『WA・O・N』のこと 

「WA・O・N」で第7回新・北陸児童文学賞をいただいてから、もう8年が経とうとしています。あの頃は、まだ1冊の本も出版しておらず、またこの先ものになるものかどうかも分からず、先の見えない道に途方に暮れていました。そんな中でいただいた賞だったので、喜びもひとしおでした。「この道でいいんだよ。歩き続けていきなさい。」と励ましていただいた思いでした。
おそらく同人誌で書いている人たちの多くが、あの頃の私のような不安を抱えているのではないかと思います。もちろん純然たる趣味で書いている方もいるだろうし、バリバリのプロでありながら、自分の修業の場として書いてみえる方もいるかとは思いますが、プロを目指し、書く場を求め、迷いながら書いている方も多いのではないでしょうか。新・北陸児童文学賞がそういう人たちにもたらしたものは、貴重なものであったと思います。今回で終了とお聞きし、残念な気がします。
新・北陸児童文学賞をいただいた「WA・O・N」は、その年の夏、ひくまの出版から出版されました。その後も「ぼくとカジババのめだまやき戦争」(ポプラ社)や「いっしょに遊ぼ バーモスブリンカル!」(あかね書房)等、ぽつぽつと本を出させていただいています。のんびりとしたペースではありますが、私なりのスピードで「児童文学」という道を歩いていきたいと思います。(山本)
 

 受賞の思い出

 思えばずっと賞に縁がなかった。小中学校を通しても、賞状をもらった覚えが全くないし、賞がほしいとも思わないできた。そういうことは、自分には関係ないことだと、どこかで納得していたのだ。
 そんな私が、北陸児童文学賞をもらった。なぜか予想外にうれしかった。企業のイメージアップのための賞ではなく、純粋に書き手を応援する賞だと思えたからだ。
 表彰式のために冬の金沢に向かった。関東からあまりでたことのない私には、北陸は未知の土地でわくわく緊張した。空港におり、肌をさす冷たい風を感じた時、遠くに来たんだなぁとつくづく実感した。
 暖冬の年だったので私が期待するほどの雪はなく、金沢の人々は驚くほど軽装で歩いていた。私はいかにも観光客らしく、厚いコートにブーツとできるかぎりの防寒をし、金沢城や兼六園をきょろきょろと歩き回り、おみやげに大きなカニをいくつも買った。
 そんな楽しいことだらけの旅だったが、賞をもらってから七年の年月に思いだすことも少なくなった。でも、受賞式の時に先生方が示してくれたあたたかな励ましや言葉は、私の中に根雪のように残っていて消えていかない。それどころが、今も、書き続けていく原動力になっている。
 また、いつか金沢に行きたいと思う。寒がりな私だけど、行くなら真冬の金沢がいい。 (赤羽)