母と百年戦争
 
― エドワード3世(1312ー1377)



 ブラック・プリンス関連の話を読んでいるうち、実は黒太子の父のエドワード3世というひとが、なかなか面白いのではないか、と思うようになってきました。健気な少年時代から、年老いて衰えるまで、波乱万丈の人生をおくってくれています(^^;)

 エドワードは、エドワード2世と、フランス王女のイザベルの間に生まれたのですが、両親は、不仲だったようです。
エドワード2世は、幼い頃からの遊び友達のギャヴスタンを寵愛し、高い地位を与えたりしたので、古くからの貴族たちの反感を買ってました。
 エドワード2世の父、エドワード1世が世を去るとき、ギャヴスタンの追放を命じたけれども、エドワード2世の即位後、また復活するなど、ありがちですね(笑)
(エドワード1世というひとは、なかなかえらかったようですけどね。彼の時代に、議会で英語を使うようになったとか。)

 イザベルがお輿入れしたときも、ギャヴスタンは、嫁入り道具の指輪を欲しがって、エドワード2世がイザベルに無断で与えたりしたので、イザベルはギャヴスタンに腹を立て、それでまたギャヴスタンが、イザベルに嫌がらせしたりします。
自然、反ギャヴスタン派は、イザベルを中心に固まるようになります。
 結局、反ギャヴスタン派とその他が、王の寵臣追放を決め、ギャヴスタンは逮捕され、どさくさに紛れて処刑されます。
エドワード(3世)が生まれたのは、そんな頃でした。

 一方、イザベルは、国王派のものたち(ディスペンサー親子)に捕らえられた、ロジャー・モーティマーという人物に注目します。イザベルは、彼の脱獄に手を貸し、モーティマーはフランスに逃れました。モーティマーは、イザベルの愛人となるわけです。
 そして、王妃イザベルと太子エドワードが、イザベルの兄が即位しているフランスを訪問したのを機に、イザベルは、エドワード2世の廃位、そしてディスペンサー親子の追放を企てます。
 (え〜、補足ですが、当時はまだ、イギリスはフランス国内に領地を持っているわけです)

 ディスペンサー親子も反感を買っていて(国王に重用されると、周囲の反感は買うものらしい(笑))、ロンドンはイザベルに味方し、親子は処刑されます。そして議会はエドワード2世の廃位を決議し、後継者に太子を選びます。

 この時15才のエドワード少年、父から直接に譲位がない限り即位しない、と議会の指名を拒否、エドワード2世は、譲位書に署名します。

 ところで、エドワード2世は、結局処刑されるのですが、殺害までの数日間は食べ物が与えられず、外傷を残してはいけない、ということで、肛門から焼け火箸を突っ込むという方法で殺害されたとか(ぎゃ〜!)

 エドワード少年は、まだこのことは知りません。

 さて、フランスでは、エドワードの母の兄の国王が世を去り、カペー家の男系が絶えます。
エドワードの母イザベルは、自分の息子に継承権があると主張しますが、フランスでは先の国王の従弟のフィリップが即位し、エドワードにも臣従の礼を取るように、言ってきます。
(フランス国内に、領土をもっているため)

 そこでエドワード少年(16才)は、母とマーチ伯モーティマーが愛人関係にあること、父が惨殺されたことを知らされ、慌てて帰国することになります。
時代も違い、習慣も常識も、今の日本の私とは全然違っているはずですが(笑)それでも、よそさまの家で、こんなことを知らされたら、かなりなショックではなかったかな、と思ったりします(天を仰ぐ)
 それまでは、イザベルとマーチ伯の反対派勢力は、エドワードから遠ざけられていたのですね。

 一年半後、エドワードに無断で王族が処刑されたのを機に、エドワードはマーチ伯とイザベルを逮捕、マーチ伯は処刑されます。
 イザベルは幽閉のみとなりますが、フランスのカペー家の生き残りでもあり、エドワードはフランスの王位継承権を主張していたためか、寛大な扱いをされます。
え〜と、イギリスでは昔から女王がいたけれども、大陸では女王は認められていません。(原則として、今もそうらしい)
 しかし、母方から血筋を受け継いでいる場合については、曖昧で、エドワードが王位を主張するのは、さほどおかしなことではないわけです。

 そして、フランスがフランドル地方に触手を伸ばしたのをきっかけに、エドワード3世はフランスに宣戦布告、英仏戦争のはじまりとなります。(1337年)

 エドワード3世は、王妃のフィリッパとの間に多くの子を儲けてます。
長男は、英仏戦争で活躍するエドワード黒太子、そして4男のジョンは、ランカスター家を相続、5男のエドマンドは、ヨーク家の祖となります。つまり、ジョンとエドマンドの子孫たちが、何年もの間イギリス王位を争う薔薇戦争を繰り広げることとなるわけです。
 こう言うと違うのだろうけど、百年戦争と薔薇戦争、両方に関わっているような(笑)

 スコットランドやフランスをぶちかましていたエドワード3世ですが、晩年は、愛人のアリス・ぺラーズに溺れ、国政を省みず、領土はフランスに奪い返され、と惨澹たるありさまになります。王妃はすでに世を去っていて、長男の太子も病床にあったわけですから、イギリスの国政は乱れに乱れます。
 エドワード太子がなんとか立て直そうとしたものの、父に先立って世を去り、ランカスター公ジョンもまとめきれず、という状態で、エドワード3世は世を去ります。
 後を継ぐのは、黒太子の子、リチャード10才。
 幼君と有力な叔父、これでは揉めてくれ、と言わんばかりですねえ(^^;)
 長生きはしたくないかな〜といった感じにも見えますが(汗)齢を重ねるにつれ(涙)若いうちに世を去るよりも、ぼろぼろになっても生き延びなければ、と思う今日この頃(謎)妙に気になった人ではありました(笑)



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