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★ トロイア戦争のはなし ★ 「ピロクテーテス」に名前だけ登場する人々 ★ 先に観ておくとより楽しめる!おススメ映画&本 ★



概観
小アジアのトロイア対ギリシアのアカイア人の伝説上の戦争。ホメロスの叙事詩「イーリアス」「オデュッセイア」などなど、様々な伝承が吟遊詩人によって語り伝えられた(平家物語の流布に似ているかもしれない)。

戦争の経緯
神々の国オリュンポスで、海の女神・テティスと人間の武将・ペレウスの結婚式が華やかに行われていた。神様が皆招待される中、不和の女神だけが呼ばれなかった。怒った不和の女神は、宴にのりこみ、黄金のリンゴを投げ込む。リンゴには「一番美しい女神に捧ぐ」と書いてあった。
ヘラ、アテネ、アフロディテの3女神がこの美人コンテストに立候補。いちばん偉い神様ゼウスはカドが立たないように、審判をトロイアの王子・パリスに依頼した。いろんなご褒美をちらつかせてパリスを誘惑する女神たち。パリスはその中で「国いちばんの美人・ヘレネと結婚させてあげる」と言ったアフロディテを優勝者にえらぶ。

アフロディテは約束通り、ヘレネをパリスに渡した。が、問題があった。ヘレネには既に、スパルタ王メネラーオスという立派な夫があったのだ…。
妻を奪われ逆上したメネラーオスは、兄でミュケナイ王のアガメムノンに相談する。アガメムノンは、思い出した・・。
・・・そもそも、ヘレネ結婚の際、ヘレネの父と、山ほどいた求婚者たち(その中にはオデュッセウスもいた)が交わした約束があった。「ヘレネが誰と結婚しても、彼女が万一他人に奪われるようなことがあったら、その夫をみんなで助けるべし」あまりにも求婚者が多かったので、争いが起きないように決められたルールである。
そうだ、あの約束があったじゃないか!というわけで、2兄弟は「ヘレネを取り返すべく、力を貸してくれ」と諸国に知らせを送った。
諸国の武将がはせ参じたが、出陣を渋った武将が二人いた。新婚ほやほやだったオデュッセウスと、母である女神・テティスに匿われたアキレウスだ。ふたりが無理やり戦場にひっぱられた経緯は「ピロクテーテス」に書かれているとおりである。皮肉にも、このふたりはアカイア軍でもっとも活躍した武将となった。

出航したギリシャ軍船団がトロヤ近くまできたとき、ピロクテーテスが蛇にかまれるという事件が起きた。彼の悪臭と絶叫に悩まされたギリシア軍が、レムノス島に彼を置き去りにするのは戯曲どおりである。
さて、ギリシャ軍は無事にトロヤの海岸に上陸し、陣を敷く。が、トロヤの町は堅固な城壁に囲まれてなかなか落とせず、しかたないのでギリシャ軍はせっせと周囲の街を攻略した。そのままの状態で、なんと9年が過ぎ去った・・・。その間、アキレウスと総大将・アガメムノンは女を争って大喧嘩し、一時期アキレウスは戦線離脱する。しかし、無二の親友パトロクロスをトロヤ軍に殺されて再び復帰、敵の猛将・ヘクトルをぶち殺し、死体を戦車でひきずりまわす。だが、そのアキレウスもパリスの矢で射殺された。
アキレウスの死のあと、彼の武具は「軍の第一人者」に譲られることになり、誰が受け継ぐかで、アイアスとオデュッセウスの間に争いが起きる。総大将アガメムノンは、どちらの味方をしても恨みを買うと考え、トロヤ人の捕虜に裁定させた。トロヤ人が選んだのは、オデュッセウスだった。
おさまらないアイアスは狂気に陥って羊など家畜たちを惨殺、正気に戻って自らを恥じ、自殺する。「葬式はするな」と総大将アガメムノンは言ったが、オデュッセウスがとりなして立派な葬式をおこなう。
このあと、伝説では予言者が「ピロクテーテスを連れ戻すべし」「ネオプトレモスを味方につけるべし」と託宣し、ピロクテーテスが連れ戻され、つづいてネオプトレモスが味方につく。
「先にネオプトレモスが軍に加わっており、ピロクテーテスを迎えに行く」というのは、ソフォクレス「ピロクテーテス」オリジナルの設定なのだ。
戻ってきたピロクテーテスはとてつもなく強く、争いの元凶・パリスを弓で仕留める。
その後戦況はこう着状態になるが、オデュッセウスが「木馬の計」を思いついた。
ギリシャ船団は皆、姿を隠す。トロイアの城壁の前に途方もなく大きな木馬を置き、その中に武将たちが隠れる。木馬の脇に兵隊が一人立ち、「ギリシア軍は皆逃亡した。この木馬は、無事にギリシャまで航海するためにアテネ女神に捧げるものだ」と言い、城壁の前に入りこむのだ。
兵隊は過酷な拷問を受けながらも「木馬は捧げものだ」と頑張り、ついに木馬は城壁の中に引き入れられた。こうして、ギリシア勢はトロイアの城市に入りこみ、「ギリシア軍は逃げた」と思っている面々を急襲して勝利を遂げる。
ちなみに伝説によれば「木馬の計」について「そんな嘘を使うなんて卑怯だ!」と反対したのが、ピロクテーテスとネオプトレモスであった。ソフォクレスもそのあたりを考慮して「ピロクテーテス」を書いたものと思われる。

