2006/2・ 本と本の周辺
●ヤングアダルト的本棚
『マンゴーのいた場所』 ウェンディ・マス作 金原瑞人訳
マンゴーはあたしのネコ。
マンゴーという名前は、みんな、目がオレンジ色だからと思っているけど、そうじゃない。 ゴロゴロのどを鳴らす音、ミャーオという鳴き声、それにマンゴーのいた場所や歩いたあとなんかが季節ごとに個性のちがうマンゴーの色そっくりだったから。
今、引用したのは、表紙をめくってすぐに見えるカバーの見返しの所の文章。これを読んだ時ビビッってきた。なんと素敵なたとえなんだろう。でも、すこし読んでみると違うことが分かってきた。
たとえなんてものじゃないんだ、主人公のミアにとっては。
ミアは共感覚者で、彼女には普通の人とは違う風に世界が見える。2はわたあめみたいなピンク、aは枯れかけたひまわりの色。共感覚者とは一つの物事をひとつの器官で判断するのではなく、一つの物事を二つの器官で判断する人のことを言う。
だからミアみたいに、文字を見ると色が浮かんできたり、音がすると頭の中に色が浮かんできたりするのだ。彼女は自分が共感覚者であることを、まだ知らない。
このお話はミアが、なやんでいく様子を書いたお話なのだか暗くならず、テンポもよくて実にいい感じなのだ。それにセンスもいい。題名でいきなり「マンゴーのいた場所」。よくもまあ、こんなにぴったりなそれ以外考えられないような名前をつけたよな。あたしだったらミアが共感覚であることを強調しようとして変な名前を付けてしまいそう。
マンゴーの現れ方や去り方、家族の変人加減まで全てがいいのだ。ぴったり決まり過ぎていてけちをつけたくなるぐらい。友達の受け答えや、家族の反応は予想の範囲を出ないが、共感覚者が日常が実によく書けていて面白い。
すこし悲しくて、でもミントみたいに爽やかでさいごはまったりとしている優しい小説。
日高 ラムネ(赤羽 じゅんこの代理)