に感動的な国立公園がいくつもあり、そのカラフルな岩の色合いからカラードカントリー(色の付いた地区)というニックネームを持つ観光州である。また、ソルトレークはデルタ航空のハブ空港なので、米国内のスキーエリア(カナダを含まない)の中では最もアクセスの便が良いスキーエリアと言える。

  ソルトレークのスキー場は、いずれもダウンタウンから車で1時間前後の距離に位置する。よって、ソルトレークに宿をとって、レンタカーかシャトルバスでスキー場へ行くか、スキー場の近くに宿をとるかを選択することになる。スキー場に宿をとれば、スキー場へ行くのは簡単だが、行けるスキー場はそのエリアのスキー場に限定され、宿代も比較的高い。ソルトレークに宿をとると、スキー場まで片道1時間の移動が必要となる代わりに、毎日異なるスキー場へ行くことが可能となる。

  ソルトレークは仕事を含めると10回ぐらい訪問しているが、スキーでは2回訪問した。いずれもソルトレークに宿をとり、レンタカーでスキー場を回った。1回目は、赴任した最初の年で、いかにも日本人的な3泊4日という短い日程のスキーだった。私が住んでいたトーランス市(ロサンジェルスの南の方)のヤオハンのスーパの中にあるJTBのカウンターにパンフレットがあったので話を聞いてみたところ、何日かたってから電話で、「今なら往復100ドル(1万円)以下でエアチケットが手配できます」という連絡が入り、2日休暇をとって出かけることとした。会社の出張以外で旅行に出るのはこの時が最初だったので勝手が良くわからず、レンタカーはJTBでエアチケットと同時に、宿は日本のJAFに相当するAAAのガイドブックを見て安そうな宿を自分で手配した。アメリカの場合、部屋いくらなので、1人で泊まっても2人で泊まっても料金は同じで、確か1泊35ドル程度たったと思う。まだ赴任して半年しかたっていないころだったため、あまりお金の余裕も無く、とにかくコスト重視の旅行となった。飛行機とレンタカーの方は別に問題はなかったが、宿の方は悲惨だった。まず暖房が十分入らないため部屋が寒く、ベッドも古臭く良く眠れない。また、シャワーヘッドが壊れていてうまくお湯が出ないシャワーのみでバスタブがなく、熱くてさわれないようなお湯か水しか出ないため十分シャワーを浴びることも出来なかった。

また、食事の方も結構苦労した。旅行に慣れた後は、ロサンジェルスの日系の本屋で「地球の歩き方」を購入して日本語でポイントをつかんだ上で現地の英語のパンフレットで情報収集を行うようになったが、この時は何の予備知識もないまま出かけたため、どこでどういう食事が出来るのかが判らなかった。ソルトレークはモルモン教の本山のある街で治安は良く、街をぶらつくことは問題なかったが、ぶっつけ本番で入るレストランは高級ステーキレストランだったり、怪しげな日本食レストランだったりして、食べたいものを食べることは出来なかった。

  この時の教訓は、「AAAのガイドブックで星★一つ以下の宿には泊まらない方が望ましい。」スキーの場合、宿でくつろげないとどんどん疲れが蓄積されてしまうため、スキーに行ったのか疲れにいったのか判らないような旅行となった。

  2度目にソルトレークへスキーに行ったのは、オリンピック直前の2000年だった。この時は、前回の反省もあって、エンバシースイートという、玉子焼き付きの本格的朝食が無料、17時から19時までビールやワインが飲み放題、部屋はベッドルームとリビングルームの2部屋で冷蔵庫と電子レンジが備え付けというのを売り物にするホテルチェーンに宿泊した。ソルトレークはほとんどの人が飲酒・喫煙が禁止されているモルモン教を信仰しているので、ダウンタウンの中で酒を購入することや、子供が簡単に出入りできるスペースで酒を飲むことが制限されていたので、昔ならロビーでビールやワインが飲み放題というようなホテルをソルトレークで開業することは難しかったと思うが、2002年のオリンピックにむけてこの辺はだいぶゆるやかになってきたのかもしれない。

 

その2へ続く