ギリシア軍は、トロイア全土を焼き払い、男はほとんどすべて殺し、女は自分のものにした。
しかし、帰りの船は半分ぐらいが沈んでしまい、総大将のアガメムノンは、不倫していた妻に殺されてしまう(のちに娘のエレクトラが母の仇討をすることになる)。
オデュッセウスも帰路は辛酸をなめ、帰宅できたのはさらに10年後だった・・・。

おわり




アキレウス
ギリシア軍の武将。伝説によればプティーア王ペレウスと海の女神テティスの間の子。母神が多忙のため、スキュロス島の王様に預けられて育ち、そこの王女と結婚してネオプトレモスをもうける(このとき、まだ15歳・・)。オデュッセウスたちが、トロヤ戦争参加の誘いにきた時、女装して乗り切ろうとするが失敗するのは「ピロクテーテス」に描かれたとおり。
女装しても美人になれるほどの美男子で、ギリシア軍ぶっちぎりの最強戦士として英雄のほまれ高かったが、35歳にして戦死。遺品争いでアイアースとオデュッセウスが対立することになる。

ヘラクレス
ギリシア神話の英雄で、半人半神の存在。女神ヘラの陰謀により我が子を殺し、罪滅ぼしのため、アポロン神から与えられた12の仕事(怪物退治など)をやり遂げる。岩山にはりつけられたプロメテウスを救ったのもその一環。
もうすぐ故郷に帰れるというときに、ヘラクレスの浮気を心配する妻は、夫の愛情をつなぐ媚薬だと信じて、毒蛇の血を塗りつけた着物を夫に送る。この着物を着たヘラクレスは毒のために皮膚が焼けただれ、瀕死の状態に。「火をつけて殺してくれ」と必死に周囲に頼むものの皆怖がってしまい、唯一願いを聞き届けたのはピロクテーテスだった。ヘラクレスはピロクテーテスに感謝し、最強の弓矢を彼に与えて死んでゆく。
ちなみに、ソフォクレスの「ピロクテテス」では、ラストに神となったヘラクレスが現れて、ピロクテーテスの怒りをなだめ、トロヤ戦争への参戦を納得させることになっている。

プロメテウス
「天の火」を盗み出し、未開だった人類に与えた英雄。火を盗んだことがゼウスの怒りを買い、岩山に縛られて毎日禿鷹に肉を食われる罰を受ける。が、ヘラクレスに助けられる。

ヘクトル
トロヤ戦争では、トロヤ側を代表する英雄。トロヤ王プリアモスの長男。ギリシャ軍のパトロクロスを討ちとったため、パトロクロスの親友であるアキレウスの激怒を買い、アキレウスに討たれる。

パリス
トロヤ王プリアモスの子、ヘクトルの弟。スパルタ王メネラーオスの夫人・ヘレネーを略奪し、トロヤ戦争の原因を作った張本人。美男で、それなりに強いにもかかわらず、敵にも味方にも、そこはかとなく軽蔑されてしまうキャラクター。

アスクレーピオス
名医。死者をよみがえらせる技を身に付けたため、全能の神ゼウスに殺されてへびつかい座になったという。

ヘルメス
オリュンポスの神のひとりで、ゼウスの子と言われる神。商業や羊飼い、能弁などをつかさどる神様。ゆえに本作品でも「抜け目ない」と言われている。

アテナの女神(アテーネー)
オリュンポスの神のひとり。パルテノン神殿にまつられている。都市を守護する神様。

アイアス
ギリシア軍の武将、サラミス島の王子。アキレウスに並び、ギリシア軍最強と言われる。ちなみに、アキレウスのいとこにあたる。
アキレウスの戦死後、彼の遺体争奪戦でオデュッセウスともどもに活躍。その後、アキレウスの母テティス女神が息子の追悼で催した競技会で、アキレウスの鎧をめぐってオデュッセウスと闘う。武将としての名誉をかけた闘いでオデュッセウスが勝利してしまったため、恨み骨髄のアイアスはオデュッセウスを殺そうとするが、アテネ女神の計らいで狂気となり、オデュッセウスだと思って羊たちを殺す(当時、羊は大事な財産だったと思われる)。翌日、正気に戻ったアイアスは、面目なさのあまり自殺する。
ただし、ミュラー版では、アテネ女神は出てこず、酔いによって羊を殺すことになっている。



 
トロイ 
TROY


製作: 2004年 米  
監督: ウォルフガング・ペーターゼン
出演: ブラッド・ピット / エリック・バナ / オーランド・ブルーム 他
公式サイト
トロイのヘレン 
Helen of Troy



製作: 1955年 米  
監督: ロバート・ワイズ
出演: ロッサナ・ポデスタ / ジャック・セルナス / セドリック・ハードウィック 他
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『ギリシァ悲劇を読む−ソポクレス「ピロクテテス」にみる教育劇』

吉田敦彦
(青土社)
紀伊國屋 書評空間