『本と本の周辺』
2/10、2004 Update

このページは同人おすすめの本を中心に紹介します。本だけに情報をかぎるのではなく、 それをとりまく映画、アニメなどに話が発展することもあります。また、その時々に気 に入った本を紹介する人、 自分で決めたテーマにそって紹介する人、長い紹介をする人、 短く紹介する人、紹介の仕方も さまざまです。本好きのみなさん、気に入ったところ をお読みいただき、しばしおつきあいください。

2004/2・ 本と本の周辺


『忘れられる過去』    荒川洋治   みすず書房
 
 七四編のエッセイ集。とても文章がいい。言葉に曇りがないからわかりやすく端正なのだと思う。どの一編にも味がある。人間を深いところでよく見ている人なのだと思った。
 たとえば原稿用紙二、三枚ほどの「まね」という一編。「人間には、二通りしかない。まねをする人と、まねをしない人。」 まねをする人とは、ひとつのようすを体をつかって再現する人。「まねする人はしない人より心が自由であることはたしかだ。いつまでも自分をにぎりしめていない人だから。」 読んでどきりとする。
 私がまったく読んだことのない小説家の批評もある。近松秋江、結城信一、井伊直行、島村利正……。おそらく地味ながらも「人間の姿」をとらえようとした作家たちで、著者の目はいつもそこにあるのだと感じられる。著者は詩を書く人。詩集を読んでみたい。(紙魚)
 

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