『本と本の周辺』
7/10、2003 Update

このページは同人おすすめの本を中心に紹介します。本だけに情報をかぎるのではなく、 それをとりまく映画、アニメなどに話が発展することもあります。また、その時々に気 に入った本を紹介する人、 自分で決めたテーマにそって紹介する人、長い紹介をする人、 短く紹介する人、紹介の仕方も さまざまです。本好きのみなさん、気に入ったところ をお読みいただき、しばしおつきあいください。

2003/7・ 本と本の周辺


『本格小説』    水村美苗   新潮社
 
 極上のお酒のような小説。読後、陶然となりました。
『本格小説』という題そのものからして大胆だけれど、正統小説といってもいいな、と思います。小説の世界の豊穣さ、おもしろさに我を忘れて読みふけりました。
まさに堪能させられたという感じです。
 物語の構成は入れ子の入れ子と複雑です。まず 本格小説の始まる前の長い長い話 があり、「私」がこの小説を書くにいたった経緯が語られます。そこだけでじゅうぶんにおもしろく、本格小説が始まると、この部分が生きてきます。
 本格小説の骨格は作者も書いているように『嵐が丘』で、主人公の東太郎とよう子の、子ども時代からの恋は悲劇に終わります。
 読み終わって、時間、時の流れがせつなく胸に残りました。そして真の主人公は、否応なく過ぎていく日々、過ぎていく人生、それと重なった戦後五十年の日本の変貌ではなかろうか、とも思えました。
 
 「ももたろうの」の締め切りが迫っているのに、こんなにも余韻嫋々の本にとりつかれ、後悔しています。
でも、図書館でリクエストして、やっと順番がまわってきたものですから。(紙魚)
 
  『おへそのカニくん』 柴田佐和子 ひくまの出版

 「キーくんのおへそから、カニくんがでてきて、おしゃべりを始めました」
 表紙の裏のそんな言葉に、「えー! どんなおはなし?」と1ページ目を急いでめくりました。
 物語は、ときにハラハラドキドキしたり、ホンワカしたりしながら、最後のユーモラスな一行で、気持ちよく着地が決まります。
 さばさばしたクールなおかあさんも、いい味をだしてます。 (山田)
 
 

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